大切な時
大きな歓声と拍手に耳が変になりそうだった

汗だくになって、お互いにぼろぼろになった決勝戦

貴方に勝てた喜びと、また一歩近づけた喜びと、ちょっとした不安に飲まれていた

悔しそうな顔をしながら、それでもおめでとうと言ってくれた

それだけで、胸がドクンと高鳴った




「シュガレット、今日もちょっと散歩行ってくるね。」

そう言いながら、プラティは夜の寒さから身を守るための上着を着込んだ。

この海上都市ワイスタァンは海風にさらされ、夜は結構冷えるのである。

「いつものことですけど、気をつけて行ってくださいねプラティ様。」

「うん、じゃぁ行ってきます。」

そして、行く先は決まってあの場所だった。

トーナメントが始まって以来ずっと行き続けている場所。

晴れて、そのトーナメントに優勝したこの日もまた向かう。



いつからかこの道が行くたびに楽しみになっていった。

一歩踏みしめる度に胸が高鳴る。

それもこれも彼の所為だとプラティは気づいていた。

今夜もそうなのだけれど、いつも以上に。



そして、暗闇から彼の背中が見えた。

「…あれ?ヴァリラ?」

幾度と無く繰り返された言葉。

「…なんだ、また着たのか?プラティ。」

噴水の前に、黙って肩を揃えた。

「ヴァリラこそ…大丈夫なの?決勝戦の傷?」

「あぁ、こんな傷、大した事無い。それより、優勝、おめでとうプラティ。」

皮肉のときとは違う笑顔を向けられ、少しプラティは頬を赤くしてしまった。

「…ありがと、ヴァリラ。」

「負けたのはやはり悔しいが、オレが唯一認めたお前なら納得できる。だけど、オレはすぐに追いついてやるからな、プラティ。」

ヴァリラらしい台詞にプラティは思わず笑ってしまった。

「さすがヴァリラだね!聖鍛の座は譲らないから!」

「望むところだ。やはり、オレのライバルだけあるな。」

噴水の水面に二人の楽しげな姿が映った。

海から来る海風はより一層冷たくなってくる。



「…あっと、言う間だったな…トーナメントは。」

「え?」

ポツリとヴァリラが消え入りそうな声で話し出した。

「この数日間、オレは色々なことを体験した。」

「…うん、そうだね…。聖鍛の意味も、いろんな大切な事も学べたよね。」

「…それも、お前が居たからかもな…。」


空には凛と輝く月と、瞬く星しか見ていない。


「ヴァリラ…?」

少し顔を上げると、ほのかに頬が赤くなっているのが分かる。

「プラティ、改めて言わせてもらうぞ。その…ありがとうな。」

「…へっ?!な、何がっ?!私、なんかした?!」

「…なんでそんなに驚く。」

「だ、だってヴァリラにお礼言われたの初めてだし…。」

「オレだって礼の一つや二つ言うぞ!」




この時間を 大切な時間を


「私も…ありがとう、ヴァリラ。」


最高の笑顔で


「バカッ、なんでお前から言われなくちゃいけないんだ!」

「えへへ…。」


大好きな 大切な 人に


「…クシュンッ!」

海風にさらされたのかプラティはくしゃみをしてしまった。

「まったくもうっ…ほら、オレの上着を着ろ。」

「で、でも…。」

無理やり着せ、頭にポンッと手を乗せる。

「いいから着ろ。新しい聖鍛さまに風邪を引かせるわけにはいかないしな。」

「もう…ありがと。」

肩に触れるヴァリラの手が暖かくてまた笑みを零してしまった。


「…プラティ。」

「うん?」


「…これからも、よろしくな。」



これからも

この大切な時間を

貴方と。




fin

アトガキ

初めて書いてみました、ヴァリプラ小説…。なんですか、この下手クソな小説はっ!!!(号泣)なんだか、プラティ→ヴァリラとかヴァリラ⇒プラティみたいで何か嫌ー;しかも変なカンジに甘いような(苦笑)

これで許してください。

読んでくださって有難うございました

2003 5 6 伊予

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