廃棄物処理計画と合意形成

 

1.廃棄物処理計画

(1)廃棄物処理計画の位置づけ

 廃棄物処理計画は、廃掃法第6条で次のように定められている。

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第六条  市町村は、当該市町村の区域内の一般廃棄物の処理に関する計画(以下「一般廃棄物処理計画」という。)を定めなければならない。

 一般廃棄物処理計画には、環境省令で定めるところにより、当該市町村の区域内の一般廃棄物の処理に関し、次に掲げる事項を定めるものとする。

 一般廃棄物の発生量及び処理量の見込み

 一般廃棄物の排出の抑制のための方策に関する事項

 分別して収集するものとした一般廃棄物の種類及び分別の区分

 一般廃棄物の適正な処理及びこれを実施する者に関する基本的事項

 一般廃棄物の処理施設の整備に関する事項

 その他一般廃棄物の処理に関し必要な事項

 市町村は、地方自治法 (昭和二十二年法律第六十七号)第二条第四項 の基本構想に即して、一般廃棄物処理計画を定めるものとする。

 市町村は、その一般廃棄物処理計画を定めるに当たつては、当該市町村の区域内の一般廃棄物の処理に関し関係を有する他の市町村の一般廃棄物処理計画と調和を保つよう努めなければならない。

 市町村は、一般廃棄物処理計画を定め、又はこれを変更したときは、遅滞なく、これを公表しなければならない。

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 一般に、行政は計画に基づいて施策を実施するという建前になっていて、その大本の計画として地方自治法には「基本構想」を定めることとなっている。基本構想は議会の議決事項となっていて、おおむね20年程度の長期構想を策定し、それにもとづいて10年程度の中期計画、5年程度の実施計画が定められる。 

廃棄物処理計画は自治体の全体の計画の中の個別計画と言われるもので、他の領域では例えば「緑地保全計画」とか「高齢者福祉計画」とか、いろいろな計画がある。 

廃棄物処理計画は一般には10年計画として定められるものが多い。

処理計画は法律に義務づけられているとはいうものの、かつてはさほど重視されてこなかった。10年後にごみがこれくらいに増えそうだから、いつ頃焼却炉を建て直すかというようなことが主な内容だった。

しかし、最近の処理計画では、ごみの減量目標と目標達成のための政策手段を中心に据えて、処理施設整備はその一環として位置づけるようになってきている。 

(2)ケーススタディ−松山市の一般廃棄物処理計画

ケーススタディとして松山市の基本計画の目次を揚げる。

計画のポイントの一つはごみ量をどうするかということである。かつてはごみ量は増加することを前提に、ごみ量を予測することが重視された。コンサルタントのノウハウとして、ごみ量の予測手法というのがあった時代もあるが、ごみ量は経済指標と密接に連動するということがあるので、経済予測ができないのと同様に10年15年の予測というのはほとんど当たらない。 

一番シンプルな方法として、最小二乗法によって相関が最も高い曲線を選んで回帰式をつくり、その式に当てはめてトレンドを予測するという方法がある。だいたい直線の一次回帰式を使うことが多い。 

現在の計画で重要なことは、予測よりも予測をふまえて減量目標を設定することであり、そのためには行政だけでなく、市民や事業者も含めた達成目標として合意を図っていくことが求められる。

                                        
 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2.ガバナンス

もうひとつのポイントは、廃棄物処理計画というのはもともと「行政計画」すなわち行政が何をするかということの計画であるが、市民や事業者に対しても一定の役割や責務の分担をしてもらわないといけないわけで、そういう点からも計画の作り方自体、変わってきているという点である。

 すなわち廃棄物処理計画は「ガバナンス」という観点から、従来の行政計画とは大きく位置づけが変わってきているということである。 

 ガバナンスというのは政治、行政を語るときの新しい概念である。

近年、あらゆる行政分野で市民、事業者、行政のパートナーシップが唱えられるようになっている。行政学ではこれを「協働」と呼び、自治体において様々な主体が協働して問題解決に取り組んでいくことをローカル・ガバナンスという。 

