RPG以外のものにも関心を持つ

ユーリ「こんなこと役に立つんですか?」

バレリア「当たり前やがな。囲碁アマ6段で数学やパズルの本を愛読する方もいるがな」

  囲碁:「ヒカルの碁」で一躍子供の人気を博した知的遊戯。ただし、プロになろうと思うなら小学校低学年から本格的に取り組まねばならない。また、礼儀作法−常識と言い替えても良い−を心得なければ対局相手が消滅する。

 ユーリ「まあ、筆者がへぼの囲碁好きなのは置いといて、その奇特な人は?」

 バレリア「鈴木銀一郎さんやがな」

 鈴木銀一郎さん:名作「ロンメルアフリカ軍団」(翔企画。絶版)、「バルジ大作戦」(エポック。絶版/国際通信社より再販。残部少数と思われる)、「真・バルバロッサ作戦」(「ゲーム・ジャーナル」第1号付録ゲーム。ホビー・ショップで入手可)、「モンスター・メーカー」(これも翔企画)のデザイナー。日本で最高齢のゲーマーでもある。

 バレリア「RPGばかりに触れてはあかんのや。文学や美術、映画や舞台作品にも関心を寄せる必要があるのう」

 ユーリ「無茶ですって。何の関わりもないですし」

 バレリア「だから意味があるんや。長距離ランナーは走るためだけの機能があればいいんか?」

 ユーリ「いいと思いますけど……」

 バレリア「つくづくあかんのう、あんたは。それなりの選手になるには『すそ野を広げる』必要があるんや。『狭く深く』なんて不可能やしな。『広く深く』は天才しかできんが、『広く、所々深く』は努力で何とかなる」

 ユーリ「はあ……。そんなもんですかねえ。色々あって忙しいので、僕は…うーん…美術館に行くなんてできません」

 バレリア「『色々忙しい』のは言い逃れやで。筆者かて頻繁に美術館に行く訳やない。テレビで『新・日曜美術館』を鑑賞したり、画集を借りたりしとるんや。映画にしたって事前に内容を把握した上で割り引きサービスをフルに利用しとる」

 ユーリ「でも、筆者が行く映画って恋愛モノばっかりじゃないですか!」

 バレリア「あのな、『恋』は芸術の永遠のテーマやで。それにの、『ロード・トゥ・パーディエンス』はロード・ムービーやがな」

 ロード・ムービー:主人公が現実逃避もしくは本当の自分を探すために旅に出る映画。こう書くとまるでRPGのようだ。最近の邦画では「天国までの百マイル」が有名。

 ユーリ「他に何かありましたっけ。あ、昔の『コロンボ』はどうでしょう?」

 バレリア「ほやな、倒叙モノの名作やし」

 倒叙モノ:犯人が最初から分かっていて、主人公が真相を暴いていくジャンル。筆者は「市民ケーン」を観ていないとトリックの意味自体分からない「攻撃命令」や盲人を罠にしてコロンボが犯人を追い詰める「5時30分の目撃者」なんかも好きだ。ちなみに、コロンボは大のナチ嫌い。レンタルビデオ屋で「魔術師の幻想」を探して下さい。

 ユーリ「推理小説というと北村薫さんが筆者の好みでしたよね?」

 バレリア「あの人の小説は犯罪があんまし起こらんのがええんや。『冬のアリア』ぐらいちゃうかー、まともな意味で殺人事件が起こるんは」

 ユーリ「でも、あの小説はオペラ好きじゃないと結末でニヤリと笑えませんよ」

 バレリア「あんた、上手いことネタふってくれたな。オペラ鑑賞はステイタス・シンボルと勘違いしとる人も多いけど、元来は『大衆芸能』。江戸時代の歌舞伎と同じ感覚で欧州では今でも親しまれとる。何しろ、オーストリアなんか1万人に1つはオペラ・ハウスがあるそうやで」

 ユーリ「筆者は誰から聞いたんです?」

 バレリア「今は京大の大学院におられる恩師の方からの。で、正確には『オペラ』とはちゃうけど、ワーグナーの『ニーベルンクの指環』4部作は『指輪物語』に影響与えとるしのう」

 ユーリ「そんなの誰でも知ってます」

 バレリア「ほやけど、あんた『指環』を通して観たことあるんか?」

 ユーリ「合わせて14時間半もあるじゃないですか!」

 バレリア「NHKのFM放送で毎年年末に放送しとるのをチェックせんとは、あんたもつくづくあかん男や……。バレエについても触れておくか。『白鳥の湖』な。あれはそのまんま移植してもRPGやとだまされる奴もおるやろ」

 ユーリ「そんな人いませんよ。曲が有名すぎますから」

 バレリア「ごちゃごちゃ言いやがってからに。『海賊』とか『ライモンダ』とか『胡桃割り人形』の感覚もええもんや」

 ユーリ「君、完全に暴走してるなあ。筆者はボードSLGの話をしたいようですけど、『コマンドマガジン 日本版』第47号の付録ゲーム『ドイツ戦車軍団』はいいゲームだとわめいてることだけ伝えときます」

(「マーサの幸せレシピ」はセンスのいいドイツ映画なので続く?)
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