今回のお詫び:杉田典子と「氷の微笑3」監督の年齢について
ユーリ「あのー」
バレリア「なんや」
ユーリ「素直に『かたせ梨乃とシャロン・ストーンの実年齢の記述について以前の「めおと漫才」で問題箇所がありました』と書けばいいのに・・・」
バレリア「ああ、両者を同い年と記述したんよな。それは筆者に言いまい」
ユーリ「『創造主』に何を言えと!?」
バレリア「それはしゃあない。本名・杉田典子こと、かたせ梨乃が1957年5月8日生まれなんは各種文献で記述が一致しており、公式には問題ないやろな。ところが、『氷の微笑3』で監督をやるとかやらんとか言われたシャロン・ストーンの公式な生年については文献によって差があるんや」
ユーリ「『氷の微笑』・・・。今(2007年)では70歳とかいう助平親父ポール・バーホーベン監督の、S・ストーンが脚組み替えるシーンだけで有名になったような作品でしたね。『2』は毎日新聞でも酷評でしたよ。誰が『3』なんて期待するのやら・・・」
バレリア「S・ストーンの生年月日は『外国映画人名辞典(女優編)』(キネマ旬報社)によると『1957年3月10日』。が、2007年時点で最新の『ぴあ シネマクラブ』や『クィンラン版 世界映画俳優大辞典』(講談社)によると『1958年』となっとる。で、ウィキペディアでは『1958年3月10日』」
ユーリ「これは筆者のリサーチ不足ですかね?」
バレリア「どちらが正しいかは断定できんが、ストーンの生年に2説あることを把握しとらなんだんは確かやな」
バレリア&ユーリ「筆者に代わってお詫びします。ペコリ」
本題〜その1:日本史と世界史では異なる中世以前のフォートレス・アタック
ユーリ「どう違うと言うんです?」
バレリア「火器の未発達な時代のことやが、日本史は心理戦。世界史は土木作業」
ユーリ「ますます分かりません」
バレリア「つまり、日本史での現実のフォートレス・アタックはたいがい同一民族同士で生起した内戦で、けりをつけるんは『調略』なんや」
ユーリ「調略は心理戦と言えるんですか?」
バレリア「似たような精神構造を持つ者同士やから、攻城戦でもほぼ同一のフィールドで戦っとる。そこに心理戦が惹起する余地があり、その延長線上に調略があると言えるわ。例外は晩年の信長が行ったいくつかの殲滅戦ぐらいかのう」
ユーリ「40代で晩年というのはやはり変な気がしますけど」
バレリア「やつは皆がサッカーしてる時にラグビー始めたようなもんやから」
ユーリ「『ナポレオンは戦争を知らないから困る』と同じですね?」
バレリア「それは確かオーストリアの将軍が言うた言葉として渡辺昇一が引用したと思うんやが・・・」
ユーリ「それで、世界史は土木作業というのは?」
バレリア「『強襲』やのうて『攻囲』の場合、目標の城砦の周囲グルリと小城砦等で包囲し、さらに自軍の背後をまたグルリと小城砦等で包囲して攻めるのが世界史でのセオリーや。日本史では『付城』いうやつやが、これは『話の落とし所』を求めてやる傾向がある。豊臣秀吉による小田原攻めの際の『一夜城』とか肥後(熊本県)田中城攻囲戦とか」
小田原攻めの際の「一夜城」:いわゆる「墨俣一夜城」とは別。1590年(天正18)の後北条氏攻めにおいて豊臣秀吉は小田原城を見下ろす位置に急ピッチで築城を行い、外観が完成した時点で山の木々を伐採し、あたかも一夜で城が出来上がったように見せ掛けた。北条方に与えた心理的インパクトはそれなりにあったと思われる。
肥後田中城攻囲戦:詳しくは「歴史群像 bW5 2007年10月号」(学研)参照。1587年の肥後国人(在地の中小領主らのこと)一揆で豊臣政権下の毛利氏が中心になって攻略。二重の柵を構築し、圧倒的な兵力で包囲したものの流血はなく、調略一発でけりがついた。
ユーリ「土木作業というとアレシアの戦いがその好例ですね?」