ガバナンスとは、住民やNGONPO、企業といった民間セクターが行政と対等の立場に立って行政運営を行うという行政の新しいあり方のことを意味する。それの地方行政版がローカルガバナンスである。 

 廃棄物問題は排出者責任、生産者責任を強化するとともに、地域では協働によるいろいろな施策や仕組みを構築していくことが重要である。すなわちガバナンスの仕組みをどう作るかが、自治体の廃棄物行政の重要な課題のひとつだといえる。 

実際、廃棄物分野では早くから官民の協働によるシステムが生み出されてきた。沼津市を嚆矢とする高度な資源分別収集は、現場の収集職員と住民の協働によって発案され、今日の日本のリサイクルシステムに多大な影響を与えた。その後、地域によって○○方式と呼ばれる、地域個性をふまえた分別収集システムやリサイクルの体系が各地で誕生した。

あるいは、牛乳パックのリサイクルも一例である。元来「禁己品」とされてきたものを大月市の主婦が回収を始めたことをきっかけとして、行政、消費者団体、福祉団体、スーパー、古紙業者などの協働によって回収システムが開発され、資源として認知されるようになったものである。 

 これ以上例をあげるまでもなく、廃棄物分野では公民協働による取り組みがいろいろな形で行われており、循環型の社会システムへの転換をめざそうという点では行政、市民の意見は合致している。

※協働、ガバナンスについての参考文献として「公共を支える民」(寄本勝美編、コモンズ刊)この中で、拙論「清掃行政と公民協働」が掲載されている。

 

一方で、行政と市民が対立する問題も少なくない。ごみ処理の有料化、分別の細分化など、市民の間でも意見が対立する問題もある。 

特に廃棄物処理施設の建設をめぐっては、依然として対立の構図からなかなか抜け出すことができない。川下の受け皿として最終的な廃棄物処理の責任を負わされている自治体にとって施設整備は喫緊の課題であるが、住民にとっては廃棄物処理施設を「嫌悪施設」とみなす感情的な問題や地域のイメージ低下の懸念、ダイオキシンや地下水汚染など、環境面や安全性に対して拭いがたい不安があり、候補地周辺住民からは必ずといって反対がある。

 こうした事態に対して、行政側は施設の安全性を強調し、住民還元施設という形で利益供与することで反対運動に対処しようとしてきた。 

しかしガバナンスという観点から考えた場合、施設整備の必要性や立地について、一方的に行政だけにその決定の責を負わせるべきではない。候補地周辺住民の懸念するリスクは、市民全体で負担すべきであり、その意味では利害当事者である候補地周辺住民と行政に加えて、便益の受益者である多数の市民も含めた合意形成を図らなければならない。

 

3.廃棄物処理施設の合意形成

ところで、自治体の廃棄物行政にとってもっとも難しい問題は処理施設をどのように作るかということである。 

廃棄物問題の有識者と称する人の中には、廃棄物処理施設は企業の責任逃れにつながるから施設なんぞ作るべきではないというこいを言われる人もいる。観念論、理想論としてはそうかもしれないが、現場を預かる行政としては処理施設を作らずに企業責任だけを唱えていてことが片づくわけではないから、やはり施設整備はもっとも重要な課題である。 

 それではなぜ廃棄物処理施設は住民から嫌われ、反対されるのだろうか。大気汚染が心配だとか、車の通行が増えるとか、具体的な理由による反対だけでなく、「焼却すること自体が問題だ」とか「埋め立てすることはだめだ」とか、最近では「リイサクルにもいいリサイクルと悪いリサイクルがある、悪いリサイクルのための施設は作らせない」とか、いろいろな意見があって、自治体にしてみれば「じゃどうすればいいんだ」と開き直りたいような議論もある。 

