戦闘とは何ぞや?
ユーリ「愚問のような気がしますけど……」バレリア「ほほお、ほなあんた戦闘を定義づけてみまい」
ユーリ「自分の意志を相手に強要すること、でしょ?」
バレリア「たわけ!それは実際の『戦争』での話や!TRPGにおける戦闘とは意味が全然違うわ」
ユーリ「でも、旧バージョンの『ロードス島戦記RPG』や『ハイパーT&T』には集団戦闘のルールがありますよ」
バレリア「実は『D&D』にもあるんやけどな。まあ、それはええとして、戦争で大軍を指揮するセッションがおもしろいと思うんかい、あんたは」
ユーリ「確かに、戦争をプレイするんだったらシミュレーション・ゲームで遊ぶ方がてっとりばやいですよね」
バレリア「そ。第一、戦場指揮官としてロールプレイするのはめんどいで。プレイヤーに軍事知識が必要とされるけんのお」
ユーリ「じゃあ、最初に戻りましょう。戦闘って何なの?」
バレリア「生き残るために克服しなければならないハードルやな」
ユーリ「言葉を入れ替えただけのような……」
バレリア「いや、ちゃうで。うちは生き残るために『戦わなければならない』とは一言もゆうとらん」
ユーリ「ああ、なるほど!」
バレリア「ほんまに意味分かっとるんかいの。戦闘によってもたらされるものは『死』や。これは普通、モンスターやNPCにもたらされるものやけど、PCの方に回ってくる危険性もゼロではない」
ユーリ「でも、ヒーロー・ポイントとかを使えば……」
ヒーロー・ポイント:PCの「英雄」としての側面を強化するためのルール。失敗を成功に変えたり、都合のいい展開にもっていかせたりするのに使われる。「007RPG」(昔、本当にこういうTRPGがあった)において最初に導入された。なお、「007RPG」は絶版になっており、現在はプレイ不可能である。
バレリア「それでも、戦闘におけるPCの生存率は100%にはならんのう」
ユーリ「じゃあ、どうすればいいんですか」
バレリア「戦闘を回避することやな」
ユーリ「どうやって?」
バレリア「あんた、頭が完全にガウリイになっとるな。ええか、重複するかもしれんけど、TRPGにおいて戦闘はメイン・テーマではないということや。確かに、戦闘は楽しい。自分が血を流す訳ではないけんな。ほやけど、TRPGは『役割を演ずる』ことこそがメイン・テーマなんや。キャラクターがバーサーカーだとか設定上積極的に戦闘を行わねばならないとかいうのは別やけどな」
ユーリ「僕の質問に答えてませんよ」
バレリア「おお、そうやったな。つまり、交渉したり、事前に調査して危険地帯を避けて通ったりすることで戦闘を回避するんや」
ユーリ「でも、相手が動物なんかの場合はどうするんです?」
バレリア「簡単や。火を使ったらいい。ある程度の火力があれば、相当飢えてない限り襲うことはためらうやろな。それから、エサになる肉片なんかをバラまいて動物がそれに気を取られている間に逃げる、という手もある」
ユーリ「あいてがアンデッドやゴーレムだったらどうするん?」
バレリア「うん、そーゆー連中に交渉してもほぼ無意味やな。しかし、アンデッドやゴーレムは普通『特定の部屋もしくは宝を守る』のが仕事やからな。存在に気づいたら、そこを避けて通ればええ。あるいは、遠距離から弓やなんかを使う余裕がある時のみやな」
ユーリ「でも、そーゆー戦闘って何かみみっちくて嫌ですね」
バレリア「ヒーロー指向のプレイヤーはよくそう考えるけどな。ほやけど、大部分のTRPGにおいて戦闘は文字通り命がかかっているイベントや。ヒーロー指向でめったなことではPCが死なないゲームもそれはそれでおもしろいが、TRPGのプレイヤーとしてそこそこ経験を積んだ人なら『死にやすい』ゲームに挑戦することもええことやな」
ユーリ「それは『熱血専用!』や『セブン=フォートレスRPG』への皮肉ですか?」
バレリア「違うって。うちはヒーロー指向のTRPGが悪いとは言っとらん。ただ、戦闘というものがファンタジーTRPGであっても本来『危険な』ものだということを言いたいだけや。小説やったら、『ああ、このキャラはかっこよくてニヒルだから最期に仲間をかばって死ぬんやろなあ』という風に見当がつく。んが、TRPGではそうはいかん。英雄的なPCでもゴブリン相手に死ぬこともあるんやから」
ユーリ「では、次回も戦闘について漫才しましょう」
(楠桂は姉から「マミタン」と呼ばれていたので続く)