バレリア「うーむ」
ユーリ「いや、これはどうしたことぞ、我が妻」
バレリア「あんたはまだ『ニーベルンゲンの歌』が頭から抜けへんのか?」
「ニーベルンゲンの歌」:中世ヨーロッパの代表的叙事詩。作者不明。グンター王の妹・クリエムヒルトが夫のジークフリートを兄の重臣・ハーゲンらに謀殺され、それを恨んでフン族のアッティラ大王の後妻となり登場人物ほぼすべてを殺し合わせるというグロテスクな悲劇。なお、クリエムヒルトは「こんな女を王妃にしたばかりにフン族の戦士がほとんど全員討ち死に(少なくとも3千人は死んでいる)してしもたやないかあ!」とぶちキレたアッティラの老臣に斬り殺される。読んだ人の大半は「いやあ、『平家物語』は偉大だなあ」との感想を抱くのではなかろうか。まとまりとつじつまの双方が欠けているという点ですさまじいものがある。ただし、聴いて楽しむなら「平家物語」より敷居が低いんじゃねーかという気がする。中世ドイツ語なんて分かんねえけど。
バレリア「シナリオのタイトル決める時にどうする?と聞かれて困った覚えのうて困っとんや」
ユーリ「タイトルですかあ。よくあるのは『○○の○○』ですよね」
バレリア「『灰色のなんとか』とか『なんとかの狂詩曲』とかやな?ほやけどそれは『ある○○の一生』と同じみたいに、ちと古くさい感じするけどなあ」
ユーリ「じゃあ、『幕末奥州湯けむり大戦』なんかがベターなんですか?」
バレリア「それはどこぞのゲーム雑誌のリプレイ・タイトルやろが!」
ユーリ「そうなると『神話獣』とか『コンラート』とか『城塞』とか『決号』とか・・・・・・」
バレリア「論外や!それやったら『秋成が書かなかったから』や『1990+17』の方がよほどマシやで」
ユーリ「何ですか、それ」
バレリア「とあるアマチュア作家の次回作の題名と今清書しとるやつ、と聞いたな」
ユーリ「はあ・・・・・・でも何のためにタイトルを決めるかという疑問はありますねえ」
バレリア「ええ線いっとるな。うちはシナリオ・タイトルは読まれることを前提にしたプレイレポートやリプレイを書くのに必要なものと思とる」
ユーリ「そりゃまあ、リプレイの題名が『無題』では訳が分からないですよねえ」
バレリア「ここらで話を本題に戻さんと。タイトルは『あれ?何だろう?』と好奇心をそそらせるんがええわ」
ユーリ「例えば?」
バレリア「推理小説のタイトルも使えるものがある」
ユーリ「え〜本気ですかあ!?『○○○殺人事件』ばっかりじゃあないですか」
バレリア「ほな『砂糖合戦』なんか、どや。これも推理小説やで」
ユーリ「北村薫ですか、ふーむ。それはいいですね」
北村薫:推理作家。犯罪の起こらない推理小説を書かせるとこの人の右に出る者はいないのではないか、とゆー気が筆者には思えてならない。あ、でも「冬のオペラ」では殺人事件が起こっていたよなあ。ちなみに「砂糖合戦」は「円紫さんとわたし」シリーズ(とでも表現するしかない)の一つであり、女子高生3人が喫茶店で懸命に砂糖をかき出している、という所から始まる。確か短編集「空飛ぶ馬」に収録されていたよなあ。
バレリア「他の手としてはシナリオ内のクライマックスに出す予定のセリフをタイトルにするいうんもある」
ユーリ「その逆で内容と全く反するタイトルにするのもありですよね?」
バレリア「ミスリーディングとしてはありやな。ま、そーしたテクニックは東野圭吾あたりから学べばええやろ」
ユーリ「何だかなげやりですね」
東野圭吾:いつ直木賞を受賞してもおかしくない気がする本格推理作家。動機に焦点をあてる型。長編「眠りの森」では犯人とトリックが残り100ページばかり残して判明する(犯人は逮捕前に自殺)のに動機がさっぱり分からんという展開。
バレリア「タイトルというと洋画の邦題も忘れたらあかん」
ユーリ「ちょっと待って下さい。『バージン・スーサイズ』やら『ラブストーリー』やら『ウェルカム・トゥ・サラエボ』やら『ライアー』なんて翻訳も何もカタカナに直しただけですよ!」
バレリア「落ち着かんか。『ラブストーリー』は韓国映画で原題は「The Classic」やないか。香港やイランの映画の邦題を見てみいや。『恋する惑星』とか『天使の涙』とか『オリーブの林を抜けて』とか『運動靴と赤い金魚』とか『太陽は僕の瞳』とか。いっぱいええのがあるやないか」
ユーリ「そりゃまあ、そうですけど。でも、ロクデモない邦題ってのもあるじゃないですか」
バレリア「ああ、『砂漠の鬼将軍』やな。主人公が‘デザート・フォックス’エルウィン・ロンメルやのに」
ユーリ「いや、『戦争のはらわた』って言おうとしたんですけど・・・・・・」
バレリア「あれは軍隊内でのホモセクシャル行為についてもさりげなく触れとったんを思い出したわ。故・大岡昇平の『俘虜記』にも『軍隊内のおかま行為』という表現があったな。むろん、女装するという意味やのうてホモセックスによる性欲解消のことやけど」
ユーリ「あのー、このまま放っておくと六条院と朱雀院の関係はアヤシイとか言い出しそうなんで止めますよ」
六条院:日本最古の「プリンセスメーカー」ユーザー(かなり大ウソ。誇張有り)。10歳の養女を数年かけて「自分の理想の妻」に育て上げた。しかもその理由が「自分の初恋の女性である義母の姪だから、大きくなればさぞかし似てくるに決まってるやないか」というのだからなあ。ついでに付け加えておくと義母を妊娠させとるからなあ、こいつ。こう書くと鬼畜に思えるが彼の生涯をたどると事はそう単純ではない。
バレリア「分かった!六条院についてはまた今度やな!」
ユーリ「単に平○○学を嫌う人が嫌いなだけでしょ!さあ、さっさと本題に戻って下さい」
バレリア「立場が変わったな。ま、それはささいな問題や。TRPGと全く関係ないはずの『新日曜美術館』も案外タイトル決定の参考になるな」
ユーリ「は?」
新日曜美術館:毎週日曜日午前9時から10時まで(再放送は同日午後8時から9時まで)NHK教育で放送されている教養系番組。クオリティーはかなり高い。なぜかは知らんがちょくちょくベテラン漫画家がゲスト出演する。
バレリア「絵画や彫刻なんかにインパクトのある題名つけとることはままあるもんなあ。筆者がこないだ高松市美術館に行った時、『あ、このタイトルいいな』と思ったんのに『ロミオとジュリエットの街』いうんがあったわ。むろん人物画やなくて風景画」
ユーリ「インパクトがあるとは思えませんけど、人によってはいい感じかもしれませんね」
バレリア「今回はこの辺りにしとこか」
ユーリ「じゃ、次は六条○○○の生霊ネタもからみますね」
バレリア「ネタばらしすな」
(「純愛中毒」は衝撃的な非純愛映画でしたので、続きますか?)