バレリア「ま、ローマ軍団は工兵軍団みたいなもんやから。一説には、元来、共和制ローマの軽装歩兵の2割ばかりが工兵やったとも言われる」
アレシアの戦い:紀元前1世紀のユリウス・カエサルによるガリア(現フランス、ベルギー)征服戦の最終章とも言える攻囲戦。手っ取り早く知りたいなら「世界戦史1」(有坂純・著 学研M文庫)がオススメ。「ローマ人の物語4 ユリウス・カエサル ルビコン以前」(塩野七生・著 新潮社)はすご〜くカエサルびいきなので、かなり割り引いて読む必要がある。なお、塩野センセイはシェイクスピアの「ジュリアス・シーザー」が嫌いなようだ。
ユーリ「2千年以上前によくやりましたね」
バレリア「ただ・・・アレシアの戦いの場合、勝者であるローマの史料で分析せないかんのが限界やなあ」
ユーリ「勝てば官軍、ですか」
その2:竹中半兵衛と16人の愉快な仲間たち、あるいは稲葉山城攻略
バレリア「さて、こいつは日本史に燦然と輝くフォートレス・アタックや!」
ユーリ「信用できる史料、ありましたっけ?」
バレリア「茶々入れるなや。時は永禄5年(1562)。美濃斉藤家の家臣、竹中半兵衛重治は大身の斉藤家臣にしょんべんをひっかけられた」
ユーリ「『乱』でもそーゆーシーンがあったような・・・」
「乱」:故・黒澤明監督の晩年作。1985年公開。原作はシェイクスピアの「リア王」。「数億円かけた城を撮影のためだけに焼いてしまう映画」である。
バレリア「怒った半兵衛は仕返しに稲葉山城(現・岐阜城)攻略を計画。16人の手勢を集めて長持の中に武器を隠して『病気の弟の見舞に来たんじゃー』と言ってなにくわぬ顔で城に入り、そこでいきなり武装して手薄だった警備を撃退し、攻略に成功したんや」
ユーリ「そりゃおかしいですよ」
バレリア「なんや、ジャック・ザ・パンプキン・ヘッド」
ユーリ「長持の中には歌舞伎役者が入っているのに決まってます」
バレリア「そりゃ絵島事件や!」
絵島事件:1714年1月、7代将軍・徳川家継の生母・月光院の代参として年寄(大奥の職名)の江島(事件当時、30代半ば)が家宣の廟に詣でたが、帰りに芝居役者・生島新五郎と遊興したことが表沙汰になった事件。絵島は信州高遠へ、生島は三宅島に流された。月光院やその取巻きへの反感が絵島の行動から爆発した事件、とされる。大奥モノには欠かせないエピソードである。その手の本によると、歌舞伎役者を長持に隠して男子禁制である大奥に連れ込むことがままあったり、大奥で火事が起こって鎮火した後に男性の焼死体が発見されたりすることもあったという。
ユーリ「じゃあ、古代エジプトの女性ファラオ」
バレリア「それは『オーパーツ・ラブ』!」
「オーパーツ・ラブ」:ゆうきりん(1967年生まれ)作。集英社スーパーダッシュ文庫。感受性の強過ぎるひきこもりの高校生・御堂獏(「みどう・ばく」。もちろん童貞)が考古学者の父から自宅に送られてきた古代エジプトの棺に「白い血」(牛乳)をこぼし、さらについうっかり指を切って「赤い血」(普通の血)をこぼして古代エジプトの爆乳女性ファラオ(処女)が蘇るというかなり奇天烈なラブコメ。さらに猫又巫女幼女(こいつはどうも処女ではないようだ)や巨乳陰陽師美少女の九尾の狐、貧乳幼馴染、子牛のゴースト等が押しかけ同然の身で主人公と同棲してしまう。加えてゲスト女性キャラとして体育会系ドジッ娘人魚、微乳マヤ文明少女、アトランティスの女王、ムー帝国女帝、実年齢33歳の魔女なんかがわらわら出て来る。2007年9月10日現在で22冊まで刊行されている。ちなみに、筆者は小泉光太郎クンが大好きです。
ユーリ「ところで、その後の半兵衛は?」
バレリア「城を主君に返して早々と楽隠居。信長の美濃平定前後に木下秀吉に仕官して、敵に回った浅井家家臣団への調略に活躍しとるな。その後は秀吉の中国攻めに加わって1579年に陣没。ついでに付け加えると、この竹中戦法は軍記物語の『太平記』や尼子経久の下克上伝説、それに田中芳樹のスぺ−スオペラ『銀河英雄伝説』でも用いられとる」
