かわいそうなガーゴイル

ユーリ「何なんでしょうねえ、これは」

バレリア「あんたは『ロードス島戦記』のビデオ版を見たことがないんか?」

ビデオ版「ロードス島戦記」:「ロードス島戦記」の第1部から第3部までを強引に13巻にまとめたもの。一部では「電動紙芝居」と呼ばれている。どうせなら、第1部だけ扱って重厚なものにしてほしかった。

ユーリ「もちろんですとも!僕を馬鹿にする気か!」

バレリア「学園ドラマの転校生のような口をきくな!ええか、このビデオ版ではガーゴイルがスレインのディスペル・マジックかなんかで一撃で粉砕されとるんや。だから、テーマはかわいそうなガーゴイルなんや」

ユーリ「それじゃあ、ゴブリンの方がかわいそうじゃないですか」

バレリア「何をいっとるんや。ゴブリンは『ガープス・ゴブリン』というサプリメントまで出てるんや、たぶん翻訳されんやろけどな。それに、トロウルにしたって『トロウル・パック』というサプリメントが翻訳されとる。それにひきかえガーゴイルは……」

ユーリ「かわいそう、って言うたってあんたはナウシカじゃないやん」

バレリア「『もののけ姫』と呼べ!ええか、ガーゴイルは昔のゲームブックなんかでは重宝されとったんや。お、石像だぞ。ラッキー、宝石が埋めこんであるやん……」

ユーリ「で、がおーとかみつく、と」

バレリア「そういうことや。だから、当然その逆手を取ったトラップも現われたんや」

ユーリ「ああ、剣で切りかかったりすると爆発する、というやつだね。一時はやった、と思うけど最近みないね」

バレリア「そりゃそうや。ガーゴイルがいたらとにかく罠と考えられて無視されていって、かえって出しにくくなったんや」

ユーリ「ゲームの方向性が変わった、というのも一因だと思いますけど……」

バレリア「おお!あんたにしては上出来や。そうそう、命を削るような思いをして必死に金策に苦労する、というのが『D&D』の旧版の方からTRPGに入ったプレイヤーやな。けど、『ソード・ワールド』辺りから日本でもかなり変わってきたんや」

ユーリ「当たってはいますけど、それとガーゴイルの不幸との関係は……」

バレリア「あるんやって。シビアな交渉、シビアでブラッディな戦闘からドラマとしての交渉とストーリー内に組みこまれた戦闘へと数年前から日本でもガーッと変換しているからな。そうなると、ダンジョン以外の舞台の方が重要になってくる。で、ガーゴイルはフツー町中におるよなモンスターとちゃうけんな」

ユーリ「うーむ、では『パワープレイ』ならどうです。あのゲームは第一世代で……」

パワープレイ:ホビージャパンのTRPGの一つ。デザイナーは理系デザイナーとして大活躍の山北篤(やまきた・あつし)。背景世界を持たない(初期の『D&D』もそうである。というより、本当に初期のTRPGには背景世界を持たないものが多かった)ことから、第一世代のゲームとされる。ちなみに、第二世代のゲームは背景世界を持つものを指す。「ルーンクエスト」や「ソードワールド」辺りが代表であろう。

バレリア「そうやな。『パワープレイ』ならさほど問題はないな。けど、それだけではかわいそうなガーゴイルは救われんなあ」

ユーリ「やっぱり最後は塩になるんですね」

バレリア「何年前のアニメの話や!」

ユーリ「いやあ、旧約聖書ですよ」

バレリア「今は『エヴァ』の時代やぞ!まあ、ええわ。ガーゴイルを救ける(?)にはシステムの選択段階からやらんとな。けど、次に重要なのは『説得力のあるダンジョン』を作ることや。特に、ファンタジーTRPGやからいうて何でも『魔法』で片付けるのは問題やな」

ユーリ「でも、その方が言い訳しやすいですよ」

バレリア「必要悪やな。どうしても説明に困った場合は『魔法のせいだ!』でいいけどそれではかわいそうなガーゴイルは救われない。ガーゴイルがガーゴイルらしく活躍できるようにマスターは場を整えないかん。むろん、ガーゴイルはほとんどの場合敵対的モンスターやから、PCをテキトーに痛めつけて倒されんとな」

ユーリ「プロレスのヒール(悪玉レスラー)みたいなもんですかね」

バレリア「そうや。あんたもだんだん物分りがよおなってきたのお。それから、具体的に例をあげるとやな、昔プレイした時にガーゴイルの胸に鍵となる宝石が埋めこまれている、というのもあったな」

ユーリ「でも、やっぱりガーゴイルは主役になれない……」

バレリア「基本的に魔法で作られているという例が多いからのお。ガーゴイルの思考形態は人間とは全く別やろし」

(西原<さいばら>と楠のどちらがより美人か分からないから続けたい)

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