黒澤明のTRPG!?

ユーリ「はあ?」

バレリア「何をトボケタ顔をしとるんや。あんた、黒澤映画のファンとちゃうんか」

ユーリ「いや、そういうことじゃあないよ。一瞬、『キネマ旬報』の1ページかと思って、それで僕らも出世したもんだなあ、と」

バレリア「勝手にほざいとれ!『隠し砦の三悪人』のシナリオ執筆の時の話や!」

ユーリ「上原美佐はキレイでかっこよかったですねえ。事実上、あれだけやもんなあ、彼女が出演した映画は」

上原美佐:黒沢監督の映画「隠し砦の三悪人」でヒロインとしてあっという間に時のスター(1959年のことである)となり、すぐに引退してしまった。俳優業とは全く無関係だったのだが、東宝が目をつけたことで銀幕上の歴史に名を残すことになった。

バレリア「あんな、この映画の製作過程は知っているやろ?」

ユーリ「確か、黒澤含めた何人かで書いたんでしょ」

バレリア「ふっ、あんたもヤキが回ったのお。実は、『隠し砦の三悪人』は……」

ユーリ「『スターウォーズ』第一作のモデルだったんです!」

バレリア「たわけ!間違っとらんが、話を変にそらすな!」

「隠し砦の三悪人」は「スターウォーズ」のモデルだった:事実である。ただし、「隠し砦の三悪人」ではR2D2とC3POが主人公である(あれ、何か違うな。まっ、いっか)。

バレリア「ええか、黒澤はやなあ、TRPG形式でシナリオを書いたんや。それぐらい黒澤ファンなら知っとかんとあかん!」

ユーリ「システムは?」

バレリア「1958年やと『D&D』も生まれとらんぞ。つまり、こうや。黒澤が設問というか、あるシチュエーションを示す訳や。例えば、『黄金を隠して関所までやってきた。入念に調べられることは火を見るより明らかだ。さて、どうする?ちなみに武力での突破は不可能やぞ』とね」

ユーリ「それって、適当にシステムをでっち上げてマスター交代しながら完全アドリブでセッションを進めるやつですよねえ」

バレリア「まさにそうやな。あんたもたまにはええこと言うねえ〜〜」

ユーリ「今の少し松本人志が入ってませんでした?」

バレリア「ええやろ!うちもそれぐらい息抜きせんと。で、本題に戻るけど、こうした問題解決を模索し合って『隠し砦の三悪人』のシナリオはできあがったんや。このシナリオは『黒澤明全集』にも当然掲載されているけどな。よくできたリプレイのようなおもしろさがある」

ユーリ「うーむ、『ティルト・ワールド・ライブノベル』の先駆けみたいですね」

バレリア「確かにそやな。ことによると意識していたのかもしれん」

ユーリ「でも、プレイヤーとマスター力量と相互のいい意味での馴れ合いが必要ですね」

バレリア「うむ、その通りやな。けど、こういう方向からTRPGというものを眺めてみると、色々な切り口があることが分かるのう」

ユーリ「『ガープス・ルナル』で濡れ場のシーンから始めたマスターがいたけど、それに近いインパクトがありますね」

バレリア「また話を変な方向に持っていこうとしとるな、あんたは。まあ、TRPGというゲームがコミュニケーション・ゲームである以上、スタッフと俳優とのコミュニケーションが必要な映画という総合娯楽は似通っていると言ってもいいんやな。まあ、黒澤の場合は脚本執筆の段階での『TRPG』をやっていたということや。けれど、この方式はコンベンションなんかでは無理があるな。オリジナル・ゲームをいきなり持ちこんでおもしろいセッションをやるのと同じぐらい困難やのう」

ユーリ「そりゃそうだけど、やってみるのもおもしろいんじゃないの。コンベンションなんかじゃ『ソードワールド・学園バージョン』とか『ガープス』を使ったオリジナルなんかもプレイされているけど?」

「ソードワールド・学園バージョン」:実在する。ただし、筆者はその卓に参加していなかったので、どのようにシステムを改造していたかはよく知らない。

バレリア「いや、それは無茶や。『ソードワールド』はほとんどのゲーマーが知っているし、『ガープス』もルールブックは分厚いもののシステムは分かりやすい。黒澤までの道は遠いし、一つのオプションとみなすべきやろな」

ユーリ「今回はここで終わりですね」

(続けんとなあ)

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