その3〜フォートレス(?)からの脱出!映画「ポセイドン・アドベンチャー」
ユーリ「えーと、『ポセイドン・アドベンチャー』は1972年のパニック映画で、主演はジーン・ハックマンですね。監督はロナルド・ニーム」
バレリア「うん、これはええ映画や」
ユーリ「『ポセイドン』は?」
バレリア「テーマパーク映画。『人がたくさん死ぬのにみんな大喜び!』と『小説新潮』で皮肉られとった」
ユーリ「ウォルフガング・ペーターゼンもどうしたんですかねえ・・・」
「小説新潮」:「新潮」が純文学系雑誌で「小説新潮」がエンターテイメント文学系雑誌。後者に「花と蛇」シリーズ主演の杉本彩が小説を連載していたが、たぶんゴーストライターだと思います(勝手な推定)。
バレリア「『ポセイドン・アドベンチャー』はなあ、豪華やけど船としての寿命が尽きかけとるポセイドン号が高波で転覆して『上下逆さまのフォートレス』になってしまうというアイデアもええんやけど、それだけやのうて、人物の描き込みが実に入念でドラマとしての完成度が実に高いんよなあ。ジーン・ハックマン演ずる破戒牧師(牧師なのでプロテスタント)のスコットが『ガッツを持って戦え』と信徒に説教したり、ポセイドン号が転覆して『上(転覆しているので船底)に行くと何があるの?』と尋ねられた時に『Life!(命だ!)』と即答したりするとこがたまらなくカッコイイんやが、映画の感想についてはここらにしとこう」
ユーリ「確か、10人パーティでしたよね」
バレリア「そや。リーダーは牧師で、サブリーダーはロゴ警部補(アーネスト・ポーグナイン)。残念ながらシーフは1人もおらへんが。スコットが『(通気口など狭い場所をくぐるので)からまる長いもの(ネクタイ、スカート、ドレスのたぐい)は脱げ!』とメンバーに言ったり、梯子代わりのツリーをまず子供に登らせて人道主義の発露と臆病な大人を励ますんの一石二鳥を図ったりするシーンはなかなか参考になる」
ユーリ「でも、あの映画はむしろ『ダンジョンマスターによるPCのいぢめ方』の参考になるのでは?それはともかく、彼は牧師になるまで何やってたんですかね。むやみやたらと体力あるし」
バレリア「さ〜あ、海兵隊ちゃうか?最後に一つ。‘潜水女王’ベル・ローゼン(故シェリー・ウィンタース)の活躍も見物やぞ!」
ユーリ「確かに彼女が飛び込むシーンは見事でした。当時50歳の太ったおばはんですけど(暗い表情で)」
その4〜日本最古のフォートレス・アタック漫画?「忍術・手品のひみつ」
ユーリ「こんなもののどこがTRPGチックなんです?1973年に学研から出た古い古い本なのに」
バレリア「なめたらあかんぞ、監修は初代・引田天功やし。それに相原コージの忍者漫画『ムジナ』の参考文献やし(笑い)」
「ムジナ」:相原コージが「サルにも描けるまんが教室」で稼いだ経験値をつぎこんだ力作。でも、やっぱり処女が人前でセックスを強いられてよがり狂うことはありえないと思います。
バレリア「『忍術・手品のひみつ』はお城の地下牢に閉じ込められた仲間の忍者を主人公の小学生タケシと少年忍者サスケが救出に行くパートが20ページあるんやが・・・」
ユーリ「だから、こんな古い本、普通は手に入りませんって」
バレリア「そやな。で、『水掘突破には浮き輪を使って体力のロスを防げ』と漫画で分かりやすく説明する」
ユーリ「それには同意します」
バレリア「で、地下牢近くで見回りに発見されそうになったら『天井にはりつく』」
ユーリ「『魁!!男塾』なら地下に潜ってるんですけどね」
「魁!!男塾」:宮下あきら・作。民明書房の名を普及させた世紀の怪作(失礼!)。初めはギャグ漫画だったが、気が付くとトーナメント形式のバトルものになっていた。
