「ブルーフォレストRPG デザイナーズ・エディション」

キャンペーン第3話「お前が犯人だ!」

広島大学SF研究会OB 上田洋一
 冒険者たちはプラーニ新王領の首都アラペシに向かっている。アラペシは収穫祭の真っ最中であり、“デンガク・ダンス”があちこちで見受けられる。
 我らが冒険者たちは、前回戦って討ちもらした“タロス”を追い求めてここまでやって来たのだ。

 農民A「おお、あんたらええとこに来たのお。国王のスジャマリン・プラーニ陛下の面前でてえした芝居が催されるんやとゆう噂や。企画したのは王弟バルタンダーズ公爵じゃわ。あの方はにぎやかなことがごっつい好きやけんのお」

 一行は首都の喧騒にとまどいながら、“タロス”の所在を探す。盗賊ギルド「紅の毒剣」のあねごプシュヌーナからは、次のような情報が得られる。

 「さーね、あたしらのつかんだところじゃ“タロス”ってのは貴族か将軍の偽名らしいね、それも相当に博学な。とにかく、あんたら危ない橋渡ってるのは確かだね」

 将兵ロイパーヌ(男、32歳)、舞姫リャシュス(女、21歳)、方師ターレン(男、27歳)ら3人が今回の主役(冒険者)だ。
 彼らは恐れることなく“タロス”を探し求める。”タロス“は地呪の禁呪の使い手でもあるらしい。ちなみに、「オレは地呪の禁呪の使い手だぜ、ガッハッハ!!」と口にすることは、「どうぞ死刑にして下さい」と言うのと同じである。よーするに“タロス”は「邪悪な魔法使い」なのだ。おお、これはパターンというやつではないか!
 さて、盗賊ギルドとはまた別に裏情報に精通しているのが情報屋パーペロンである。

 「ふむ、わしの知る範囲では有名な暗殺者がプラーニ王の王子サルヌスを狙っていると……」

 ターレン「暗殺者が有名だというのは致命的じゃないの?」

 GM(冷汗をかきながら)「いやあ、そこはそれ。ゴ〇ゴ13なんかは国際的に名と顔が知れ渡っていても、高額で雇う要人がいくらでもいるじゃないですか」

 リャシュス「言い訳やね。うちらが次のセッションに加わる時は納得のいく説明こさえとらんと承知せんで、われ」

 パーペロンは4人の暗殺者の名と住みかを教えてくれる。

 ロイパーヌ「その暗殺者の中に“タロス”か、ヤツの雇った暗殺者がいるな。……ん?待てよ。その連中を雇うのなら相当の金が必要じゃあないのか?」

 ターレン「王族かねえ。おい、ちょっと待て。今、王子サルヌスを殺して一番得するヤツは誰なんだろ?そうか、王位継承順位が2位の人物だよなあ」

 王位継承順位2位、それは王弟バルタンダーズである。噂では、ちと冷徹過ぎるところがあるが、王には信頼されているとのこと。しかし、王子サルヌスとは仲が悪いらしい。また、錬金術にこっていたことがあったとか、なかったとか……。どちらにせよ、強力なNPCであることは間違いないようである。
 一行はバルタンダーズ公爵こそ”タロス“に違いないと判断し、さらなる情報を求めるべく手を打った。すなわち、王子サルヌスのボディガードとして臨時に雇われるように持っていったのである。
 さて、収穫祭がクライマックスに達し、王宮で槍座の芝居「リーズン・イーター」が催される。あらゆる存在の「知性」を喰らい尽くしていく魔獣を覚醒させようとする邪悪な魔導師を正義の剣士が倒すというごくありふれたものだったのだが、バルタンダーズは不機嫌な様子で中途で席をたってしまった。
 これは実は王子サルヌスと冒険者たちの企みであった。彼らは、王弟を心理的な罠にはめたのである。

 ロイパーヌ「これで白黒はっきりしたな。あいつが“タロス”にちげえねえ」

 しかし、そう言ったばかりのロイパーヌの目に「高名な暗殺者」パシュエルの姿が映った……

 一同「ありゃ?」

 パシュエルはしばらくしてからフラリと客席から外へ出て行った。冒険者たちはしばし戸惑った末、パシュエルを追う。それはそれで間違った行動ではなかったのだが、全員が王子サルヌスの側から離れたのは失敗であった。

 「うぎゃー!」
 パシュエルの断末魔の悲鳴が王宮に響き渡る。冒険者たちはその場に向かうが、首の骨を折られた暗殺者と全裸の屈強な兵士が<寿命>で死んでいる姿が目に入っただけであった。兵士は王弟バルタンダーズの親衛隊であることがすぐに判明、PCらは大あわてで王宮内にしつらえられた舞台に戻る。が……

 「サルヌスに向かって1本の矢が飛んで来るね」

 冒険者たちはサルヌスをかばって、矢が彼にあたるのを防ぎ射手を見つけた。誰あろうバルタンダーズ公爵、すなわち“タロス”である。
 “タロス”は逃亡を図るが、PCや衛兵に取り巻かれる。そして、激戦の末、ボロボロになりながらも「最凶の術師」を殺害することができた。
 さて、どうやって暗殺者を一介の兵士が殺害することができたのか。「鬼獣変化」を自らの護衛兵にかけ一部の能力値を増大させて殺させたのである。むろんのことながら、この呪文は禁呪であり、かけられた者は<寿命>が減ってしまうというロクデモナイ副作用がある。むろん、暗殺者パシュエル殺害は警備兵を客席付近から一時的に立ち去らせるための企てであった。

 かくして、邪なる者は消えた。が、翌日埋葬する際になってバルタンダーズの亡骸はなくなっていた。王弟はアンデッドにでもなったのであろうか、そしてどこへ行ったのか……。それはあなたの背後かもしれない……。
一応完
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