「九州ツアーやまね『せん』屈辱の30円お恵み事件・後日談」
初めに
サブタイトルを理解して頂くため、そしてストーリーをよりよく楽しんで頂くために「九州やまね『せん』屈辱の30円お恵み事件」を以下に要約した。スレイヤーズ世界のどこぞの国の話と思って読んでほしい。なお、「九州~」の本文を書かれたのは知る人ぞ知る名同人誌「ゲームジャーナル」の編集担当のフューラー中村(むろんペンネーム)閣下である。では、皆さんを言語不明瞭・意味不明(何や、それは!)の世界へ誘おう……
今を去る事大体10数年前、山口大学ボードゲーム研究会の面々は劇場版「銀〇英〇伝〇」を鑑賞するために、大都会山口から僻地福岡(福岡出身者の方、ごめんなさい)に遠征した。
が、卑劣にもその日は某アイドル歌手のコンサートによって「銀〇英〇伝〇」は上映されていなかった。しかし!彼らはそんなことにはめげず、会長宅に乱入し寝床を確保したのである。
こうして、一行は無事「銀〇英〇伝〇」を鑑賞して帰途についた。が、悲劇はその途上に起こった。2000円もの大金を持つやまね『せん』がステーキランチに(中略)バナナシェイクにレモンティーという大富豪クラスのごちそうに舌づつみをうったのである。当然、周囲は「そんなに頼んで大丈夫?」と心配したのだが、やまね『せん』は「私の明晰な頭脳を以てすれば勘定が1980円であることはあきらかである!破産することは決して無いのだ!」と言い放った。
が、いざレンジに行ってみると1980円のはずが2030円である事が明白になったのである!やまね『せん』は周囲から金を借りようとしたが、貧乏なボードゲーム研究会会員にはそんな大金を貸す余裕は無かった。フューラー中村を除いては。
そしてやまね『せん』は「やむをえん……この際……」とフューラー中村に借金を申し込んだ。が、とうのフューラー中村は「貴様に金を貸しても返せるわけが無い。30円恵んでやるからありがたく思え!」というやいなや、10円玉を3枚投げ出したのである。このようにフューラー中村により筆舌に尽くし難い屈辱を受けたやまね『せん』はその卑劣さに歯ぎしりしながらも結局は屈服して30円受け取るしか無かった。
しかしやまね『せん』は逆境(?)にくじけぬゲーマーである。さて、どうなることやら……
チャーリー・チャップマン 男 アーキタイプ:魔法オタク
パーティー内では最大の攻撃力を持っていた。もっとも、近接戦闘でない場合だが。どこぞの「マ〇ター・〇ートン」に出てきそうな名前だが、余り気にしてはいけない。ランス・トコロザワ 男 アーキタイプ:文武両道
名前から分ると思うが、プレイヤー(ちなみに女性)は西武ライオンズのファンである。ま、松井も賞をもらったことだし、いいよな。セッションでは賢明なキャラクターをうまく演じていた。ブレッド・ファーブ 男 アーキタイプ:平和主義者(某王子にあらず)
対ナーガ技能(後述)を最も多く持っていたPC。使えもしないのにわざわざ竜破斬(ドラグ・スレイブ)1レベルを所持していた。まあ、ロールプレイのための活性剤と思っていただければよろしい。注意!この回のセッションの際にはピンゾロを絶対成功(クリティカルではない)とする、という特別ルールを設けた。理由はこのリプレイを読めば理解してもらえる、と思う。
ゲームマスター(以下GM)「えー、皆さんはヤハン王国の王都セレスにもう少しで到着するところです」チャーリー・チャップマン(以下チャップマン)「オレ達の後ろから例のナーガ様って間の抜けた女の魔術師がついて来てるんだろ?」
ランス・トコロザワ(以下ランス)「そんなものでしょうね。まあ、彼女はそれなりに有能な魔術師ですから、修業中の私にとってはある意味いい参考になりますね。それ、メモ、メモ」
ブレッド・ファーブ(以下ブレッド)「あっしはちょっと違う意味でナーガ様を面白い女だと思ってるんでさぁ。あっしはジャパンとかいう国のマンザイという伝統文化に関心がありましてね。ボケるナーガ様に突っ込むのがいいんですぜ」
GM(皆、「スレイヤーズ」のお約束をよく知ってるなあ。GMとしてはうれしいよ)「ところがだねえ、今回はナーガ様だけじゃあないんだ。目つきが怪しい、動きも怪しいどこにでもいるような(そんな奴いねーよ!)ヤマネ・センという男もついてくるね。ナーガ様にこき使われているみたい」
