SF/ファンタジー映画紹介
ユーリ「ゲーマーの人は十分映像作品に慣れていますからあえて言うほどでも……」バレリア「アニメーションに関してはそうやろな。ほやけん、今回は実写映画に限っていくことにするで」
ユーリ「まずは?」
バレリア「当然『ブレードランナー』。リドリー・スコット監督のやつな。完全版だのディレクターズ・カットだのいろんなのがあるが、名作は名作。SFというジャンルにおいてサイバーパンクが誕生するのとほとんど同じ時期に完成した。映画評論家の間でも『エイリアン1』よりも高く評価されている。近未来伝奇アクション漫画『サイレントメビウス』の街並みもこの映画がなければ全く違ったものになったはずやな」
ユーリ「そんなこと言ってると『サイメビ』ファンから石を投げられるよ、バレリア」
バレリア「何を言う。うちは『コンパイラ』の馬鹿馬鹿しいとこは好きやで。ま、それはそれとして次に移ろう」
ユーリ「筆者の趣味から考えるとフランコ・ゼフィレッリ辺りでしょうか?」
フランコ・ゼフィレッリ:イタリアの演劇・オペラ演出家にして映画監督。代表作は「ロミオとジュリエット」(1968年 英・伊合作)。これを置いてないレンタル・ビデオ屋には足を運ばんように。
バレリア「それは違うの。筆者はここ数年アジア映画にはまっているのだからな。『天使の涙』や。香港のウォン・カーウァイ監督。これはアジア版『ブレードランナー』。徹底して『乾いた』世界を描いている。二つの関係ない話がからみあいながら展開するだけでなく、時間経過の度合いも分からへん。『不夜城』の成功で日本でもメジャーになった金城武が出演してるのも忘れてはならんの」
ユーリ「な、何か難易度が高い映画が出ましたね。第一、『天使の涙』を理解できて、評価を下せる人ってそういるんですか?」
バレリア「ふ、うちの深謀遠慮を知らんの、あんたは。『オズの魔法使い』。これならどや!」
ユーリ「でも、以前筆者が映画ファンの人と話していて『何、それ?』って言われたでしょ」
バレリア「あーあれはのう、その人が"自称"映画ファンやったけん起こった喜劇や」
"自称"映画ファン:筆者の定義によれば「七人の侍」、「市民ケーン」、「第三の男」を全然知らないのに「映画ファンです」と言う人のこと。
バレリア「あんたのおかげでまた話がそれたわ。『オズの魔法使い』は戦前にもうかりまくっとった某映画会社が『よーし、子どもをターゲットに採算を度外視した映画をつくろう!』と言ってできあがったファンタジー・ミュージカルの傑作。まあ、ヨーロッパ的神話世界が好きな人は違和感覚えるかもしれんけどな。特撮も60年前とは思えないほど見事やし」
ユーリ「で、いざ上映してもうかったんですか?」
バレリア「観客動員数はなかなかのものやったんやけど、その大半が子どもやけに。結局赤字」
ユーリ「で、見所は?」
バレリア「悪の魔女の城に侵入してからの『タタカイ』かな」
ユーリ「何でカタカナになるんですか?」
バレリア「漢字で書くと真剣にストーリーが進んでいくような誤解を与えるからや。何せラスボスが漢字一文字で表せるもので死んでしまうからの」
ユーリ「はあ、漢字一文字で……。で、他にお勧めは?」
バレリア「黒澤明監督の『夢』。オムニバス映画なんだが、ファンタスティックなものが多い。そして、何よりも素晴らしいのは『日本のファンタジー』が大半を占めていること。狐の嫁入りだの、能のように舞うひな祭りの人形達、雪女、いかりや長介の出てくる鬼達の話とかの」
ユーリ「で、どれが一番おもしろいの?」
バレリア「戦地から帰国した元中隊長が亡霊となってトンネルから現れるかつての部下を『お前達は死んだんだ』と説得する話やな」
ユーリ「ホラーですか?」
バレリア「馬鹿者!ホラーなら『蜘蛛巣城』があるやろが!」
ユーリ「あれってホラーでしたっけ?確かに怖いけど」
バレリア「とにかくなあ、黒澤という人は『生き残ってしまったという負い目』を一生抱えて生きてきたんや。戦争中には国威発揚映画も作った訳やし。帰国した元中隊長は彼自身のことやろな。こうしたやりきれなさをファンタジーとして仕立てる辺りに彼の有能さがうかがえるのう」
(カナダ映画「CUBE」はおもしろかったので続く?)