Get Kiss.
その人はジープが壊れている時、「街まで乗ってくかい?」と親切に街まで乗せて行ってくれた人でした。
キール=ロックさん...
始めて見たときどことなくヴァッシュさんに似ていました。
「ありがとうございます、ロックさん。」
「いいってことよ、街まででいいんだな?」
「はい。」
他愛のない会話―――
その時から罠にかかっていたのかもしれない。
「あんたたち4人旅かい?」
「ええ...まぁ。」
「そーいや、そこの兄さん、人間台風に似てないかい?」
「いいえっ!チガイマスッ!!ワタシはジョン・P・スミスデスッッ!!」
いつものようにヴァッシュは仮名を使った。
「…そうかっ!スミスさんか!まぁ、人間台風でもオレは別にいいけどな〜!」
(…この人、ヴァッシュさんとウルフウッドさんを2で足して割ったような人ですわね・・・。)
そう、外見はやっぱり違っててももっと奥が。
「さて、まだ街まで着きそうにないからあんたたちは寝た方がいい。疲れてるだろ?」
「度々、すみません。」
「いいってことよ。」
もうウルフウッドとミリィは寝ていてメリルたちも疲れが残っていたのかすぐに眠りについた。
しばらくするとメリルは何故か目を覚ました。
「おや、あんたおきたのかい?」
「ええ。」
ヴァッシュたちは正しい寝息を立てている。
「見てるとこ旅も辛そうだね。」
「ええ、OLなのに。」
少し苦笑しながらメリルは言う。
と突然キールはそれを見て言った。
「なぁ、こいつだろ…人間台風っていうのは。」
「!そ、そんなこと…。」
「そう隠すなって。オレの勘がそういっているんだよ。」
メリルは少し考えため息をついた。
「…わかってしまいましたか…。」
「大丈夫、誰にもいわねぇよ。」
「すみません…。」
「何度もあやまるなって。」
気づくと辺りは夕闇が押し寄せてきていた。
三つの月が東から昇ってきている。
「……それに見たとこあんたとそいつは……。」
「はい?」
「…いやなんでもない。もう少しで街だ。寝てな…。」
そういってキールは黙ってしまった。
(―――あの、言葉の後は…)
「おーいっ着いたぜ!」
次に起きた時は街に着いていた。
辺りはもう夜。
「ん〜っ!なんや、もう夜中やな。どないする、宿。」
背伸びをしながらウルフウッドは辺りに散らすように言った。
「そうですね〜…。」
その後の言葉をミリィが続けようとしたとき、「オレん家に泊まらないかい?」とキールが言ってきた。ヴァッシュたちはキールに礼を言い、後を着いていった。
「ちょうど4部屋あるから。」
「ありがとう、ロックさん!今度僕と一緒に酒でも飲もう!」
キールは少しプッと笑った。
「キールでいいよ、スミスさんっ!」
そしてバンッとヴァッシュの背中を叩き、自分の部屋に入っていった。妙な流し目をしながら。
キールが去った後、4人もそれぞれ部屋に入っていく。
「おやすみなさい。」
「オヤスミ!」
「おやすみなさ〜い!」
「ほな、おやすみ...。と、嬢ちゃん!」
突然部屋に入るメリルをウルフウッドが呼び止めた。
「何ですか?」
ウルフウッドはヒソヒソ声でメリルに告げた。
「あの男...気ぃつけや。」
「え?」
メリルが聞き返すと間も無く部屋に入って行った。
「…何が、ですの…?」
メリルの声が寂しく響いた。
翌朝、4人は早々と朝食を食べ、ヴァッシュは買い物に、ウルフウッドとミリィは中古のジープを見に行った。
そしてメリルは部屋で一人、荷作りをしている。昨日の言葉を気にしながら。
(昨日は一体――。)
「失礼するよ。」
ノックが聞こえ、そちらを向くとキールがドアにもたれかかりながらいた。
「あっ、ロックさん。本当にいろいろしてもらってありがとうございました。」
「いや…それよりもう荷作りしてるのかい?」
ヤケに目の色が怖く、メリルは目を合わさずに言った。
「――ええ、いつ出発するか分かりませんから。それにご迷惑だろうし。」
「迷惑じゃない...一つ、質問していいかい。」
「何か…?」
キールは真剣な顔でメリルに近づき、あっという間にメリルの顎のラインを取り顔を上げさせた。
「なっ・・・・!」
「あんた、やっぱり行っちまうのかい…?」
意外な言葉。
何故そんなことを言うのか分からない。
「ちょっ…離してくだ…んっ!」
メリルの言葉を切るようにキールは突然キスをした。
それはまるで相手を飲み込むように深く、誰にもわたさないかのように感じた。
メリルは抵抗しようにも手はキールの左手でがっちりつかまれ、二人は近くの壁にもたれかかっていた。
「――んっ…やめ……てっ……!」
「嫌だね、離さない。」
またキールは口をふさぐ。さっきよりも深く、濃紺な……キス。
いつの間にかメリルは抵抗もままならなかった。
(…わ、私は…私は……っ!)
