神殿における情報収集について

 ユーリ「もー、バレリアったら。同じ宗派の人でしか入れないとか金払うとかいうので十分じゃないですか」

 バレリア「ほほう、あんたはファンタジーTRPGの神殿における情報収集をシステムに組みこんだゲームがたくさんあるとでも思とるんか?」

 ユーリ「う〜ん・・・・・・でも、既にお約束じゃないですか」

 バレリア「意味分かっとらんのう。やっぱあんたの頭は『マタンゴ』やの」

「マタンゴ」:1963年に公開された東宝の怪奇特撮映画。ある無人島に流れ着いた男女が妙なキノコを食ってキノコ人間になっていくという話。監督は「ゴジラ」で名高い故・本多猪四郎。ちなみに本多監督は故・黒澤明の親友であり、黒澤の遺作である「まあだだよ」の制作にも関与している。なお、筆者はまだこの映画を見ていない。

 バレリア「ええか、ファンタジーTRPGのイメージの基盤たる中世ヨーロッパの教会や修道院なんかは宗教団体の格好はしていても実態は封建領主やで。中世の一時期には教皇がヨーロッパでも屈指の膨大な領土を『寄進』という形で獲得していた。まあ、文章では分かりにくいけん、『薔薇の名前』でも見ることを勧めるわ」

「薔薇の名前」:中世の修道院を舞台にしたミステリ。映画版ではショーン・コネリーが主演。ラストで大量の本が焼けていく場面を見て、「ああ、なんてもったいない」と思ったのは筆者だけであろうか。

 バレリア「しかーし、ファンタジーTRPGでそんなことなかなかできんわな。寄進してもらうために儀式を行うファリス神殿なんて見たくもないぞ。あんたもそう思うやろ?」

 ユーリ「うーん、悔しいけど同感です」

 バレリア「おい、『悔しい』ってなんや。とにかく、ファンタジーTRPGにおいては『生臭さ』の強調は止めた方がええ。繰り返すことになるが、システム内に組みこまれてるんやったら別やけど」

 ユーリ「それじゃあ、解決策にも何にもなってないじゃあないですか」

 バレリア「ふむ、ここでやっと本題に戻れる訳や。筆者がマスターをした時のことを例としてあげることにするわ」

 ユーリ「はいはい、ちゃんと耳を傾けます」

 バレリア「確か、『ブルフォレ』だったかな。『精神修養には掃除が一番ぢゃ』ということにして神殿中をゾウキンがけさせた」

 ユーリ「はあ・・・・・・」

 バレリア「こーゆー例もある。宝物の鑑定に・・・・・・」

 ユーリ「ちょっと、ちょっと、バレリア。宝物鑑定なら盗賊ギルドの仕事じゃないんですか?」

 バレリア「『ブルフォレ』には盗賊ギルドはないやろが!それに、うちは神殿での情報収集について語っているんやで」

 ユーリ「分かりました、分かりました。どうぞ先を進めて下さいな」

 バレリア「そおゆう態度やと、次のセッションでのあんたのキャラの生存率は低下するで。ま、脅し文句はこれぐらいにしとこう。宝物の鑑定のために『フレスコ壁画の修復のお手伝い』というのをやらせようかともシナリオの段階では準備しておいた」

 フレスコ壁画:ルネサンス期に主としてイタリア半島(この時期のイタリアは都市国家が多く存在し、分裂状態にあった)で好まれた壁画。余りにも有名な「最後の晩餐」もフレスコ壁画である。

 ユーリ「うーん、肉体労働ばっかりのような・・・・・・」

 バレリア「ほな、精神面でのことも話しておくわ。一心不乱に祈りを捧げ、神託を得るとかな。あるいは神殿で眠っていると暗示的な夢を見るとか」

 ユーリ「後者は『深淵』っぽいですね」

 「深淵」:この記事を読んでいる方にはさして説明する必要はないと思われる。なのにわざわざ述べるのは、筆者が「『深淵』は“死に場所”の選べるゲーム」として高く評価しているためである。

 バレリア「神託のルールは確か『ソード・ワールド』にもあったのう。ほやけど、あれは全面的にマスターの判断に任されておるけん、システム内に組みこまれているとはいいがたいの。でも、まあ、うまく使えばセッションに奥行きが生じるのは間違いないの」

 ユーリ「でも、あれは神殿での情報収集とは違うでしょ」

 バレリア「ヤナ感じやけど、あんたの指摘通りやな」

(「スターウォーズ エピソード1」のヒロインは「レオン」の少女だったので続く)


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