差別とTRPG

ユーリ「何だか物々しいテーマですねえ」

バレリア「そのとーりや。やけど、大事なことやで。まずは有名な『ランド・オブ・ニンジャ事件』からやな」

「ランド・オブ・ニンジャ事件」:「ルーンクエスト」(アバロンヒル/ホビージャパン)のサプリメントである「ランド・オブ・ニンジャ」に差別的なルール・設定があることを朝日新聞等が取り上げ、回収・絶版になった事件。

ユーリ「でも、私は『ランド・オブ・ニンジャ』のルールを読んでないので何とも言いようがないんですが」

バレリア「それは筆者も同じことや。が、今は亡き雑誌『朝日ジャーナル』の記事を信用するならば、差別ゲームと呼ばれても仕方ないやろ。なんせ、『アイヌ人は野蛮人』とか『被差別部落出身PCは不当な扱いを受ける』とかいう設定とルールが存在していたらしいからのう」

ユーリ「でも、『ガープス』の和訳されていないサプリメントの方がひどいですよ」

バレリア「そやな。ナチスが第二次世界大戦で勝利して、アメリカも人種差別主義者が政権を掌握する、なんてのもあったな」

ユーリ「他には、南北戦争が引き分けに終わってしまってアメリカ南部で奴隷制度を維持しているとか」

バレリア「ほんまになあ。そーゆーサプリメントは作ってほしくないで」

ユーリ「日本軍が中国大陸で化学兵器を使って侵略するなんてのもありましたよね」

バレリア「しかも、朝鮮の人々の地位レベルがマイナスだったのう」

ユーリ「さすがに今回は僕もボケ役できませんねえ」

「ガープス」の差別設定満載のサプリメント:「ガープス・ディキシー」である。絶対に和訳されないだろう。

バレリア「そもそもなあ、TRPGに差別ルール・設定を求めることそれ自体がおかしいんや」

ユーリ「でも、結構そういうのあるんじゃないですか。『ソード・ワールド』の旧版でも『人間の親から隔世遺伝で生まれたハーフ・エルフは忌み嫌われる』って明記してますよ」

バレリア「ふんふん、あんたにしてはええこと言うのお。でも、それは見当違いというもんやで」

ユーリ「はあ?」

バレリア「『ソード・ワールド』の旧版にハーフ・エルフがどのような冷遇を受けるかのルールはあるか?『ガープス』のように地位レベルなんてものがあるか?」

ユーリ「で、でも筆者の先輩でキング技能10レベルを求めた人が……」

キング技能10レベルを求めた人:広島大学SF研究会のSさん。とあるマスターが「『ソード・ワールド』で10レベルキャラのセッションやりまーす」と言った際にすかさず、「じゃあ、俺キング10レベルね」とボケてみせた。

バレリア「それとこれとは話がちゃうやろが。何考えとるねん!」

ユーリ「反省します」

バレリア「あまり信頼できんが、しゃあないか。ええか、確かに『ソード・ワールド』の旧版にはそうした記述はある。しかし、それは世界設定にさしたる悪影響はあたえない。ルールブックを読めば分かることだが、ハーフ・エルフの『冷遇ルール』なるものは存在しない。あくまで雰囲気づくりのために冒頭に『冷遇される』と加えたに過ぎない。だから、このゲームは『ガープス』系差別サプリメントとは雲泥の差があるんや。それに階級制度については特に定めていないの。そやけん、『ソード・ワールド』の旧版は差別ゲームではない」

ユーリ「なるほど。でも、差別を扱うシナリオ作りには、妨げになるのでは?」

バレリア「そこが問題なんじゃ、このスカタン!」

ユーリ「すいません!」

バレリア「ま、脳みそがクルミでできとるあんたには分からんかもそれんけど、説明しておくで。まずな、TRPGというのは娯楽、あくまで遊びや。セッション内で人を殺そうが殺されようが、それによってプレイヤーが不利な待遇を受ける訳ではではない。しかし差別というのは現実に存在し、マスコミ等ではあまり取り上げられないが、毎年何人もの自殺を生み出す社会的問題や。例えて言うなら、TRPGはショートケーキで、差別は毒キノコやな」

ユーリ「なるほど、だから差別をTRPGに持ちこむことは危険なんですね」

(「HANA−BI」は良かったので続く)

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