チャップマン「ふむ、そのヤマネ・センという人物についてオレ逹は何か知っているのかね?」
GM「むろん。迷ギャンブラーとして知られている。『ピンゾロおたく』とか『不自由自在に(?)ダイスの目を出す』とかいうことでね。まあ、それでもキャリアはあるのでテクニックでごまかしてカツカツの生活を送っていたらしい。ところが、ある日突然どう頑張ってもギャンブルに勝てなくなり、今はナーガ様の使用人という哀れな末路を……」
ブレッド「GMさん、それじゃああっしらの出番もなく、セッション終了ですぜ」
GM「おっと、こいつは失礼。つい口がすべりましたね。で、ナーガ様とヤマネ・セン他PCの方々全員が王都の門に着きました」
ランス「王都なのに城みたいな門があるの?」
GM「まー、中世ヨーロッパの都市はほとんどが城郭都市だからね。で、ボディ(「MAGIUS」シリーズにおける筋力・生命力等を表す能力値)6以上の武器を持っている人」
ランス「はい」
GM「じゃあ、衛兵が大きな武器を持ち込んでくれると困ると言って預かる。で、代用品としてショートソードを貸してくれる。ちなみにはっきりとした理由があればランスさんのバスタードソードは返すと言ってるよ」
チャップマン「オレとしてはとりあえず納得だな。で、ナーガ様とヤマネ・センは?」
GM「ナーガ様は血を見ると乙女ちっくに気絶するような女性だから大した武器は持っていない。ヤマネ・センはそもそも民間人だから、武器どころか鎧すら装備していない」
かくして一行はいわゆる「冒険者の店」とも呼ばれる酒場兼宿屋に宿泊することにする。ところが、夕食でしこたま酒を飲んだヤマネ・センが……
GM「あのねー、酔いのまわったヤマネ・センが訳の分らない演説を垂れ流し始めたよ。『反射〇星砲、ヤ〇トを襲う!』とか、『シュ〇ツ特攻隊!長いようで短い付き合いだった!』とかね」
ブレッド「懐かしいアニメの話ですぜ。少なくともあっしにとっちゃあ」
GM「で、ヤマネ・センの演説はフューラー・ナカムラとかいう人物への攻撃に転じていくね。フューラー・ナカムラが卑劣漢で、スレイヤーズ世界史上最低のギャンブラー兼カジノ経営者だとかいうふうにね」
チャップマン「オレ逹は知っているのかな、そのフューラー・ナカムラとかいう人物のことを」
GM「知ってますね。とはいっても、噂程度だけど。ヤハン国内で著名なカジノ経営者だ。で、彼のカジノはこの王都セレスにあるそうだ」
ランス「いったいどういうカジノなんですか?」
GM「まあ、ポーカーやらブラック・ジャックやらルーレットやらあるけど、目玉は『しみゅれいしょん・ぎゃんぶる』だね」
一同「『しみゅれいしょん・ぎゃんぶる』?何だそりゃ」
GM「とか言ってるうちに腕っ節の強そうな男3人がヤマネ・センに詰め寄るね。『おうおうおう、この野郎が。オレらはフューラー・ナカムラ閣下の下で働いてるんだがよう、あんないい人の悪口は許せんなぁ。閣下はちゃんと給料とボーナスと有給休暇と育児休暇も面倒みてくれるんだぜ、おう、ヤマネ・センとかいうあんちゃんよお』ってね」
ブレッド「あっしとしちゃあ、この手の連中は放っておいてもいいと思いやすぜ。ヤマネ・センにはナーガ様もついているんでやすし」
ヤマネ・セン(GM)「ふっ、こんなこともあろうかと私は素晴らしい味方を引き連れてきたのだ!さあ、ナーガ様!ぜひとも竜破斬(ドラグ・スレイブ)でこの輩をやっつけてください!」
チャップマン「おいおい、竜破斬のダメージは30D6+レベルだぜ。セレスごと吹き飛ぶぜ」
GM「むろん、さすがのナーガ様もそこまではしないよ。冷たくヤマネ・センに『あんたのまいた種でしょ。自分でどうにかしなさい』って冷たく突き放すね。で、ヤマネ・センは3人のカジノ従業員にタコ殴りされそう」
ブレッド「ここはあっしの出番だぜ。マスター、ナーガ様の精神状態は?対ナーガ技能はかなり持ってるんでね」
ここで「ナーガ様といっしょ」の目玉とも言える「対ナーガ技能」について若干解説しておく。ナーガ様はセッション中に「いきなり寝返り」や「やっぱり自滅」というような6種類の暴走(?)感情状態になることがある。下手をすると宿屋を全壊するような暴走を引き起こす危険性すらある。それを防ぎ、うまくナーガ様と対応していくのが「対ナーガ技能」である。なお、この技能は6種類あり、ナーガ様の暴走状態と合わせてうまく使いこなさなければならない。なお、判定に失敗すると往々にしてさらにひどい暴走状態に陥ることがある。
