おすすめのファンタジー小説

ユーリ「うーん、ファンタジーですかあ。いー響きですねえ。さて、ここで一句」

バレリア「何を考えとるんじゃ、このタワケ!まず『指輪物語』から始めるべきやろが」

ユーリ「えー、でも『ロードス島戦記』も結構いいんじゃないの?」

バレリア「あかんな、あのシリーズは。構成が無茶苦茶やし、日本語になっとらん。それに何よりも塩野七生を馬鹿にしとるんかい!と怒りたくなるわ。社会学に対する認識が甘過ぎる。うちの弟は『何や、この自由騎士っつーのは』と言っとったわ」

塩野七生:「しおのななみ」と読む。日本では珍しく「経済」という概念をよく理解している作家である。現在、「ローマ人の物語」を執筆している。代表作に「ロードス島攻防記」、「海の都の物語」等がある。

バレリア「そーやなー、他にうちが気に入っているのは、『ゲド戦記』4部作かなあ」

ユーリ「僕はやっぱりエドガー・アラン・ポーの『黒猫』とか『赤死病の仮面』なんかもいいとおもうけどなあ」

バレリア「うーん、その辺りはなかなか難しいのう。ポーの作品を『ファンタジー』と呼ぶのは何か違和感があるんや。むしろ、怪奇幻想小説としてとらえるべきやろう」

ユーリ「『盗まれた手紙』も?」

バレリア「あれは推理小説やろが!」

エドガー・アラン・ポー:19世紀のアメリカの作家、詩人。推理小説を創造した天才である。ただし、実生活は不遇であった。とりあえず、「モルグ街の殺人」ぐらいは読んでおいた方がいい。

バレリア「それから、あれもええな。ムアコックのエターナル・チャンピオン・シリーズ。何しろ、社会から疎外された者が『英雄』というあまりにも重い荷物をかついで歩き続けなきゃならんからなあ。やっぱ、60年代風やなあ、って思ったもんや」

ユーリ「確かに、ムアコックはそーゆー考えの人やしね。そやけど、あれってホンマはSFじゃあないんでしょうか」

バレリア「確かに。ま、でもファンタジーとSFとの差異をくどくど述べても仕方ないしのお」

エターナル・チャンピオン:ムアコックの生み出した悲劇のヒーローたち。彼らは周囲から白眼視されているにもかかわらず、「病んだ世界」の最も病んだ部分を永遠に修理していかねばならない運命にある。最も有名なエターナル・チャンピオンは、むろんエルリックである。私はコルムの方が好きなのだが。

ユーリ「そういえば、サイエンス・ファンタジーというのもありましたよね」

バレリア「ふっ、うちの言いたいことが分かっとるんやのう。ユーリ、あんたなかなか進歩したもんや」

ユーリ「そうですよ、『スター・レッド』は疑いなく……」

バレリア「ちょっと待て。それはモー様(漫画家萩尾望都<はぎおもと>の尊称)の傑作SF漫画やろが。ファンタジーとはちゃうやん」

ユーリ「あ、そうでした。いやあ、文庫版について触れたかったんですけれど」

バレリア「そーゆー話はよそでせえ。ま、この馬鹿はほっといて。ジーン・ウルフの『新しい太陽の書』四部作こそがサイエンス・ファンタジーの傑作やろな。ただ、恐ろしく読みにくい文章になっていて1600ページ近くもあるからのう。どうすりゃいいんだろ」

ユーリ「確かに、困った問題ですねえ。じゃあ、今度はもっとノリのいい小説を紹介しましょう。あれは、どうです。光瀬龍の『宇宙叙事詩』なんかは。あれはいかにも、滅びの美学の屈折した部分を表現していますからねえ」

バレリア「まあ、一応あれはSFの短編集やけどな。雰囲気としては、サイエンス・ファンタジーぽくってええわ。挿し絵もバンバン入ってるし」

ユーリ「でも、本当に日本のファンタジー界は一部を除いてまだ不毛ですよ」

バレリア「いやいや。それは間違いというもんや。まだファンタジーという概念の小説が根づいていないということやろ。それに、あんたはどうもライト・ファンタジーに注目しとるようやの。ファンタジーにはライトもあるけど……」

ユーリ「そーかー、やっぱりバンタム級にまで上げないと駄目なのか。」

バレリア「何か『1ポンドの福音』っぽいボケやのう。とにかく、軽いものだけでなく重いものもあるんや。それを忘れたらあかんな。今はまだまだライトなものしか理解できない読者の方が多いということや」

ユーリ「あ、それから『メルサスの少年』も忘れたらいけませんねえ」

バレリア「ほやな」

(続いたらいいな)

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