凛、と伸ばされた背筋






赤いマントと白いマント

その存在が日々の日常









「まぁた貴方って人はっ!ここまでする必要があったんですか?!」

突き抜けるほど青い空の下で、彼女特有の透き通った声がこの街に響いていた。

「あ、はは…ぐ、偶然っていうか…。」

その声は現在怒りを含んでおり、その声を浴びせられた気の弱い、けれど優しそうな声が答えた。




彼女の後ろには酒場と思わしき建造物の跡。

唯一酒場と判るのは酒瓶の割れた破片であろう。

「偶然でこうなりますか!いつもいつも気をつけてくださいと言っていましたわよね、私は?」

「…はい…。」

この酒場と思わしき建造物、もとい廃墟は気の弱い声の主、人間台風のヴァッシュ・ザ・スタンピードの仕業である。





「貴方の騒ぎに巻き込まれる体質はこの際もう問いません。けれど、注意してくださいとあれほど…!」

そして、悪戯をした子供を叱るようにヴァッシュを叱っているのは、保険屋の一OLメリル・ストライフであった。

「ミリィ、宿で貴女は始末書を書いてくださいな。」

後ろで控えていたメリルの後輩のミリィが元気良く返事をし、宿に戻っていった。

もう一人の同行者、ウルフウッドはというと、またどこかに出掛けている。

ヴァッシュとメリル、後輩のミリィ、エセ牧師のウルフウッドとの四人旅はこのようなヴァッシュを中心としたドタバタな旅になっていた。












「僕だって好きでこうしたんじゃないんだよぉ、保健屋さん…。」

子供のような声で小さくヴァッシュは呟いた。

それを聞き逃しもせず、メリルは言う。

「それならば、気をつけてください。ヴァッシュさん。」

その言葉は自分の仕事が増えないようにという意味と、純粋に彼の体を心配しての言葉だった。






以前メリルはヴァッシュの体にある無数の傷を見ていた。

人間台風の彼、それはその傷で証明されるようなこと。

また、自分を犠牲にしている。

それを考えるだけで、胸が痛くなる思いがした。










「気をつけるよう、努力するよ。」

照れ笑いに似た、苦笑をメリルに向けた。

そして、その言葉と共に、彼は銃を構える。









「――まぁ、貴方は仕方ないというのもあるのでしょうけど。」

声色を変えずに彼女も自分の銃を両手に取った。









背中合わせに、お互いが周囲を確認する。










その、凛と伸ばされた背筋は、この旅でいつの間にか身についた。

そして、それは、互いの背中。













風に赤と白のコートがなびく。

張り詰めた緊張の日々と。










叱られて苦笑する日常がそこにあった。












突発お題でヴァメリとヴァリプラをやってみよう!の一番最初です(何)

スッゴイ久しぶりにヴァメリ書いたよ〜、とりあえず、初期のぴりぴり感を出したくてこんな小説に(汗)

読んでくださいましてありがとうございます♪

そういや、三周年でした、今日(えー)

2006 3 13 伊予