ゲーム小説の書き方

ユーリ「ほお、今回はまともな展開になりそうですなあ。で、君はいつもどうしてんの」

バレリア「まず、本を読む」

ユーリ「だからあ、今回のテーマはあ」

バレリア「いいや、ずれとらん。文献として本を読むんや」

ユーリ「ムアコックやらタニス・リーやらエレン・カシュナーを読むということなんやね」

バレリア「この大ウツケ!そういうのはゲーム小説を書くずーっと以前に読んどくもんや!」

ユーリ「それは、某サークルの『「罪と罰」を読んどらん奴は成人式に行くな』理論とちゃうの」

「罪と罰」を読んどらん奴は成人式に行くな理論:ある文芸サークルで筆者の先輩から賜ったありがたい理論。ちなみに筆者はチェーホフとゴーゴリしか読んでおらずこの理論に従うとまだ19歳ということになる。ちなみに「罪と罰」に登場してラスコリニコフをいじめる判事が「コロンボ」のモデルであることは公然の秘密である。

バレリア「とにかくやなあ、新紀元社の出しているファンタジーファン向けのシリーズぐらいはあらかじめ読んでおかんとな」

ユーリ「ファンタジー系統の人はそれでいいやろけど、SF系統の人はどうなるん?」

バレリア「うーむ、うちはアシモフとディックをかじったぐらいやからなあ。文系やけん。……パス」

ユーリ「しゃあないなあ。で、本を読んでからどうすんの。やっぱり緻密な世界設定をこしらえて、神話も考えて、創世神の世界創造の過程を細かく仕上げ……」

バレリア「こら、そりゃただの設定オタクの所業だろが。で、あんたが言いたいのはその上でキャンペーンゲームを行って、リプレイをもとに小説にしようっちゅんやろ。『リフトウォー・サーガ』の二番煎じだろが、このボケ!」

ユーリ「いえ、『クリスタニア』です」

バレリア「同じや。あんな、ゲーム小説というものを狭く考え過ぎとるやんか。もうちょい、枠を広げないとあかんで。『暗黒太陽の浮気娘』もゲーム小説やがな」

「暗黒太陽の浮気娘」:アメリカのSF大会で起こった殺人事件を「D&D」のDMをしながら解決するという推理小説の題名。ヴァン・ダインの「カナリヤ殺人事件」に似てなくもない。

ユーリ「ほな、どないしたらいいん?定義はどうする訳?」

バレリア「うーむ、そこやな。世の中には多くのゲーム小説が出回っている。リプレイやワールド設定を生かしたそれらは、ある意味『カウンター・カルチャー』としてヒットした。でも、このままやと新しく出現するであろう『カウンター・カルチャー』の前には歯が立たないやろな」

ユーリ「そんなややこしいことを考えなくてもいいんじゃないの。どんどん新しいものに適応していけばいいはずやし。それに話がそれちゃってるやん。テーマを忘れんとってよ」

バレリア「そやな。『ゲーム小説論』をここで展開しても仕方ないし。ふむ、書き始める前に準備しておかんといかんものがあるな」

ユーリ「え、まだあるんかいな」

バレリア「国語辞書と英和辞書は最低でも必要やな。ワープロに頼っているとろくな目にあわん。かすかにでも疑問があればすぐ辞書を引くべきや。誤字だらけの小説というのは若い同人作家にありがちやが、断固としてその種のミスは防がんとな。それから、ファンタジー系のゲーム小説ならば、ラテン語やドイツ語の辞書も購入した方がええやろな」

ユーリ「他には?」

バレリア「推敲を重ねるべきや。何度でも読み直して誤字、脱字を改めなあかん。その上でこれまで書いたものを下書きとして清書すべきやろな」

ユーリ「それはあんたのやり方やろ。人によって違うやん。いちいち清書なんてしてたら手間がかかって……」

バレリア「作者自身が悦に入って他人に読ませないのならそれでええやろ。しかし、ふつーの人はそんなこと考えてないがな。ましてや、ゲーム小説は狭義では娯楽小説やないか。誤字によって読者を混乱させてはならん」

ユーリ「うーん、その意見に決して同意するわけではないけど、判断は留保しよう」

バレリア「企業小説の脇役みたいなセリフ吐くなあ、あんたは。まあ、技術的な問題はこんなもんやろな。それから、うちのおすすめとして……」

ユーリ「ジーン・ウルフの『新しい太陽の書』を読め、やろ?」

バレリア「たわけ。ル・グウィンの『ゲド戦記』に決まっとるやろが」

(続く?)

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