ユーリ「あのー、バレリア。このテーマで何年か前にやったような気がするんですけど」バレリア「かまへん。あれはもう6年ぐらい前やけん。さて、まずはたがみよしひさの『なあばすぶれいくだうん』かのう。学研のノーラで連載されとった。ちと古いか」
ユーリ「どんな漫画でしたっけ?」
バレリア「探偵もの」
ユーリ「それはトリックをパクれという意味なんですか?」
バレリア「あのなあ……。主人公達が『日常生活としての探偵稼業』をやっとるとこに見習う意義があるんや。よお考えてみい。ファンタジーTRPGのPCは『日常生活としての冒険者稼業』をやっとるやろ?」
ユーリ「でも、それとこれとは……」
バレリア「関係ある!探偵/冒険者にとっての日常は依頼人を含めて一般人にとっては非日常やけんな。この日常と非日常の落差をGMは理解しておくべきやろ。『一般人とエキスパートの接触』の描写として参考になりうるやろ。それから、これは『なあばすぶれいくだうん』だけやないんやけど、たがみ作品にはシニカルで独特のテンポのセリフが多く見られるんやな。『なあばす〜』の場合、第3巻収録『すごく静かに殺せ』の冒頭部」
ユーリ「『我が名は狼(ウルフ)』の方が適切な気がしますけどねえ。で、お次は何なんです」
バレリア「『ブラックエンジェルズ』。『ドーベルマン刑事』もええんやけど、筆者は後者を余り読んでないんでのう」
ユーリ「『マーダーライセンス牙』の立場はどうなるんですか?」
バレリア「う……あれはちょっとヤバイ話があるのでパスする。『ブラックエンジェルズ』も相当アブナイが。父娘相姦とかレイプとか薬物投与でマインドコントロールされとる自衛官とか『バイオレンスジャック』のパクリとか」
ユーリ「最後のはちょっと違うと思いますけど」
バレリア「いちいちうるさいわ。『ブラック〜』は一言で表現すると『必殺仕事人』。最初の頃はな。まあ別に依頼がある訳じゃなくて各人が『こいつは生かしておけねえ!』と判断してビシバシと殺しまくる」
ユーリ「無茶苦茶ですよ、それ」
バレリア「まあの。今のジャンプじゃ無理やな」
ユーリ「そういえば、『はだしのゲン』もジャンプ連載でしたっけ?」
バレリア「話を元に戻すで。『ブラック〜』はなあ、殺し方もおもしろいんや。自転車のスポークとか催眠術とか十字架の銀鎖で絞殺とか玉つぶしとかトランプとか棒状手裏剣(?)とか。で、決めゼリフは『地獄におちろ〜!』。ダーティーヒーロー志望のゲーマーにはお薦めや」
ユーリ「次はもうちょいマトモなものをお願いします」
バレリア「そうやなあ。藤子・F・不二雄の短編SFか。最近になって次々に文庫化されてるんで手に入りやすいんや。『サンプルAとB』なんか強烈やったな」
サンプルAとB:宇宙人の見た「ロミオとジュリエット」。F氏は原作のみを担当し、絵は他の人が描いている。
ユーリ「でも、そういう短篇集が何の役に立つんです?」
バレリア「『SFの視点』の学習やがな。それもややヘヴィな」
ユーリ「それほど重いとは思えませんけどねえ」
バレリア「ほなあんたは萩尾望都の『銀の三角』がええというんか?」
萩尾望都の「銀の三角」:本格SFファンタジー。「ゲーム批評」の創刊号でも紹介されていた。なお、萩尾望都というのは本名であってペンネームではない。
バレリア「最後は正統派でいくか。あずみ涼の『ニーベルングの指環』」
ユーリ「オペラの漫画バージョンですか。確か、『指輪物語』のモトネタでしたよねえ」
バレリア「ふん、あんたもたまにはまともなこと言うんやな。粗筋を述べたい……けどできへん」
ユーリ「はあ?」
バレリア「『指環』の作者たる大音楽家リヒャルト・ワーグナーは論理的に物事を考えられない困ったちゃんで、ストーリーも複雑にからみあっとるんや。ただ、無理矢理一言で表すと『権力と愛の相克ドラマ』ということになる。トールキンはこの内、『権力』に焦点を合わせて『指輪物語』を書いた訳やな」
ユーリ「あずみ涼のは少女漫画でしたよねえ。いまいち『指環』っぽくない気がしますよ」
バレリア「かといって劇画タッチは余計たまらんやろが」
ユーリ「今回はこの辺で」
(「残酷な神が支配する」が完結したけど続く)