GM「うーん、『いきなり寝返り』かな?」
ブレッド「じゃあ、対ナーガ技能『ツッコミ』で判定しますぜ。成功!」
GM「ナーガ様の後頭部に一撃!気絶」
ランス「ブレッドさん、それやり過ぎ」
チャップマン「オレはヤマネ・センをとりあえず助けるぜ。この冒険者の店を壊さないような魔法で攻撃だ。おらおらおらおら、『氷の矢』(フリーズ・アロー)だ!ダメージは……と3D6だな」
GM「そーすると、男達の足が止まって、一人気絶!店の親父は見て見ぬフリだね。やっぱり冒険者達は血の気の強い奴が多いからこういうことには慣れてるみたいだ」
チャップマン「おい、マスター。暴走値越えたんだが……」
魔法の暴走。「ナーガ様といっしょ」において最も恐ろしいルールである。このゲーム、ダイスを振って(技能がある場合は3D6を振ってそのうち2個選ぶ。魔法も技能として扱われている)目標値を越えれば魔法は発動するのだが、暴走値を越えてしまうと術者が気絶したり、森を1つふきとばしてしまうというロクでもない結果になる。これを防ぐには魔法知識(これも技能である)で暴走値以上を出す必要がある。そして、この判定に成功すると暴走を食い止め、魔法を通常通り発動させることができるのである。
チャップマン「ほ、成功」
GM「ふむ、3人とも足が凍って動けない。んで、1人は気絶だね。で、目つきの怪しいおっさんが出てきて『この秘孔を突けば貴様のパンチ力は3倍になる』とか勝手な事をほざいて気絶者の息を吹き返らせて去っていった」
ランス「ア〇バですか?」
GM「プレイヤー知識でいうと〇ミバであることは間違いありません。で、ヤマネ・センは『ありがとうごぜえますだあ、へこへこ。さすがはあのナーガ様の下僕の方々ですなあ』とか言ってる」
ブレッド「何を言いやがる!あっしらは実力を蓄えたぺーぺーの冒険者なんでございやすからね」
ランス「ブレッドさん、セリフ矛盾してる」
ここでナーガ様も息を吹き返し、「そもそも『しみゅれいしょん・ぎゃんぶる』って何やねん」という話になった。ここで、ヤマネ・センが「すべてを話しましょう」モードに入ったため、一行は宿の中で最も壁の厚い部屋に移って話を聞くことにした。
実は、あのフューラー・ナカムラがわしのダイスをくすねたんだ!あのダイスは有名なダイス職人(んな職業あるのか?)がわしのかすかな霊力をも取り入れて作ったもので、3D6で1セットなんだ!これさえあれば、まっさしく圧倒的な賭け金で迫ってくる貧乏ギャンブラーを『1を出せば勝ちだよん』ゲームでケチョンケチョンに身ぐるみはぐこともできたのだ!それを盗み、そして以前わしに『30円お恵み』という屈辱を与えたのがフューラー・ナカムラなのだ!よってわしはシブヤン海(太平洋戦争で戦艦武蔵が撃沈された海域。ヤマネ・センはスレイヤーズ世界と我々の世界の歴史をごっちゃまぜにしているのである)にフューラー・ナカムラを沈めんと欲す」
チャップマン「こいつの言葉、文法的にメチャクチャ変だぞ」
ランス「フューラー・ナカムラに復讐したいのですか。違法行為は手伝いませんが、ギャフンといわせるくらいならいいでしょう」
GM「で、ナーガ様だけど『じしんまんまん』だね」
ブレッド「とりあえず、無視しよう。そもそも『しゅみれいしょん・ぎゃんぶる』たあ何ですかいヤマネ・センさん?」
ヤマネ・セン(GM)「わしの聞いた話では、『海上砲撃戦』と『戦車戦』と『空戦』の3種がメインらしい。しかし、これらは倍率も低く、卑劣漢のフューラー・ナカムラを煮返すには不足だ。極秘に得た情報によると、『みっどうぇいかいせん』なる『ばあちゃる・ぎゃんぶる』が近日スタートするらしい」
チャップマン「オレはGMのような軍事オ〇クじゃねえから、よく分らんな。ま、念のために聞いておくがよ、ヤマネ・セン。それらの『しゅみれいしょん・ぎゃんぶる』はダイスの目がピンゾロだと絶対成功なんだろ?」
ヤマネ・セン(GM)「そーです。でも、『みっどうぇいかいせん』は『ばあちゃる・ぎゃんぶる』なんでダイスを振りませんよ」
読者の方々もここで特別ルールの意義がお分りの事と思う。さて、話を進めよう。ヤマネ・センが極秘に所持していた宝石を売って軍資金を作り、ランスはバスタード・ソードを衛兵から返してもらった。で……
ランス「あれ?ナーガ様は?」
