市販シナリオの利用法

 ユーリ「これは愚問ですよ。そのままセッションとかで使えばいいだけじゃないですか」

 バレリア「ほお、ほなプレイヤーがそのシナリオ知ってたらどうするんや?」

 ユーリ「え……でも、市販シナリオには普通『プレイヤーは読まないように』って注意書きがしてありますよ」

 バレリア「それでも読むやつはおるがな」

 ユーリ「じゃあ、どうするの、バレリア?」

 バレリア「『手を加えて別のシステムに転用する』ことやな。あ、このアイデアはうちのオリジナルちゃうで」

 ユーリ「誰のアイデア何ですか?」

 バレリア「グループSNEの友野さん。岡山県の某氏から聞いたんや」

 ユーリ「うーん、でもよく考えてみると……」

 バレリア「何や、かぼちゃ頭のジャック」

 かぼちゃ頭のジャック:映画版「オズの魔法使い」(1939)の続編である「オズ」(1983)に出てくるかぼちゃ頭の人造人間(?)。しかし、続編作るのになんで44年もかかるねん。

 ユーリ「ベテランなら一度は思いつくことでは?」

 バレリア「否定はできん。けどな、相互のゲームのシステム相違点を理解せんと悲惨やでー。『ロードス島』のシナリオを『ルーンクエスト』に使うとか」

 ユーリ「そりゃ嫌ですね。オーランスの信徒とフマクトのそれが酒場でパーティーを組むなんてルーンクエストじゃないですよ」

 バレリア「あんたも100回に17回ぐらいはええことを言うのう。それからの、市販シナリオの利用法としてはシステムの分析もあげられるわ」

 ユーリ「それは……リプレイの仕事では?」

 バレリア「あんな、リプレイの『主人公』はプレイヤーやで。GMは『狂言回し』に近いのう。ほいでもってや……」

 ユーリ「GMが『狂言回し』なんて言い方、GMに失礼ですよ。『脚本家兼演出家』じゃないですか」

 バレリア「途中で口をはさむな。あんたの悪い癖や」

 ユーリ「コリャマッタ失礼イタシマシタ」

 バレリア「数年前の高松市民劇場で『ロミオとジュリエット』のロシア人が演じたマキューシオみたいなこと言いおってからに」

 「ロミオとジュリエット」のマキューシオ:ロミオの友人。途中で殺される脇役だが、英文学の研究者が分析の対象としている。なお、「ロミオとジュリエット」の主人公はジュリエットであってロミオではない。

 バレリア「あんなあ、リプレイいうんはセッションやないで。セッションを整理して文章化したもんや。それが分かっとらんとあかん」

 ユーリ「でも、『トータル・エクリプス』や『鈴吹太郎の挑戦』のN◎VAリプレイは別物だと思うんですけど」

 バレリア「あれはガイドブックや。リプレイの形は取ってるけどな」

 ユーリ「そうなると、結局市販シナリオの利用法はシステム分析だけですか?それはそれとして、そもそも『システムの分析』って何なんですか?」

 バレリア「うーん、なかなか難問やのう。乱暴な言い方するとこうなるか。『ゲームの根幹としてのシステムがどのようなセッションを要求するかを極める思索』やろな」

 ユーリ「はあ……」

 バレリア「それだけで納得されると困るんやがのう。ええか、市販シナリオはプロが『商品』としてユーザーに提供するもんや」

 ユーリ「でも、誤植とかムチャクチャ多いじゃないですか!」

 バレリア「話のすりかえやな。今、話題にしているのは『システム分析』の定義づけであって、『市販シナリオの欠陥の指摘』とはちゃうんや」

 ユーリ「おおきに」

 バレリア「なんちゅうリアクションやねん、ニセ関西人め。本題に移るで。市販シナリオというのは、どうしてもシナリオライターや編集サイドの意向が出てくる。やけん、シナリオの背後にどっしりと構える、彼らの『システム観』が表れてくる。そこまで読み込んでやるべきやのう」

 ユーリ「香山リカの仕事じゃないですか、そーゆーのは。あの人、精神科医で『SFマガジン』にも記事書いてましたよね、確か」

 バレリア「『指輪物語』とか『ゲド戦記』の評論とかを読んで、シナリオライターの無意識下まで探索できんもんかのう」

(「気狂いピエロ」は刹那的行動の多発が良かったので続く)

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