 その背景として@過去の廃棄物処理に対する不信、がある。公害防止施設が十分でなかった時代のごみ処理施設のイメージが根強く残っている。 

 A科学技術にたいする不信というものがある。言い換えれば、ごみ処理の技術はいまだ市民権を得ていないということである。 

 廃棄物問題というのは工学的に対処しないといけない部分と、社会経済の仕組みの部分がある。従来は廃棄物問題の解決は工学的なアプローチが主体で、すなわちエンドオブパイプ、出口でいかに処理するかを技術的に解決しようとしてきた。

 しかしパイプの出口ではなく、発生元で対策を講じるということは、経済や社会の仕組みを変えるということであり、生活様式を見直すということでもあるから、これらはすぐれて社会科学的なテーマである。 

 問題は、この両者の立場がうまく融合あるいは協働して機能していないという点にあるのではないかと思う。 

 社会や経済の変革に重点を置く人は、処理技術に対してきわめて批判的な意見を述べる。しかも十分な知識がないままに技術批判をしてきたということもある。

 逆に、工学的アプローチに重点を置く人は、公害対策は万全というような対応をしてきたきらいがある。

 そういう状況の中で、廃棄物処理の技術に対する信頼感というのがない、大きな理由のひとつであろう。

 B用地を決めるプロセスの問題がある。すなわち民主的な手続きの問題である。たとえ環境汚染がゼロであっても、イメージが悪くなるなど地域の利益にマイナスになる面がある。ゆえに「迷惑施設」と呼ばれるのであり、世界中でこの種の施設は反対されている。

 これをNYMBY(Not In My Backyard)という。

 4.ケーススタディ−狛江の例

 さて、そこで私が経験した中でもっともうまくいった例を紹介して、廃棄物処理施設をめぐる問題点は何か、合意形成を進める上でのポイントは何かを考えてみたい。 

 ケーススタディとして、東京都狛江市における空き缶・空きびんの選別施設建設をめぐる事例を紹介する。狛江市は、人口約73,000人、面積6.4km2世田谷区に隣接する小さな住宅都市である。91年に市が資源選別施設の建設を計画し、用地取得したが、市民の反対でいったん計画を白紙に戻し、あらためて市民参加の下で検討を行い、施設建設に至ったという事例である。

 ごみ処理施設としては規模も小さく、焼却施設や最終処分場と比べれば環境影響や地域イメージといった問題もけた違いに小さいが、問題になる要因が少ないだけにモデルケースとして検証しやすいだろう。 

 この問題の争点は、悪臭や騒音などが懸念されるびん・缶の選別施設の立地場所として、当初の予定地が適切であるかどうかという点と、確固たる方針も持たないままごみ処理をすべて市外の施設と民間に依存し、ごみ処理基本計画もないまま拙速に施設建設を進めるというようなやり方でよいのかどうかという点である。

つまり、ごみ問題にどう取り組んでいくのか、ごみ処理をどう進めていくのかという計画策定が先行すべきであり、施設の建設は計画にもとづいて行われるべきであるというのが、反対の理由のひとつであった。

 反対運動の中心となった市民は、これまでの市のごみ処理行政の経緯を調べ、特に無計画で場当たり的な行政が問題であることを指摘してきた。市もその指摘を甘んじて認め、ごみ市民委員会では資源化施設の建設の必要性も含めて、ごみ処理基本計画の検討を行うこととし、用地問題は当面棚上げされた。 

ごみ処理の基本計画を策定するなかでリサイクルセンターの建設の是非も検討するということになり、91年12月に「狛江市一般廃棄物処理基本計画策定委員会」(こまえごみ市民委員会、寄本勝美会長)が発足した。 

ごみ市民委員会は市民12名と学識経験者6名で構成、行政は事務局に徹して市民委員会の活動をサポートするという体制で発足した。市民委員は反対運動の中核を担ってきた保育園の父母代表や地元住民らのほか、消費者団体、自治会、商工界などの代表で構成された。

市民委員会の会議はすべて公開、議事録も常備して閲覧できるようにした。委員会の活動状況はごみ市民委員会ニュースで定期的に広報した。こうした運営の方法そのものはごく一般的なものであったが、この委員会のイニシアチブで市民へのPR活動や調査活動を行い、このことが建設予定地周辺の問題から市民全体の問題へと論点を広げていくことにつながった。 