バレリア「で、番をしてるのがオーガーだったので・・・」
ユーリ「大男でしょ?」
バレリア「似たようなもんや。そこで少年忍者サスケは飲み水に眠り薬を入れて『戦闘抜きでガーディアンを無力化する』ことに成功する」
ユーリ「なんで毒殺しないんです?」
バレリア「子供向けの学習漫画やからな。主人公のタケシは小学生(推定)やし」
ユーリ「あー、はいはい」
バレリア「かくして『仲間の忍者救出作戦』は大成功のうちに終了するんやが、ここで忍び刀が『10フィート棒』やったという驚愕の歴史的事実が!」
ユーリ「信頼性の低い文献をもとに何言ってるんだか・・・」
バレリア「えーとな、暗闇を進むのに忍び刀のひも(長いものだと3メートルある)をくわえ、鞘から刀身が抜けかかっている状態でバランスをとるんや。そうすると・・・」
ユーリ「そうすると?」
バレリア「敵に当たったときに鞘が落ちて刀の先端が突き刺さるんや。どや!」
ユーリ「へ〜え。でも、10フィート棒とはまた違うような気もしますが」
バレリア「スケールの小さい男やのう、あんたは」
ユーリ「そう言えば、『1回探したところをもう1回探すNPC(?)はいない』という格言もありましたね」
バレリア「『ムジナ』でも応用されとったな。やけど、元来あれは『太平記』ネタやぞ」
その5〜(映画制作費が)安いカナダ製フォートレス「CUBE」
ユーリ「これは矢沢あいの少女漫画『NANA』(集英社)ファンにも見逃せませんよね!」
バレリア「なんでやねん」
ユーリ「だってレンが出てますし!」
バレリア「名前が同じだけじゃ!」
「NANA」:矢沢あい(1967年生まれ。煙草と永ちゃん好き)による少女漫画の良作(筆者はまだ3巻までしか買って読んでないが)。劇場版は出演俳優の降板など諸事情により「2」で制作が終わった。TVアニメ版は2006年に日本テレビ系列で深夜に放映され好評を博したため「アニメ版続編はまた作るかもしんない」ということらしい。筆者は「NANA」劇場版は中島美嘉のメイクが怖くて観てないが、「15年目」や「下弦の月」などを読んだりした結果、「矢沢あいは女の友情の醜美を描くのに長けた秀才」と高く評価している。
ユーリ「ま、確かに『NANA』の方のレンは『トラネス』(「TRAPNEST」の略)のギタリストで、『CUBE』の方のレンは脱獄犯のおっさんですが」
バレリア「・・・もう何も言わん。ヴィンチュンゾ・ナタリ監督の前でハラキリしてこい」
ユーリ「えー、それは今は無き本家『コマンド・マガジン』のタイ・ボンバ氏の前でやることでは?」
本家「コマンド・マガジン」のタイ・ボンバ氏:「Tigers are Burning」、「Blitzkrieg 41」といった感性と勢いでデザインされた(ように思える)ボードSLGで知られる。「コマンド・マガジン 日本版」(国際通信社。2007年10月末現在もフル稼働中)が誕生する際、日本側スタッフに「ハラキリするなら俺がカイシャクしてやる」と言ったそうだ。
バレリア「ふー、『CUBE』では今言うた‘アッティカの鳥’ことレンちゅうおっさんが靴を利用したCUBE流『10フィート棒』を使用するんや」
ユーリ「ああ、あれですね。2足の靴を靴紐で結んだ後で片方の靴を隣室に投げ込み、トラップがないかどうか確認するってやつですなあ」
バレリア「悔しいが今回はあんたの言うことが合うとる。ただ、この『靴型10フィート棒』で発見できるトラップは床圧力感知センサーに連動しているもののみいうんが厄介や」
ユーリ「色んなトラップがありましたよね。ガスバーナーとか切断ワイヤーとか。でも、問題はどれもこれもデストラップばかりということですよ」
