NPCの(再)登場法

 バレリア「まー、まずはあれやな。『いきなりぶつかる/こける』っちゅう」

 ユーリ「言ってて恥ずかしくないですか?」

 バレリア「やかましわ。確かにこの手はあまりにも使い古されとる。しかしや、応用はまだきくんや。例えばモー様(萩尾望都の尊称)の『残酷な神が支配する』6巻での保険調査員リンドンの登場シーン」

 「残酷な神が支配する」:萩尾望都の力作。「プチフラワー」に連載され、15巻(2000年6月現在)まで出ている。ほとんど隙のないプロット、緻密な心理描写は賞賛に値するが、少女漫画初心者は読まんように。

 ユーリ「そーいえば、あのシーン、いかにもリンドンが『怪しい』と思わせるには十分でしたね」

 バレリア「そや。『いきなりこける』人物が中年男性というだけで余りにもうさんくさい。で、読者にそう思いこませて『実は大善人』にしてしまう」

 ユーリ「だてに漫画家31年もやってませんねえ」

 バレリア「ギャグ漫画でもあったの。有名どころだと『GS美神』23巻おキヌちゃん再登場か。あれはオタク心をくすぐる演出やったのお」

 ユーリ「それはそうと、『Misterジパング』のヒナタ登場も印象的でしたねぇ」

 「Misterジパング」:椎名高志の新作。主人公は豊臣秀吉。しかし、このペースでいくと40巻ぐらいになるんじゃないだろうか。信長ファン必見。滝川一益ファンも……っているのかな?織田信秀(信長の親父)がたまらなくカッコイイ。

 バレリア「あー、それはあれやな。『別の所で出ているやつやんか!』とかいう。誰が見たってヒナタはおキヌちゃんにしか見えんわ!ショートカットやけど、巫女さんやしのう。で、帰蝶もルシオラ(「GS美神」29〜35巻に登場)にしか見えんわい!」

 帰蝶:父子2代がかりで美濃(岐阜県)を乗っ取った斎藤道三の娘。「濃姫」と呼ばれることもあるが、これは「美濃出身の娘」という意味で本名ではない。「帰蝶」というのも後世の作家がデッチ上げた名前。生没年不詳。美人かどうかも不明。はっきりしているのは信長の子を産まなかったことぐらい。

 バレリア「変化形は次の通り。『なんやなんや、こいつはあいつとよう似とるやんけ。えー、実は従兄どうしか?ちょっと待て。戸籍上は赤の他人でほんまは一卵性双生児やて!』というのが」

 ユーリ「そんなネタどこに転がってたんですか?」

 バレリア「教えん。ま、ヒントはやっとくわ。舞台が旧西ドイツのギムナジウムもの」

 ギムナジウム:ドイツにおける「エリート養成機関」みたいなもの。原則として、ギムナジウムでアビトゥア(卒業資格みたいなもの)を取らない限り大学に進学はできない。

 ユーリ「他には?」

 バレリア「『いきなり死ぬ/死んでいる』かの」

 ユーリ「話になりませんよ!」

 バレリア「うつけか、あんたは?『ゴルゴ13』でよくあるやろ。重要NPCがいきなり殺されて、『なぜ殺されたのか?』という推理が展開するという……。ま、たいがいゴルゴ13がからんどるやけんどの」

 「ゴルゴ13」:1巻を読みましょう。ゴルゴがベラベラしゃべり、クサイせりふを吐きます。おまけにアメリカン・ジョークまでとばします。殺し屋としては中沢啓二(この字でよかったっけ)の漫画に登場した「広島への原爆投下により家族を失い、それがために白人殺ししか引き受けない」ヤツが個人的にはいっちゃん好きです。

 バレリア「もう1つ、目をひくのは『トーマの心臓』やろな。“フロイライン”(お嬢様、の意)トーマ・ヴェルナーがいきなり自殺するとこから始まるし」

 ユーリ「なぜ少年なのに“フロイライン”なんですか?」

 バレリア「少年愛の漫画やからしゃーない。で、ストーリーは『なぜトーマは自殺したのか』という問いかけから始まって、神と人間の関係、マザーコンプレックスからの脱却、真の意味での『信仰』、息子との和解、ドイツにおける民族・人種差別等々……てなもんまで含むようになっていく」

 ユーリ「はあ、そんなやり方もあるんですかあ。やはり萩尾望都恐るべし、ですか」

 バレリア「まーの。それはともかく、NPCも人格持っとることを忘れたらあかん」

(やはり虐殺セッションはあかんよ。ゴブリンも独自の文化持っとるので続く)

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