こりすぎたシナリオを作らない

ユーリ「筆者のことを言ってるような気が……」

バレリア「そやな。やたら情報収集シナリオを乱造し……こら、待て。これでは筆者の自己批判の記事にしかならんやないか」

ユーリ「いいじゃないですか、たまには。」

バレリア「黙っとれ!前回で番外編をやったんやからな。2ヶ月続けて番外編を書く訳にはいかん!」

ユーリ「で、何を?」

バレリア「まー、自分とプレイヤーの力量やスタイルを把握していないマスターがよくやることや。こりすぎたシナリオってのは」

ユーリ「例えば?」

バレリア「NPCの血液型や星座まで決めたり、ディクスン・カーばりのトリックを仕組んだシナリオを作ったりすることやな」

ディクスン・カー:カーター・ディクスンというペンネームも用いる。密室殺人の巨匠。代表作に「ユダの窓」、「プレーグコートの殺人」、「火刑法廷」がある。

ユーリ「それっていわゆる設定マニアってやつじゃあないですか?」

バレリア「その場合もある。が、ちょっとちゃう。設定マニアというのはゲームの本質とは何の関係もない部分を作りあげてしまうタイプやな。こったシナリオを作ってコケルのは自分の力量以上の情報をシナリオの中に放りこんで収拾がつかなくなるタイプのマスターやな」

ユーリ「汝自身を知れ、ですか。あるいはソクラテス以上の智者はいない、ですか?」

バレリア「……。高校で倫理・政経を選択したからといって訳の分からないことほざくな!まあ、全くの間違いではないの。少しは……」

ユーリ「いやあ、照れるなあ」

バレリア「まぐれ当たりのくせに照れるな!『汝自身を知れ』が大事なんや!」

ユーリ「じゃあ、デルフォイの神託はどうなるんですか?」

バレリア「……」

ユーリ「すいません、僕が悪かったです」

バレリア「まあ、ええやろ。マスターは常に自己のマスターとしての能力を客観的に評価する必要がある。理想論やけどな。筆者自身もできとらん言うとったし」

ユーリ「それじゃあ、ここで話が終わっちゃうじゃあないですか」

バレリア「そうせかすな。とにかく、シナリオに特殊な要素を盛りこまないように注意すれば、自己評価を誤っていても何とかなるもんや」

ユーリ「特殊な要素って?」

バレリア「裏設定というやつやな。さっきも指摘したけど、酒場の親父は別に生命力のポイントまで決めておく必然性は全くないし、変な設定を考えておく意味もない」

ユーリ「でも、それじゃあNPCに個性がなくなりますよ」

バレリア「あんたなあ、プレイヤーは普通、相当個性的なNPCが出てきてもそれが4、5人を超すと設定なんざ忘れてまうで。もっとも、例え酒場の親父とはいってもシナリオに深く関わるような場合にはある程度細かい設定がいるけどな」

ユーリ「話を少し戻しますけど、マスターの自己評価ってどうやるんです?」

バレリア「『初歩的なことだよ、ワトソン君』って言いたいのう」

初歩的なことだよ、ワトソン君:いかにもホームズが言いそうなセリフで映画なぞでは使われた(ようだ)が、原作にはこのようなセリフはない。

バレリア「一番楽なのはアンケート用紙をマスターが準備して、セッション後にプレイヤー達に感想を書いてもらうことやな。が、これは仲間内でやった場合にはその意義は減少する」

ユーリ「なぜ?」

バレリア「マスターが知人の場合、『おもしろくなかった!』なんて書きづらいやろが。だから、おすすめとしては全くといっていいほど面識のない人を相手にマスターをすることやな。ただし、これは運が悪いとマスターが精神的に落ちこむ危険性がある」

ユーリ「もっと安全な方法は?」

バレリア「マスターやのうてプレイヤーをやればええんや。よそのサークルでプレイヤーとしてセッションを楽しむことで仲間内のみのプレイでは気づいていない点を発見することもある。よーするに、おかめ八目ってやつやな」

ユーリ「他人のフリ見て我がフリ直せってことだね」

バレリア「まあ、そーやって自分のマスターとしての力量を把握することでこりすぎたシナリオを作ってしまう危険性は減るもんや。初めてマスターをする人の場合は、既成シナリオを改造してマスタリングすることをすすめるのう」

(続く?)

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