秋田みやびさんの「へっぽこーず」リプレイの批評めいたもの

 ユーリ「筆者は椎名高志の『絶対可憐チルドレン』をやりたかったそうなんですけど

 「絶対可憐チルドレン」:元来は03年の「増刊サンデー」に掲載された読み切り短編。1年の雌伏を経て04年の「週刊少年サンデー」第39〜42号に短期集中連載された「美少女育成ギャグ漫画」(椎名高志・談)。筆者は「ポプラ」高松出作店(04年6月移転)と通院している某メンタルクリニックで41号掲載分以外は読んだ。

 バレリア「重複するからまた今度や。ほんまに、ヒロインの1人のフルネームが三宮紫穂なんて狙い過ぎやで、椎名高志」

 ユーリ「それはそうと秋田みやびさんの新SWリプレイも04年6月の時点で第8巻ですから、いよいよ佳境ですね」

 バレリア「タイミングを完全に逸しとるんとちゃうか、あんた。今この記事書いてる段階でもう10月やないか」

 ユーリ「それは筆者に言って下さい」

 バレリア「それにしても不思議なんは、『へっぽこーず』がへっぽこ呼ばわりされる理由や。うちにはトグサが公安9課に配属されとるのと同じぐらいよお分からへん」

 トグサ:ご存知、「攻殻機動隊」のレギュラー登場人物。筆者は彼が一番気に入っている。なお、アニメ版「攻殻」が香川で地上波放送されるようになったのは04年6月から。

 ユーリ「まあ、妻子持ちですし、当然奥さんには本当の勤務先言えないし、あんな殉職率120パーセントの職場にいて家に帰るとかえってストレスがたまりそうですし・・・・・・」

 バレリア「ま、そうあんたが言うと思とったわ。ようは虚実皮膜やん、と筆者の師匠がおっしゃっとった。近松門左衛門の演劇論や」

 虚実皮膜:「きょじつひまく」、もしくは「きょじつひにく」と読む。フィクションは実を主とするが、表現する際には虚構と事実の微妙な間にこそ真実が成立するということ。日本文芸史における虚構論の先駆けともされる。バレリアが言ってるのは「トグサが家庭持ちという厳密に考えると少しおかしい設定がフィクションとしての『攻殻』のリアリティ強化に貢献する」ということである。

 バレリア「『へっぽこーず』一同のプレイヤーはへっぽこの演技をしとるとうちは思うで。 つまりは『レレレ』、そうでないなら『トーキョーN◎VA−Rリプレイ トータルエクリプス』とでも言うたらええかなあ」

 ユーリ「それは大半のゲーマーが既に気付いてると思いますけど・・・・・・」

 バレリア「経験点3000消費して筋力25になったイリーナのプレイヤーはたぶんシミュレーション・ゲーマーかモデラーやな」

 モデラー:軍事に関心を抱く人の内、鈴木銀一朗先生のことを「大佐」と呼ぶようなタイプを「ゲーマー」と呼び、T−34のキャタピラの写真を見るだけでレニングラード(現サンクトペテルブルク)のどの工場で生産されたか分かるタイプを「モデラー」と呼ぶ。(某氏談)

 バレリア「『きっちり皮袋に詰めると、銀で作ったブラックジャックになるんですよ、即席の』(8巻P14)とか、『転進』(P66)とか、『逐次投入は良くない』(P66)とか、『・・・・・・特攻機みたいですね』(P128)とか言うとるもんなあ。実際のセッションではマニアックなこと言うとったやろな」

 ユーリ「なんでそう判断できるんです?」

 バレリア「『ロール&ロール』(新紀元社)第2号P22を読んでみまい。秋田みやびさんが『リプレイ執筆者にとって、一番辛いのは(中略)目茶苦茶おもしろい、ゲームに関係のない会話を、すっぱりと削ぎ落とさねばいけない時』と書いてらっしゃる。そこからの推理やな」

 ユーリ「ずいぶん無理があると思いますが、これ以上追求しません。で、ここからどう話を展開させるんですか?」

 バレリア「新SWリプレイ・シリーズでの戦闘が格闘級シミュレーション・ゲームやということを忘れてはいかんなあ」

 ユーリ「そういや、そうですよね。8巻最初のセッションでバグベアードと戦った時、ソーサラーのヒース兄さんは参謀として(?)作戦を立案してますよねえ」

 バレリア「7巻以前にもやってたことやけどな。それはそうと、彼らはなんでいつまでもへっぽこでないとあかんのか。それこそ最大の課題やわ」

 ユーリ「TRPGの敷居を低くするためですか?」

 バレリア「解答の一つはそれやろな。GM兼リプレイ・ライターの秋田みやびさんとプレイヤーらはここまで言うてきたように相当の強者であるにもかかわらず、それをさして表面に出さんと『へっぽこパーティ』であり続ける。ほやけど、もう一つの解答がある」

