達人マスターとは?
ユーリ「社会思想社の本みたいですねえー」社会思想社の本みたい:社会思想社は「T&T」(トンネルズ・アンド・トロールズ)の翻訳・出版で知られる。ユーリは「D&D」のデザイナーであるゲイリー・ガイギャックスの執筆した「ロールプレイングゲームの達人」と「ゲームマスターの達人」のことを言っているのである。
バレリア「名人とか王将なんて書いたら棋士みたいやろ。まあ、それはともかく達人マスターがどういう存在かを説明せんといかんな」
ユーリ「ダイス目を上手にごまかすとか、その場でルールをデッチアゲルとかいうことですか?」
バレリア「そーかもしれん、そーでないかもしれん」
ユーリ「『指輪物語』のガンダルフじゃないんですから……」
「指輪物語」:ファンタジー小説の古典。文量が多いので、前編である「ホビットの冒険」から読むのがいい……と、たいていの書評ではこう書かれているなあ。
バレリア「大事なのはテングにならんことやな。自分のシナリオの出来映えやマスタリングに自分で高い評価を与えない。これ、基本や」
ユーリ「自己批判ってやつですか?」
バレリア「そうともいえるの。やけど、これは達人ゲームマスターとしての条件の一つでしかないけんな」
ユーリ「他には?」
バレリア「そのゲームの狙いが何であるかを理解した上で、シナリオを作るべきやな。例えば、SFRPGでアンデッドを出すとか、ファンタジーRPGに核爆弾をもちこむとかいうことはしたらあかんな」
ユーリ「そんな無茶苦茶なことをするマスターがいるんですか?」
バレリア「うちの知っている限りでは『三國志演義』に空飛ぶ豚を出したマスターがいる」
ユーリ「……うーん、でも楽しければいいんじゃあないですか。そのセッションも盛り上がったでしょうし」
バレリア「そやな。けど、正史の『三国志』を読んでいてそれが気に入っているプレイヤーが参加していたら、どうする?」
ユーリ「僕だったらお手上げですねえ」
バレリア「確かにな。あんたの言うとることも多少は筋が通っとる。しかし、お手上げ状態のままではセッションそのものが成立しなくなってしまう。達人マスターを目指すならば、アドリブをきかして状況に対応せんとな」
ユーリ「つまり、アドリブ・マスターこそが達人マスターだということですか?でも、そんなことをいったらストーリーテラー型のマスターはどうなるんですか」
バレリア「あんたも進歩のないやっちゃなあ。うちは、アドリブが必要やと言っただけで、アドリブ・マスターが最善とは考えとらん。達人マスターはアドリブの可能なストーリーテラーやな」
ユーリ「でも、TRPGにおけるマスタリングに『絶対』という言葉はありませんよ」
バレリア「ぐっ、痛いとこ突くなあ。まあ、ストーリー性を重視するシステムのマスターの場合は、アドリブとストーリーテラーの両方を兼ね備えた方がええんやと考えてもらいたいの」
ユーリ「それって逃げですよ」
バレリア「あんたの役目はツッコミではないと思うんやけどなあ。じゃあ、ここらでコンベンションにおけるマスタリングの技術論に話を移そう」
ユーリ「なんで『コンベンションにおける』なんですか?」
バレリア「この記事に目を通す人は鯨夢工廠のコンベンション参加者やろ。それに、うちはコンベンションでのマスター経験の方が多いからそうせざるをえん」
ユーリ「結構いいかげん……」
バレリア「まー、セッションを始める前にプレイヤーと雑談をすることやな。そして、その雑談を通じてプレイヤーの好みを把握するのがベターかな」
ユーリ「それって結構時間の無駄のような気がしますねえ」
バレリア「ちゃうわ!あんたは一つ大事な原則を忘れている」
ユーリ「人間の記憶力は9歳をピークを迎えると言われますからねえ」
バレリア「あんたの忘れていることは……」
ユーリ「僕の話を無視しないで下さい」
バレリア「PCの性格はプレイヤーの性格から大きな影響を受けるんや。ほやから、セッション前に各プレイヤーの性格を把握するのは誤りとちゃう」
(続く?)