また、この委員会の開催回数も特筆すべきことのひとつである。会議は全体委員会のもとに、ワーキングのための部会を設けた。市民委員が主体となった「策定作業専門部会」(市民部会)では、ごみ減量計画の検討、ごみの組成調査、家庭でのごみの排出実態調査、他都市の実例調査、広報活動、ニュースレターの編集などを行い、「学識経験者委員会」(専門家部会)では用地選定にかかる評価項目の検討作業等を行った。それぞれの部会と全体委員会の開催回数はあわせて1年間に約50回を数え、学習会やニュースレターの編集会議などを含めると70回を越えた。 

約8ヶ月かけて「総論」として施設建設が合意され、用地選定の手続きに入った。当初予定地以外に、建設可能な土地(公園やグランド、市役所駐車場など。一部民地も含む)を洗い出した。 

用地選定は専門家部会が面積や用地取得の難易性等を考慮して評価し、その結果を全体委員会で審議するという形をとった。専門家部会では各候補地についての一次評価に対して各委員が意見を述べ、繰り返し評価するという、いわゆるデルファイ法によって選定し、最終的に@市役所駐車場、A当初予定地の二カ所を候補地とする中間答申がまとめられた。 

 なお当然のことながら、用地選定の審議の過程では多数の市民が傍聴するなかで、様々な議論が戦わされたことはいうまでもない。 

 中間答申以後は、候補地二カ所の周辺住民代表5名を加えた拡大委員会を設置して検討を進めた。候補地周辺住民からは再び反対の声も上がったが、公開の場で市民主導で審議してきた意義は大きかった。隣接するマンションや戸建住宅の住民も委員に加わることを了承し、行政対住民という対立の構図から市民同士の対話という形で次のステップに進むことになった。 

2候補地のそれぞれについて、施設整備プランを検討した。市役所駐車場は面積が数分の一しかなく、ピロティ式建物の下の空間であることから、資源化施設としてはきわめて変則的なものにならざるを得ないが、いろいろ制約はあるものの不可能ではないという結論を出した。この場合は周辺への影響は少ないが、作業環境や効率はきわめて悪いことが予想された。

 当初予定地については市の当初案ではなく、設備をできるだけ縮小し、建物のボリュームを抑えることや、住宅地に違和感のないデザインのイメージを提示した。この作業は建築家の協力を仰いだ。

 これらのプランの作成は、われわれコンサルタント側が独自に行い、委員会に示したものである。 

 同時に、2候補地のそれぞれについて、簡単な環境影響評価を行うこととした。環境影響で問題となるのは騒音、振動、臭気、交通問題で、市民部会では各地の施設を調査して、どの程度の問題が発生する可能性があるか、またどういう対策が考えられるかをまとめた。さらに、委員自ら騒音を測定するなど、懸念される生活環境への影響を防止するための方策を詳しく検討した。ここでも各分野の専門家の助言を得た。

 その結果、住民が懸念する問題は現在の技術レベルで十分対応可能であることが確認され、残された問題は、労働環境や施設が立地することのイメージであるということになってきた。 

 以上のような手順を経て、委員会発足からちょうど1年後に用地決定のための会議が開催された。一人一人の委員が最終意見を述べ、最終的には専門家委員の判断に委ねられたものの、事実上は全員の合意として当初予定地が選択されたのである。 

この決定には様々な条件が付けられた。施設への負荷をできるだけ小さくするために排出源での分別方式を見直すこと、具体的な建物の設計についてはあらためて市民参加の場で検討することとした。

 同時に「環境保全型のための循環型都市をめざす」、「ごみ半減都市の実現をめざす」、「自区域内処理の原則をふまえて、市民が自らの排出するごみに対して責任を持つ」の3つ理念を掲げた一般廃棄物処理基本計画(ごみ半減計画)をとりまとめた。「ごみとして処理する量を2002年までに50%減量する(ごみ半減)」ことを計画目標として設定し、計画の推進にあたっては「ごみ半減推進市民委員会」を設置し、具体的な事業計画についても市民参加によって推進していくことも盛り込まれた。