相手が首筋に移ろうとした瞬間。
「やめてっ!!」
とメリルがキールの手を解き突き飛ばした。メリルもキールも息を切らしている。
「…やめて…っ!」
「……はっ……やっぱりあいつかよ…人間台風のヴァッシュ・ザ・スタンピードかよ…ハハッ!」
その言葉の音はメリルの心にズキンと刺さった。
「…あの人は…あの人はあなたと違いますわ!!」
そう言ってメリルは部屋を飛び出した。キールは壁にもたれながら手を顔に当てていた。
外の玄関先でメリルはそこに腰掛けていた。
その目には涙を浮かべながら。
(…私は…あの人を……っ!)
「保険屋さん?」
その時、メリルの前には買い物袋を持ったヴァッシュが立っていた。泣いているメリルを前に少し戸惑っている。
「どうしたの…?」
その言葉に耐え切れず、メリルはヴァッシュに抱きついた。持っていた袋が音を立てて落ちた。
メリルは泣きながら言った。
「あ、あなたが・・・ッ!ちゃ・・んとっ…く・・れない・・・・からっ!わ、わたし…っず…とっ想っ…てて……っ!」
「…メリル…。」
二人はそのまま立ち尽くした。メリルのすすり泣きだけが聞こえる。
「メリル、大丈夫?」
「……ええ…すみません…。」
赤くなった目をこすりながらメリルはヴァッシュから離れようとした。だがヴァッシュは離そうとしなかった。
「ヴァッシュさん…?」
「…メリル、ごめん。嫌な思いをさせて…。……それと、さっきの答えは…。」
「………んっ……。」
グイッと引っ張られ、ヴァッシュはメリルの唇に口付ける。キールと違い、優しく、想いやるキス。それは長くメリルを包み込むような。
「…僕の気持ち、わかった?」
メリルの目に残った涙を指ですくいながら言う。
「―はい……!」
そしてメリルはにっこりと笑った。
「…ヴァッシュさん…私のそばに絶対いてください…。そうしないと私、誰かに…奪われてしまうから……。」
「大丈夫…絶対離れない。離さない。キミは僕のものだからね…。」
カタッと物音がして二人はその方向を向いた。そこにはキールが立っている。
「キール…。」
「――お前たちには敵わないな…負けたよ。…ったく、早く行け!荷物はもう積んでいる。」
少し離れた道には荷物を積んだジープとウルフウッドとミリィが待っていた。何やら話し込んでいるようだ。
「キール、ありがとう。それと、メリルはわたさないからなっ!」
「ありがとう…!」
二人はそれだけをキールに投げかけ、ジープの方へ向かった。キールは鼻を鳴らし家に入っていく。
「ったく、おっそいでホンマ!」
「センパーイッ!早く、はやく〜!」
「ええ、今行きますわ!」
「ゴメンゴメン!」
4人はジープに乗り、走り出す。一度も振り返らずに。
運転しているウルフウッドに向かって助手席に座っているミリィはヒソヒソ声で言った。
「ねぇ、ウルフウッドさん。」
「なんや?」
「センパイたち、もっとラブラブになっちゃいましたね。」
「まぁ、あんなことがあったからなー。」
「センパイたちには全部見ちゃったなんていわないでおきましょうね。」
「せやな。知られたらゲンコツもんやしな。」
「はい。ゲンコツです。あっ、ゲンコツって女の人しかできないんですよ♪」
「えっ?!ホンマ??!」
何はともあれ、4人は砂漠を行く。
                                            fin.
あとがき...という名の泥吐き。
うへ〜;;なんじゃいコリャ…;やっぱりまだ私はお子ちゃまです><つか何なんでしょ;;甘いような甘くないような…いやこれ絶対甘いですね…;相方の柚味さんいわく私の書くSSは甘いのが多いと…。そのつもりは無いんですけどこれは砂はきました。書いてると赤面でしたね。
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