良いストーリーテラーと悪いストーリーテラー

 ユーリ「また説教たれるんですかあ、筆者は」

 バレリア「いや、実体験を例にあげて私見を述べるだけや」

 ユーリ「そーゆーのを『説教』と呼ぶような気がしますが・・・・・・」

 バレリア「かわいげないやつやで、つくづくあんたは」

 ユーリ「去年の大河ドラマのことでしょうか」

 バレリア「また話をそらしおって。確かにうちかて米倉涼子よか八千草薫のお通の方が好きやけどな」

 八千草薫のお通:1954年公開の「宮本武蔵」(稲垣浩・監督)でお通を演じたのは当時23歳の八千草薫であった。ちなみに武蔵を演じたのは今は亡き三船敏郎(!)。又八役は三国連太郎(!)。故・平田明彦(「ゴジラ」の芹沢博士)が祗園藤次を演じている。

 バレリア「まー、個人攻撃になりかねないから細かいことは伏せるけど、『天羅・零』で筆者は吟遊詩人マスターに出くわしてしもたんや」

 吟遊詩人マスター:この言葉を某氏との会話で用いたところ、「懐かしい表現ですね」と言われた。初出はどこなのだろう。「コンプRPG」あたりか?

 ユーリ「つまり洗濯の自由はあっても選択の自由はなかったんですね?」

 バレリア「あんたのそのネタが『タウン情報まつやま』の投稿コーナー『笑負の世界』によるいうんは分かるが、言い回しとして妥当なんは否定できんな。セッションそのものは『信長〇野望』なら第1ターンで滅亡しそうな国に隣国が攻め込んできて、それをNPCの姫君(ヨロイノリ)がスーサイド・アタックで撃滅して、終幕で山名豊国クラスの親父が『我が娘の神風特別攻撃隊(仮)で敵国は弱体化したので攻めるのじゃあ〜』とわめきちらすのをPCらが諫めて終わり」

 山名豊国:羽柴秀吉(当時)が中国地方を攻略していた時、「降伏すれば因幡(鳥取県東部)を安堵するよーん」という甘い言葉に応じて鳥取城を捨ててのこのこ出てきたやる気なし大名。しかし、家臣は呆れ果てたのか、かえって士気を高めて強硬な毛利派となり徹底抗戦した。はっきり言って朝倉義景の方がよほどマシだとかつての「シミュレーター」誌上にも書かれていた。

 ユーリ「で、それが悪いストーリーテラーな訳ですか。いいんじゃないですか、すべてのセッションはお約束の集合体なんですから」

 バレリア「悪いいうんはそのことちゃう。あんた、さっき言うたばかりやないか、『選択の自由がない』と」

 ユーリ「そうですね」

 バレリア「やる気のない返事やな。PCはGMの妄想通りに動かされるだけで『決断』する機会が何もなかったんや。たまらんで、電動紙芝居は」

 ユーリ「『FF』ですか。筆者は『FF』で遊んでいる光景を見物したことはあるそうですがプレイは無しでしたよね。ま、電動紙芝居はつらいですよね。小学生が『地獄の黙示録』見せられるのと同じくらい」

 バレリア「それ、筆者の実体験やんか」

 筆者の実体験:筆者は小学3年生の時に友人に「『サーフィンしようぜ』っていうセリフがあるんだぜ」と言われて「地獄の黙示録」のその部分だけ見せられて困惑したことがある。見せた友人は映画ファンではない。何かかん違いしてそのセリフが9歳の子供に適したギャグと判断したのである。なお、「地獄の黙示録」はコッポラ監督の名作。ベトナム戦争の最中、ジャングルの中に「王国」を築いたアメリカ軍人(マーロン・ブランド)を殺しに行く物語。小学生が理解できる映画ではない。

 バレリア「せめて『ゲーマーズ・フィールド』は読んでほしいわ、『天羅・零』のGMやるんやったら。GMの感動を押しつけるのがあのゲームのコンセプトだと思とったんかのう、日本は広いで」

 ユーリ「さっ、そろそろ良いストーリーテラーに移りましょう」

 バレリア「あれは確か『ガープス』やったな。格闘魔導師系寄宿学校が舞台やったわ」

 ユーリ「某漫画家が『サイボーグ009』系寄宿学校モノ描いてましたね、デビュー前に。40年近く前だなあ」

 「サイボーグ009」:故・石ノ森章太郎の代表的名作。文庫版では21巻まで出ている(2004年1月現在)が、「天使編」(未完)はなぜか収録されていない。

 バレリア「『サイボーグ009』ほど陰気な話とはちゃうかったけどな。ま、それでもクラスメートがバタバタ死んだわ」

 ユーリ「『北斗の拳』の修羅の国みたいですね」

 バレリア「さすがに生存率1%とはちゃう。ほんで優秀な生徒は世界を脅かす『名を言うんもはばかる者』的な存在と戦わされるのやけど、PCらは化け物が人間の心の闇から産まれることを知ってや、戦いの方法それ自体を大きく変えるいうんを宣言して終わり」

 ユーリ「それのどこが『いいストーリーテラー』なんですか?さっきの『天羅・零』と大して変わりはないと僕は思います」

 バレリア「いやいや、大違いや。『PCは宣言するかしないかの選択・決断の自由』を保障されていたからな。口をつぐんで従来の『修羅の国』的アプローチを続行するのか、語るも辛い真相をNPCに知らせるのか。この2つの内どちらの道を歩むかはプレイヤーとPCに委ねられたんや。ほやけん、そのGMは『良いストーリーテラー』やったとうちは思う」

(「永遠のマリア・カラス」はオペラ好きにはたまらないので続く)
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