プロポーズ&口説き文句を萩尾望都に見るユーリ「無茶じゃないですか。まあ、やってみるしかないですね。」
バレリア「そやな、まずは一夫一妻制のキャラクターが一夫多妻制のキャラクターにプロポーズする場合……」
ユーリ「ちょっと、ちょっと。そんな設定のゲームあるんですか?」
バレリア「めったにないやろけど、オリジナルだったらあるんでないか。で、具体的にそのセリフを紹介するけんの。『ぼくの星(国でも可)へ来りゃいい。一夫一妻制だ。ぼくと結婚しなよ。』やな」
ユーリ「何かとってつけたようなプロポーズですね」
バレリア「やかましわ。このセリフはモー様(萩尾望都の尊称)の傑作の一つである『11人いる!』(小学館)の名言やぞ」
「11人いる!」:宇宙大学の最終試験に臨んだ10人の受験生。しかし、試験場である宇宙船に着くと「11人いる!」ことに気づく。ややソフトなSFサスペンスである。
バレリア「次はこれかな。『わたしたちは結婚するのよ。そして子供を生んで育ててまろやかな家庭を作るのよ。なにもかもとりもどせますとも……』これは『メリーベルと銀のばら』のセリフやな。女性が語ったもんやけど」
「メリーベルと銀のばら」:名作「ポーの一族」(小学館)の中篇。シリーズ中でもかなりの人気がある(「あった」と言うべきかな?)
バレリア「んで、これが三つ目。『子供には父親がいるしさ』やな。これは『メッシュ』シリーズの『謝肉祭』(小学館)が出典や」
「メッシュ」シリーズの「謝肉祭」:主として現代のパリを舞台とし、完結までに4年を費やしたシリーズ(でも、単行本で4冊しかないんだよなあ)。「謝肉祭」はその後期の作品。
ユーリ「他には何があるんですか?」
バレリア「やはり『ポーの一族』の……」
ユーリ「また『ポー』ですかあ」
バレリア「黙っとれ。『ぼくがプロポーズしたらおこる?』やな。『ポーの一族』中の『ポーの一族』のセリフや。」
ユーリ「シリーズタイトルと中篇タイトルが同じなのはややこしいですねえ。」
「ポーの一族」中の「ポーの一族」:3人の中心人物が出揃う「ポー」シリーズ唯一の作品。
ユーリ「いいかげんネタが足りなくなってきたんじゃありませんか」
バレリア「なんのなんの。モー様は漫画家歴29年やけんな。『ぼくはね。自分の意思ではっきりと……きみにいいたいんだよ、今度こそは。ぼくまえからきみのこと……好きだった』。これは萩尾望都第T期作品集第17巻「アメリカン・パイ」に収録されている『アロイス』やな」
「アロイス」:二重人格の少年の休暇と事件の物語(こう書くと、ダニエル・キースみたいだな)。
バレリア「んでもって邪道だけどこれやな。「えいりあん・てぃ〜」の会員が出した同人誌『萩尾望都と結婚の本 BRIDAL』にある『この恋は苦しい恋にしたくない』やろな。これは萩尾望都第U期作品集8巻『訪問者』に収録されとる『偽王(にせおう)』のセリフをもじっとるもんやな」
「偽王」:追放された国王と過去に忌まわしい記憶のある青年の物語。
バレリア「では、最後のセリフを引用するか。『マージナル』(小学館)での『君の副腎は何をしてる?子宮のそばで。子宮はぼくの子がほしいといってる……』やな。萩尾望都ワールドでは今の所、一番強烈な口説き文句やなあ」
「マージナル」:萩尾望都の近年の(それでも10年経ってるが)SF大作。初めて「萩尾望都を読むぞ!」という方には「とりあえず『11人いる!』や『アメリカン・パイ』辺りから読みなさい」と薦めておく。
ユーリ「今回、僕の出番が少なかったなあ」
(セルゲイ・ボドロフの「コーカサスの虜」はいいねえなので続く)