バレリア「しかもしまいには『因数分解が暗算できないと正しいルートが分からへんで〜』という、もし現実のセッションで出されたらプレイヤーがGMに軽い殺意を抱くようなリドルまで登場するけんのう。まあ、知力判定とかで解決できるんやったらまた別やが」
ユーリ「リドルは普通プレイヤーの頭脳で解くものと相場は決まってるもんですけどねえ。そう言えば、『CUBE』は低予算映画でしたよね?」
バレリア「そや。36万5千カナダドル。1ドルと1カナダ・ドルの価値がそなに変わらんことを考慮に入れるとかなーり安上がり。90年代末期の為替相場なんてうちは知らんけどな。役者もたった7人で内1人はオープニング・フェイズで即死するだけの役やし」
ユーリ「あれはマスター・シーンでは?」
バレリア「あんたがツッコムな」
その6〜朝倉家によるフォートレス・アタック
ユーリ「戦国時代の朝倉氏なんかにできるんですか?」
バレリア「江戸時代に書かれたとみられる『朝倉始末記』ちゅう軍記物語によると、朝倉軍がとある城砦を包囲した際にその前で悠々と連歌を詠み始めたそうや」
ユーリ「連歌?」
バレリア「連歌というのは、まず1人が和歌の上句(五七五)を詠んで次の人物が下句(七七)を詠んでいくというもんや。元来、2人でやるもんやったそうやったけど、後に数人が集まって実行するもんとなり、しまいには下句が50、100、1000と増えていったそうや。最盛期は室町時代である、と筆者の持っとる古語辞典には記述されとる」
ユーリ「いかにも朝倉氏が好みそうですね」
バレリア「連歌は朝倉の専売特許やないんやが・・・。で、それを見ていた籠城側の兵士が『はっはっは、あいつら戦をする気がないぞ』と油断していた所へ一気に朝倉勢が押し寄せて案外あっさりと陥落」
ユーリ「なるほど、これはまさしく心理戦ですね。もしもロシア対オスマン・トルコならかえって警戒して城の防備を強化すると思います」
バレリア「ただ、気を付けなあかんのはこの戦法を行ったのは朝倉義景やないというこっちゃ」
ユーリ「もっと注意すべきなのは『朝倉始末記』の信憑性が低いということですよ」
バレリア「まーの。姉川の戦いで朝倉が信長を破ったけど神君家康公が食い止めたとか世迷言ぬかしよるし」
その7〜ワンルーム・フォートレス(からの脱出?)「ソウ1」
ユーリ「香川県のミニシアター系列でも2007年10月初旬に『ソウ4』の予告編が流れました。確かに『1』はワンルーム・フォートレスと言えなくもないですね?」
バレリア「なんで疑問符が付くんや」
ユーリ「いや、ほら、ネタバレ怖いですし・・・」
バレリア「という訳で核心には触れられん。一種のサスペンス映画やし」
ユーリ「火サスなんかといっしょにするなよー、と一応観客に釘刺しときます」
バレリア「どこの何の観客か知らんが、ゲーマー的観点からするとこの映画は『GMもプレイヤーもルールの範囲内で裏をかいて行動しようね』ということになるんちゃうか」
ユーリ「フォートレス・アタックと関係してますか?」
バレリア「類似してると思うで。ルールに反さない範囲でGMはPCに脅威を与えるけん、プレイヤーもルールに背かん限り秘術を駆使して良いっちゅうこっちゃ」
ユーリ「きくたけさんのリプレイを意識した発言ですか?あるいは人食い鮫を陸上にモンスターとして登場させて、プレイヤーが『なんで鮫が地上にいるんだ!』とGMを糾弾したら『ルールブックには鮫が海以外の場所で出現してはいけないとは書かれていない』と堂々と言い返すのと同じですね」
バレリア「あるいはバブリーズとかペラペラーズとかでも同じことやな。ただし、両者ともGMは『ソウ1』のフォートレス設計者(?)よりはるかにまともやけど」
ユーリ「比較自体間違ってますよ。そういや、何か別にもう一言言いたそうですね」
バレリア「『ソウ』シリーズは『1』から順番に見んとあかん。『2』から見始めたら、『ユージュアル・サスぺクツ』より先に『セブン』を見るのと同じくらい悲惨な目にあう」