 ユーリ「は?」

 バレリア「リプレイの形をしたゲーマー教習所や。へっぽこーずは確かに間の抜けた行動を取るけど、あれはキャラクター表現としてのロールプレイやな」

 ユーリ「筆者がぞっこんの『トーキョーN◎VA』シリーズで言うところのスタイルですね」

 バレリア「筆者の場合、『Blakk Box』を除いて『R』からファンなんやけど。それはともかく、へっぽこーずのプレイヤーはキャラクター・ロールプレイだけやのうて役割表現としてのロールプレイも上手くこなしとる。それを上段に構えて、『ロールプレイとはかくたるべし!』と演説せずにリプレイ中で読者に語っとんや」

 ユーリ「それって筆者の持論ですよねえ。でも、役割演技を本当にちゃんとやってるのかなあ?」

 バレリア「しっかりできとる。確かにエキューは『じゃあ、エルフ風呂』(P58)とかすっとんだ発言するだけでなく『ああ、「ルパン3世」ファンなんだなあ』と思わせることまでやるけど、精霊使いファイターとしての職務を忘れとらん。イリーナもファリス神官ファイターとしての役割を把握しとる。前者は『斥侯型軽戦士』で後者は『前衛担当重戦士』の本分から肝心なシーンで逸脱してないんや」

 ユーリ「バスはどうなんです。彼は変てこドワーフじゃあないですか」

 バレリア「バグベアードと戦う時に呪歌の『チャーム』使とったで。ドワーフは精神力の能力値が高いから、グラスランナーの次にバードに向いてるちゅうんは東から日が昇るぐらい確かなんを忘れたんか?」

 ユーリ「忘れてはいませんが、今ひとつ美しくないです」

 バレリア「そやからバスのプレイヤーはわざわざ変てこバードというピエロを演じてバランスを取っとるやん。これで納得したか?」

 ユーリ「水掛け論になりそうなので反論は控えます」

 バレリア「ええ子、ええ子。次はヒース兄さんやな」

 ユーリ「ドツキ漫才のボケ役ですよねえ。」

 バレリア「多少ハメを外してもええとこではな」

 ユーリ「えー、8巻での話じゃないですけど、無意味に前線に立って死にかけたじゃないですか」

 バレリア「あれは反面教師としての『レレレ』的ロールプレイやと思うけどなあ、うちは。ここでヒース兄さんのボケ役ぶりを論じてみたいけど、そんなことしよったら偉大なる横山やすし師匠(故人)の『今年の日記』にまで話が飛びかねへんから止めとくわ」

 「今年の日記」:横山やすしの漫談。去年だったか、NHKラジオ第1放送の「名人寄席」で流れていた。正月にその年の日記を読み上げるという内容だったと記憶している。

 バレリア「8巻でPC一同が一般人巻きこんで大乱闘した時、ヒース兄さんは必死になってその場をとりあえず収拾しとるやろ?冒険者をやっとる魔導師としてのロールプレイを実践しとるがな」

 ユーリ「そう言えないこともないですが・・・・・・恩師に対して尊大です。あれはソーサラー的じゃないですよ」

 バレリア「いや、だから、あれはキャラクター・プレイなんやて。うちの言うたこと聞いとんのか、あんたは」

 ユーリ「いえ、僕が分からず屋じゃないとこの記事自体が成立しないじゃないですか」

 バレリア「そーゆーことを口にするのは止めとけ。話が長うなるわ」

 ユーリ「では、最後にリプレイの書き方というものを・・・・・・」

 バレリア「いらん、いらん、そんなもの」

 ユーリ「いや、この記事はリプレイ評でしょう?やはりそこまでフォローしておかないと無責任です」

 バレリア「あくまで『めいたもの』や!第一『リプレイの書き方』論なんて出尽くしとるわ」

 ユーリ「じゃあ、この辺で今回は終わりにします」

(「東京物語」により改めて故・杉村春子のすごさを思い知ったので続く)
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