ユーリ「やはりあの偽装殺人が一番ですよね?」
バレリア「偽装殺人って何やねん。伯母の亡霊に憑依された少女をおもちゃのナイフで刺殺したように亡霊に思い込ませただけやろが」
ユーリ「すいません、初めから説明お願いします」
バレリア「あれは確か『ソードワールド』旧版やったな。とあるコンベンションで5人のPCが神官戦隊ボウズマンを結成したんや」
ユーリ「何ですか、そのボウズマンというのは?」
バレリア「PC全員がプリースト技能1レベルを習得しとるパーティの戦隊名称」
ユーリ「なるほど、ファリス・レッドとかラーダ・ブルーとかですね。でも、誰がピンクをやったんですか?とゆーか、その時点でGMはひっくり返ってるはずですよ」
バレリア「まあ、確かに筆者は仰天しとったな。その上、ボウズマンがファイティング・ポーズとっとるイラスト描いてくれる人までいた」
ユーリ「ありがたい話ですね」
バレリア「本題に戻らんといかん。そのセッションは『ロミオとジュリエット』の後日談的な話やったんやけど……」
ユーリ「『サンプルAとB』みたいなもんですか?」
「サンプルAとB」:藤子・F・不二雄(故人)原作の短編SF漫画。作画は少女漫画家(名前失念)が担当している。「ロミオとジュリエット」を宇宙人の視点から見ればどう映るかというかなりキテレツな作品。結末が甘いのが難点か。
バレリア「ちゃうちゃう。昔、恋人と駆け落ちしよとして結局心中になってもた少女が『自分は心中に失敗した』と思い込んだまま姪にとりついてもう1回悲劇を起こそうとするんや。ほんでパーティ・リーダーたるファリス・レッドが『君は彼を追って死にたいんだろ?じゃあ、それをかなえてやるよ。力を抜いて、この刃を君の心臓で錆びさせてあげる』と言うて人の身体に当たると刀身がひっこむナイフで憑依された少女を刺して亡霊に『ああ、自分はやっと死ねたんだ』と思い込ませて昇天させたんや」
ユーリ「全員プリーストなんですから神聖魔法で片付く問題だと思いますが……」
バレリア「いや、全員レベル1やからそんな高等な魔法は使えへん。GMやっとった筆者はPCが上手く立ち回ってくれれば高レベルのNPCを出すつもりやったんやが、そなな必要、結局なかったなあ。経験点500点ボーナスすべきやったかもしれん」
ユーリ「『ソードワールド』では他には?」
バレリア「最重要NPCをセッション開始後40分で説得してその後の展開をただのおまけにしてしもた古強者のプレイヤーさんもいたな」
ユーリ「何をやったんですか、GMとそのプレイヤーさんは?」
バレリア「今にして思えば、そのシナリオはかなり深刻な教育問題がテーマやった」
ユーリ「それはちょっとTRPG向けじゃあないですよ。普通はしらけるもんだと思いますが・・・」
バレリア「うちもそう思うわ。ほやけど、そのプレイヤーさんが柔軟な人やったんや。ティーチャー・レベル4はありそなNPCに諄々とした語り口で接して教育思想を改めさせてもた。説得したプレイヤーはプロフェッサー・レベル4(エデュケーション)ぐらいあったに違いない」
ユーリ「例の『黒いカラス』シナリオも某牛乳氏にひっくり返されたんじゃあないですか?」
「黒いカラス」:不条理文学の代表者とも言えるフランツ・カフカの姓の意味が「黒いカラス」だそうである。不条理文学の書き手としては「異邦人」「シーシュポスの神話」のカミュも有名。
バレリア「あれはカフカの超有名作『変身』を筆者なりに解釈してSWのセッションやるという無謀極まりないと言うか、恥知らずというか……」
ユーリ「『変身』って確かグレゴール・ザムザという青年が目覚めると奇怪な虫になってて『なんじゃこりゃー!!』なんて叫んだりせずに『あーあ、今日は会社に行けないな〜』とか思いながら怠惰に日々を送って、結局親族にリンゴぶつけられて死ぬ話でしょ?」
バレリア「ほう、基本はおさえとるやんけ。虫になってもうろたえへん、というのがあの短編の最大の特色やからな。なぜか勘違いしとる人ぎょうさんおるけど」
ユーリ「でも、ややこしい話作りましたね〜」
バレリア「はしかみたいなもんや。で、筆者は『黒いカラス』は『自分に対して退廃的な意識を持ったキャラをジャイアント・アントに変身させるマジック・アイテムが登場するシナリオ』にして話を進めたいう訳。ここで運のええことに某牛乳氏がカフカの代表作を熟読しとったもんやから……」
ユーリ「助かりましたね〜」
バレリア「そうとも言う。某牛乳氏は例のマジック・アイテムで姿が変わってしもたNPCの隣室で大きな声出して自己退廃意識に関係しとる世間話を始めたんや」
ユーリ「直接説得するよりストーリー的におもしろい、と筆者は思ったのですね?」
バレリア「その通り。変身解除のキーワードも会話に含まれとったし」
ユーリ「SWが続いたので、『D&D』では何かおもしろいGMひっくり返され事件はないものかと気になります」
バレリア「これは友人から聞いた話やけど・・・レベル1のマジック・ユーザーが敵対的武装村民×120を瞬時に武装解除させたそうやで」
ユーリ「はあ?」
バレリア「古い版でのセッションなんやけど、いきなりそのマジック・ユーザーが『スリープ』とばして『余はキング・オブ・ソーサラーであるぞ!』と高らかに宣言したんや」
ユーリ「あのー、旧版でレベル1ならその時点で対人効果のある呪文を撃ち尽くしていますよ」
バレリア「同じことをDMも言おうとしたらしいけど、『戦闘や魔術の訓練を受けていない武装村民にマジック・ユーザーのレベルを正確に判断できんじゃろ?』と逆にやり返されたとかいうことらしい」
ユーリ「確かに論理的には正しいです」
バレリア「『N◎VA−R』でもすごげなことをやったプレイヤーsがいたと聞いた」
ユーリ「特殊技能のマンチキンなコンボ技ですか?〈白馬の王子〉でメルトダウン呼びつけたりとか」
マンチキン:本来は「歴代ジェームズ・ボンドの中ではロジャー・ムーアが一番だね」とか言うゲーマーを指す用語らしい。どこがどうなって日本ではあーゆー意味になったのだろう?
バレリア「ちゃうちゃう、そんな甘いものやあらへん。ゴールデンルールをプレイヤーが提唱したんや」
ユーリ「具体的には?」
バレリア「カット進行の社会戦」
ユーリ「それって舞台裏でやることだと思いますがねえ〜」
バレリア「そこはゴールデンルールということで。千早系列の企業と反千早企業との間、正確に言うてまうとキャストVS多国籍企業との壮絶な社会戦が展開されたそうや。伝聞情報なので全部はうのみにでけんけど、『おりゃおりゃ、有害怪文書散布攻撃!』『くっそう、こっちは千早○○の下半身スキャンダル情報をマスコミにリーク!』『何、こっちは稲垣司政官の圧力じゃい!』とゆーよーなクライマックス・フェイズになったんやと。そのセッションに参加したかったわ」
ユーリ「そう言われればそうですけど、そんなアクトじゃあバサラやカタナなんかは活躍できませんよ」
バレリア「うーん、全くの伝聞情報なんでキャストの構成がよお分からんのよなあ」
ユーリ「じゃあ、今回はこの辺で」
(中川信夫監督の「亡霊怪猫屋敷」は傑作化け猫映画なので続く)