その後M町との関係上、建設市民委員会を組織して具体的な検討に入り、9610月に完成した。

参考:廃棄物学会誌第13巻 第3号(2002)(ダイナックス都市環境研究所HPの「研究員レポートに全文掲載している)

5.合意形成のポイント

@計画段階からの検討

 ごみ処理計画や施策の検討から施設建設の是非を問い直していったことが重要なポイントである。

 戦略的環境アセスメントSEAが注目されているが、SEAの手順として政策段階−計画段階−事業段階のそれぞれにおいて市民参加のもとに合意を積み上げていくということが重視されている。 

 現在長野県の産業廃棄物処理施設の立地でもそうした取り組みを進めている。狛江市の例はその先鞭をつけた事例として揚げられている。 

A市民と行政の信頼関係のもとでガバナンスの問題として取り組んだ

 もうひとつは、この問題を反対する市民と行政だけの問題とせず、市民全部に関わる問題として取りくんだことである。施設建設に否定的な結論がでた場合、その代替案の検討までがごみ市民委員会に課せられた役割であり、また結論に対する責任は市民全体が負うという考え方に立って進めた。 

 そのためには、行政と市民の不信感を解消し、信頼関係を構築していくことが何より重要である。そのために、ごみの組成調査や家庭ごみの実態調査などを市の職員と協働して行い、一緒に汗を流すことで相互理解を深めることを意図した。本格的な議論に入る前のこうした活動は、後の委員会運営に大きく役立った。 

B争点の実証的な検証

 争点を検証するために、できるだけ実地に、委員会のメンバーが作業に参加できるような形で調査を行った。

 最初に、組成調査を実施した。実際にごみを分けて調べる作業を通して、ごみの現状を実感することができる。統計的に精度の高い調査とはいえないが、現状を認識し問題を共有する手段としてはきわめて効果が高い方法である。

 資源化施設にはどのような環境問題が起こる可能性があるのかを調べるために、他都市の施設で騒音を測定したり、ヒアリング調査を行った。

 最終的な候補地の検討段階では、模型を使って建設される建物の大きさと隣接する住宅やマンションとの大きさ、距離、高さなどを検証するなど、それぞれの段階で専門家の協力を得ながら、問題や解決策が目や耳で確認できるような工夫をしてきた。

 ちなみに、適切な専門家を選ぶことはわれわれの仕事である。幸い、優秀な専門家が協力してくれたことが、委員の理解を深めることに大いに貢献した。 

6.リスクの発想

リサイクル施設の場合は、有害物質による環境影響というような問題は少ないが、杉並のごみ中継所のように不燃ごみを圧縮するだけの施設から、化学物質汚染がおきることもあり、廃棄物処理施設は常に環境汚染のリスクということを考慮しておく必要がある。 

住民がこうした施設に反対する理由は、嫌悪感やイメージダウンということと同時に、環境リスク対策が安心できないということが大きな理由である。

環境汚染とか健康被害が生じたときにどう対処するのか、あるいはリスクをできるだけ低減するためにどうするのか、といったことが、住民の不安材料である。 

われわれはあらゆる施設、出来事には何らかのリスクが内在されていて、それをできるだけ小さくするように工夫しながらやっていくというような考え方に乏しい。行政も、絶対安全だから、大丈夫だからといって、リスク対策ということをやってこなかった。 

その結果、ダイオキシン問題とか、地下水汚染とか、杉並病といった問題が現実に起きてきている。こういう過去の失敗に対する不信感というのが、施設の立地をますます困難にしている。

アセスメントというのは問題がないということを証明するものではなく、ここにこんなリスクの可能性があるので、これに対してどういう回避策をとっておけばよいか、ということを検討して、住民も「それなら安心だ」というようにしていくことが必要である。 

 廃棄物の分野には、工学的知識と社会化学的知識の両方を持つ人材が求められている。まさに当学科はそのような人材育成のための場であり、ぜひ廃棄物の分野に進出して頂きたい。

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