ユーリ「カイザー・ソゼ!」
バレリア「言うな!それはええとして、『ソウ1』に関する情報を少し。脚本:リー・ワネル。監督:ジェームズ・ワン。撮影日数は18日で『メメント』よりも短い」
「メメント」:主人公がとある事情で5分かそこらしか記憶が持続しなくなっていることを前提にストーリーが展開する映画。撮影日数は21日。記憶がキーといっても邦画「博士の愛した数式」とは全く異なるので注意!ちなみに松本人志は映画エッセイ「シネマ坊主」の中で「メメント」をけなしている。
その8〜鼠小僧次郎吉(1797〜1832)のフォートレス(大名屋敷)アタック
ユーリ「鼠小僧・・・。盗んだ金を全部バクチにつぎこんでいたギャンブル中毒の泥棒でしたね?」
バレリア「そや。いつの間に義賊になったんやろなあ・・・。『日本侠客100選』(今川徳三・著 秋田書店)によると鼠小僧は生涯で大名屋敷専門に3千両以上盗んだそうやが、捕縛された時に使い切っていて『あんな大金どうやって使い尽くしたんや。貧乏人にばらまいたりしたんじゃねーのか』という笑い話が独り歩きして義賊扱いになったということになっとる」
ユーリ「で、大名屋敷アタックのテクニックは?」
バレリア「鼠小僧は元来鳶職人やから身体が軽い。それを悪用するケースも多かったそうやが、チェスタトン的トリックの応用も用いたらしいの」
チェスタトン的トリック:神学的とも言える心理トリック。江戸川乱歩は「真に偉大な推理作家について思いを馳せると、結論はポーとチェスタトンということになる」と考えていたらしい。おい、ソーンダイク博士(20世紀初めに創作された名探偵)の立場は?
バレリア「早い話が出入り商人のふりをして堂々と門から入って窃盗をはたらいた、というこっちゃ」
ユーリ「・・・まあ、それもありかな、って気もします。でも、鼠小僧が大名屋敷ばかりターゲットにしたのはどうしてなんでしょう?」
バレリア「あんたが屋敷の管理を行う侍やったとして、『すんません、うちの屋敷は警備がダメダメなんで泥棒に入られました』って南町奉行所に訴え出るか?」
ユーリ「う。そうした窃盗が南町奉行所の管轄内なのか?という疑問は感じますが、体裁悪いですねえ」
バレリア「そこや、そこ。さらに鼠小僧は奥方や腰元のヘソクリ盗みに力を注いだそうや」
ユーリ「大名の奥方がそんなもん盗られても、よほどの金額でない限り殿様に泣きつく訳にもいかないか・・・。ということは鼠小僧はなかなかの知能犯と思われます」
バレリア「結局、悪銭身に付かずやけどな」
その9〜Q極のフォートレス・アタック(脱出も含む)
バレリア「これはPC向けのフォートレス対処法ではないんやが・・・」
ユーリ「PC向けじゃないなら紹介しないで下さい」
バレリア「落ち着け。『Q極』と断っとるやろが。この方法は実に簡単、やけど後味は悪い」
ユーリ「落ち着いて聞きます」
バレリア「フォートレス内で自殺する、もしくは外で自殺してフォートレスに潜入する」
ユーリ「中国近世の小説に出て来る手法ですか・・・」
バレリア「人間が死んだら魂は1日に千里を行く、とかいう仏教なんやら道教なんやら儒教なんやら出自のよお分からんトリックという訳や」
ユーリ「まあ、実は伝令将校だった山本勘助なら別にいいですけど。どうせあいつは川中島で死にますし」
バレリア「ちょっと、あんた、史実と『甲陽軍艦』がゴッチャになっとるで」
山本勘助:実像と虚像が最も隔たっていると言えなくもない戦国武将。新田次郎(故人。「国家の品格」の著者の父)作「武田信玄」では「武田家諜報組織の象徴」として登場している。
バレリア「うーん、だいぶ長うなったな。次回は『執事と愉快な男性使用人たち』(仮題)ということで!」
ユーリ「ではまた」
(アキ・カウリマスキは名監督なので続く)