江守徹講演会から学ぶもの

 ユーリ「こりゃまた分かりにくい。まず江守徹って誰です?」

 バレリア「石田三成やね。近松門左衛門でもいいんやけどな」

 ユーリ「あのー、ますます分からないんですけど」

 近松門左衛門:江戸時代の天才的劇作家。なんでこんなすごい人が300年近く前に出現したんだろう。やはりシェイクスピアの生まれ変わりなんだろうか。

 バレリア「文学座に所属する俳優・演出家・劇作家の方や。で、こないだ(2000年4月18日)講演会があったんや」

 ユーリ「高かったでしょうねえ……」

 バレリア「いや、参加費は300円やった」

 ユーリ「最近の小学生の遠足のオヤツ代より安いじゃないですか!」

 バレリア「んー、確かにそやな。でも、1万円の価値はある講演会やったで。主として杉村春子さんと演出の話やったんやけど」

 杉村春子:故人。日本の名俳優の一人。筆者は生で見たが、そのオーラには圧倒された覚えがある。惜しい人を亡くしたものだ。

 バレリア「江守徹さんが芝居のケイコする際には、例え杉村春子さんが相手でも『演出家』と『俳優』という枠組みは崩さんそうや。TRPGのセッションにもいえるな」

 ユーリ「は?」

 バレリア「『演出家』をGMに、『俳優』をプレイヤーに置き換えりゃ納得いくやろ」

 ユーリ「なるほど。でも、TRPGの場合、プレイヤーが俳優と観客を兼ねているような気がしますが……」

 バレリア「ふーん、あんたも100年にいっぺんぐらいはマトモなこと言うやんか。まあそりゃええわ。江守さんはこうおっしゃってたな、『役に成り切りたい、けれど観客が目の前にいるからできない』と。これもTRPGに共通するんや。TRPGのプレイヤーはキャラクターとしての『演技』だけでなく、役割分担としての『演技』も要求されるけん。その上、さっきあんたがゆうたようにプレイヤーは『観客』でもあるんや。やからTRPGにおいても『成り切る』ことはできん。ある意味、悔しいけどな」

 ユーリ「他にはどんなことを?」

 バレリア「江守さんは本番直前の立ちゲイコの際に台本をご覧にならんそうや」

 ユーリ「え?台本読みながらでないと演出ができないんじゃあないんですか?」

 バレリア「そりゃそこまでのケイコでは台本を見るがな。やけど、江守さんは『役者の動きに注目したい』そうや。これ、TRPGのGMにも言えることやな。セッション中に何度も何度もシナリオを読み返してテンポを悪くするGMは筆者を含めてケッコーおるけんな。やはりシナリオをあらかじめ読みこむのは大事や」

 ユーリ「なるほどお」

 バレリア「ほんまに分かっとんかいな。ちょいとばかり補足しとこうか。GMはじっくりプレイヤーのキャラクター・メイキングとその間に交わされる雑談を観察しておく。その上で、『ふむ、このプレイヤーは○○タイプやな』と判断するんや、と思ったそうや。このくだらん記事の筆者はの」

 ユーリ「まさか、江守徹さんも講演会にTRPGのゲーマーが侵入してるなんて気がつかなかったでしょうね。でも……」

 バレリア「なんや、このスポンジ頭!何か言うことあるんかい!」

 ユーリ「前もって十分に『ケイコ』しとけば、スムーズにセッションが進行するんじゃないんですか?」

 バレリア「この大うつけ!椎名高志の最新作『Misterジパング』に出てくる連中よりタチ悪いわい!『ケイコ』しとったらそれはもうTRPGとちゃうやろが!」

 ユーリ「あのー、こんな所で宣伝したって……」

 バレリア「全部筆者が悪いんや!筆者が2番目に好きな漫画家が椎名高志やからしゃーない。それはともかく、次は『エターナル・チャンピオン』対策や」

 ユーリ「いきなり、ムアコック出されても」

 ムアコック:言わずとしれた超有名ファンタジー小説作家。代表作は「エルリック・サーガ」を含む壮大極まりない「エターナル・チャンピオン」シリーズ。音楽活動もこなすマルチな人。筆者は個人的に、「コルム」シリーズが気に入っている。ここでは「同じクラスばかりやりたがるプレイヤー」のことを指す。

 バレリア「『エターナル・チャンピオン』は『まずこのクラスありき!』なんや。で、江守徹さんは『まえもって「こいつはこんな奴!」』と決めつけて演出したくないと述べておられてたんや」

(江守徹さん、ありがとうございましたなので続く)
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