GM「さあ、『じしんまんまん』を無視されたので、他の暴走状態になってるかもね」
チャップマン「ブレッド!この野郎!」
ブレッド「唐突にけんかを売るなー」
ランス「まあまあ、ここは穏便に。お互い仲間じゃないですか」
チャップマン「そうだな。すまん、ブレッド。言葉が過ぎた」
かくして一行は「しみゅれいしょん・ぎゃんぶる」の行われているカジノに向かう。ただし、肝心のフューラー・ナカムラが隣町に出かけているとのことだった。ヤマネ・センが歯ぎしりして悔しがったことは言うまでもない。
そして、冒険者達はまだオープンしていない『みっどうぇいかいせん』のコーナーにあの手この手を使って(金で釣る、脅す、なだめすかす)参加する。賭け金は金貨400枚、倍率は10倍である。このカジノをつぶさないまでもフューラー・ナカムラを卒倒させるには十分な金額である。
従業員(GM)「えー、『みっどうぇいかいせん』は仮想世界のあめりか軍とにほん軍との海戦を『ばあちゃる・ぎゃんぶる』としたものです。お客さんにはにほん軍の戦艦あかぎの乗組員になってもらいます。勝利条件はみっどうぇい島を占領するか空母えんたーぷらいずを撃沈するかどちらかです」
ブレッド「分りやした。あっしら、いきまっせー!」
GM「でも、定員オーバーなんでヤマネ・センは参加していません」
ランス「無責任な依頼人ですねえ」
GM「いや、このギャンブルは『ばあちゃる・ぎゃんぶる』だからね。サイコロを振るんじゃなくて魔法や武器で戦う必要があるんだよ」
一同「そんなバカなー!」
GM「いまさら言っても仕方ないでしょ。さあて、皆さんは巨大なガレー船に搭乗しています。まず、イニシアティブ判定を行って下さい。メンタル(『MAGIUS』における精神力。賢明さを表現する能力値)+2D6で」
チャップマン「オレが振るぜ。よし、14」
GM「成功です。では、次に索敵(敵を発見するための行動。ちなみに、このセッションではマップとして『コマンド・マガジン 日本版』第四号の付録ゲームのものを流用している)を行ってください」
ブレッド「スレイヤーズ世界にもシミュレイション・ゲームがあるとはねえ」
かくして一行の乗船した戦艦あかぎは慎重に索敵しつつ、ミッドウェイ島に近づく。が、あめりか軍も黙ってはいない。
GM「フライング・モンキーと呼ばれる攻撃機が接近してきたよーん。で、その内一頭にナーガ様がのっかっている。『いきなり寝返り』状態だね」
ブレッド「ここはあっしの仕事だ。チャップマンさんにランスさん、他のエテ公は頼みやしたぜ。ナーガ様に『おだてる』の技能です、マスター!」
GM「うん、その出目なら成功だね。ナーガ様は『ほーほっほっほ、ザコのモンキーはあたしが引き受けるわ!』とまた君達の味方になった」
チャップマン「ちっ、節操のない魔術師だぜ。で、索敵は?」
GM「うーむ、遂に空母えんたーぷらいずを捕捉したね」
かくして、海上砲撃戦が始まった。もっとも、えんたぁぷらいずはしょせん空母。あっけなく撃沈されたのであった。
ランス「ふう、これで終わりでしょうか」
GM「甘いね。ばーちゃる空間が歪んで、フューラー・ナカムラが現れる!『えーい、まだゲームバランスの取れてないゲームでボロ勝ちするとは許せーん!首を洗ってまってなさーい』とか言って襲ってくる。大ボス戦闘だね」
大ボス戦闘。「ナーガ様といっしょ」でのクライマックスにおける戦闘である。ザコとは異なり、3回攻撃をヒットさせて必要とされるダメージを与えねばならない。そして、大ボスはムチャクチャに強く、二人以上のPCによる「コンビネーション攻撃」をフルに活用させなければまず勝てない。そして、一行VSフューラー・ナカムラも大激戦となり、2度攻撃をヒットさせながらも、なかなかとどめが刺せない。しかし……」
謎の男(GM)「天誅!」
チャップマン「むう、こいつはオレ達の味方か?……ん?ヤマネ・センか!?」
そう。ヤマネ・センはばーちゃる空間の歪みに乗じ、フューラー・ナカムラに奇襲をかけたのだ!かくして遂に悪(?)は滅びた。そして、大量の金貨を手に入れたヤマネ・センは「『30円お恵み事件』のお返しじゃ!」と言い放つや否や、気を取り戻したフューラー・ナカムラに300金貨を投げつけた。彼がピンゾロダイスを取り戻したことは言うまでもあるまい。そして、ヤマネ・センはどこかへと去っていった……
ランス「普通のスレイヤーズとは違った感じでしたねえ」