夢と現実の狭間で
頭が痛い

耳鳴りがうるさい

目の前は真っ暗

わたし、どうしたんだろう

なんだかとても冷たい







「――ィッ!…おいっ、―――ラティッ!!!」

耳元の、聞きなれた声の大声でプラティは目を覚ました。

「良かったぁ〜っ!!プラティ様ぁっ!!」

涙を浮かべた彼女の護衛獣のシュガレットが勢いよく抱きつく。

「…はれ…?何でシュガレット泣いてるの?」

「まったくっ!やっと目覚めたのになんだそのボケっ面は。」

シュガレットの後ろで呆れ顔でヴァリラが立っていた。

「ヴァリラまで…?どうしてこんな所に居るの??」


こんな所――プラティが寝ているのは地面。湿ってコケが少し生えている。

臭いは潮の香り…そう、ここはワイスタァンの地下迷宮。


「オレがここまで来た時、コイツがワンワン泣きだったんだ。『プラティ様が死んじゃった〜!!』とか言いながら。良い迷惑だったぞ。」

「だ、だってプラティ様、モンスターの衝撃で岩にぶつかって意識を…っ!」

そう言ってまたえんえんとシュガレットは泣き出した。

「…そうだ、わたし、モンスターに出会って…。」



痛む頭の中で思い出すあの場面。

この階では大物のモンスターと戦っていた。

分はこちらの方が良かった。

だけども、よく見てみるとそれは幼い日の嫌な思い出が蘇る。

幼いあの日。

ちょっとの冒険心で、波打ち際に行った。

突然、波が大きくなったと思ったらその怪物が出てきたのだ。

砂場に足を取られ、転んでしまい、どうも出来なかった。


幼い頃の恐怖心はまだ根強くプラティの心にあった。

それを見た瞬間、動揺と、震え。

それが冷静さを失い、このような結果になってしまったのだ。




「…あ…。ご、ごめん、ヴァリラ…迷惑、かけちゃったね…。」

顔も、声も、普通なのに、プラティの肩は少しだけ、ほんの少しだけ震えていた。

「――いや、それより、お前は大丈夫なのか?」

「え…?」

見透かされたように、いつもと違う声色でヴァリラが語りかける。

「…オレがライバルと認めたお前ならそれくらいのモンスター、すぐに片付けられたはずだ。それが今、どうなんだ。衝撃に耐えられず気絶してしまった。」

「…それは…。」


周りが寒くなってきたのか少し鳥肌が立った。

ヴァリラの気迫とも知れない。


「…オレは敵に情けをかけるつもりはない。こんなことしていてはダメだと自分でもわかっているだろう。這い上がって来い…!」

そう言うとヴァリラはプラティたちに背を向け、来た道を戻っていった。



「…ヴァリラ。」

段々足音が遠のいて、そしてとうとう聞こえなくなった。

「でも、プラティ様…。ヴァリラさんは私が叫んだ直後、見ていたかのように駆けつけてくださいました…。モンスターも追い払ってくださったんです。」

「…そっか…。」




あんなに気高く、誇りに溢れた少年にただ一人のライバルと認められている。

そして、また大切なことを教えられた。

この胸の想いはなんだろう…。






「…ありがと、ヴァリラ…。」

「プラティ様、何か言いました?」

小さな声で、囁くように感謝の言葉を言う。

「――ううんっなんでもないよ!さ、早く奥に進もう、シュガレット!!」

起き上がり、ホコリを落とし、剣を取る。

「はい、プラティ様♪」


「…ヴァリラに負けないようにしなくちゃっ!!」



対等に戦えるように。

幼かったあの頃の恐怖をやっつけて。

自分を変えよう。




fin.





あーとーがーきー。

撃沈。一応、プラティを励ましてるヴァリラです。マジで何書きたかったんだか。

シュガレット、なんか口調変です。ケケッ。←死

読んでくださいましてありがとうございました。

2003 5 19 伊予

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