『エイズはアメリカの作った生物兵器!?』
「あら、心配しなくていいのよ。あなたを病気にするようなものは何もあなたに差し上げないわよ」
エイズで死去したピーターが、生前、
サンフランシスコのB型肝炎の実験に参加した際に、
注射をしようとする看護婦に言われた言葉
今世紀、最悪の疫病といえる『AIDS(後天性免疫不全症候群)』が世に知られるようになった当時のことを、
皆さんは覚えていらっしゃるだろうか?
その頃、まさしくエイズは『偏見の大量生産』を生み出していた。
輸血による感染も含め、エイズに感染した人を汚らしいものであるとする認識が世間に蔓延し、
感染原因の誤認による混乱、「コップなどによる口うつし」や「お風呂で同じ水に浸かること」などの行為も危険とされ、世間を過敏に神経質にさせた。
「軽いキスはいいが、ディープキスはダメか?」という疑問もあったりして、
今では苦笑させられる話だが、当時はそれなりに真剣なことだった。
エイズの認識がこうも悪いものであったのはなぜだろうか?
とりあえず、エイズがいつ、どのようにして人間たちを苦しめようと姿を現したのか、世にしられている通説を見てみよう。
エイズは、1984年の4月に、ロバート・ギャロ博士がその発見を公表したことによって、
世にその存在を知られるようになった
(これについては、フランスの科学者リュック・モンタニエが、ギャロよりも1年も前にエイズウイルスを発見したと主張したという話がある)。
ウイルスの人間への感染経路については、
アフリカのミドリザルが起源で、それがアフリカの黒人たちに感染、
そしてアフリカで働いていたハイチ人がハイチに戻る際にウイルスを運び、
そこでハイチ人と性交したマンハッタンのゲイがニューヨークへ持ち帰った、
ということだ。
エイズは、その後、ゲイ達の間で増加、世界へと瞬く間に広がったのだった。
そう!ゲイがこの性病をばらまいたのだ!
汚らしい!
ということで、エイズはゲイのゲイによる病原菌とされ、嫌悪されることとなったのである。
これによって、世間のゲイに対する風当りは相当に悪いものとなった。
当時、アメリカでは、ゲイ達の市民権要求の活動が精力的になされていたこともあり、
エイズの出現は、ゲイの活動に大きな支障をきたしたのだった。
ところが、ギャロの発表について、実際には確固たる証拠があるわけではないのだ。
「ミドリザルがどのようにウイルスを広めたのか?」、
「そのあとのウイルスの詳しい経路についてもどうか?」、
「何より、エイズは生態系のどこから生まれたのか?」、
こうした質問に、万人が十分に納得し得る証拠はギャロたちにはないのだ。
本当のところ、仮定にしか過ぎないものが、通説となってしまっている。
ここで陰謀論の登場だ。
上記の通説について、真向から異論を唱える人物がわずかにいる。
彼らが主張するのは『エイズのアメリカ軍生物兵器説』だ。
『エイズの陰謀【砦出版】』の著者、アラン・キャントウェル・Jr(彼自身、ゲイである)は、彼の著書で、
「エイズはアメリカの黒人、ゲイを抹殺するために、アメリカの権力者の思惑によって人工的に製造した殺人兵器だ」と述べている。
どうして、こんなことを言うのか?
彼には、そう考えるだけの証拠がある。
1978年の11月から、1979年の10月にかけて、
ニューヨーク市立血液センターにおいて、
当時、最も感染率が高いといわれていた性病『B型肝炎』のワクチン試験という名目で、
ゲイのボランティアにワクチンの接種を行なわれた。
そして、接種後、彼らは体に異常を感じるようになり、時間が経つにつれ、次々と死んでいったということだ。
その症状は、まさしく『エイズウイルス』のそれであったという。
公式に、アメリカでのエイズに感染者が確認されたのも、同時期の1979年末だ。
そして、レーガン政策のもと、ゲイに対する反発が強まった時期でもある。
これまで、全く知られていなかったウイルスが、突然に、B型肝炎ワクチンを接種されたゲイ達に感染したわけだ。
アラン氏は、当時の実験に参加したゲイたちに及ぼしたB型肝炎ワクチンの効果についても注目している。
実験の結果では、B型肝炎ワクチンを接種されたゲイたちの90%以上が、
肝炎ウイルスに対し抗体を発現したという。
『90%以上』もだ!
通常、HIV陽性の人の場合には、免疫が抑制されていることによって、
抗体発現の成功率は、せいぜい『50%』程度ということである。
つまり、アラン氏が推測するには(いや、彼は確信している!)、ワクチンを接種されるまでのゲイたちは、
エイズに感染しているはずのない体であったということだ。
彼らは、あの実験によって、『B型肝炎』から救われた一方で、
今度は『エイズウイルス』に苦しめられることになってしまったのだ。
B型肝炎ワクチンの実験は、実のところ、『エイズの人体実験』だったのか?
アラン氏は、これは正に
「アメリカの恥部として見過ごせないゲイたちを一掃しようと目論む上層部の権力者たちが仕組んだもの」であると力説する。
氏は、自らの調査と、多くの情報提供者の証言から得られる情報が募るにしたがって、
その確信はますます強くなるばかりであると言う。
一方、やりだまに挙げられている軍と政府だが、
エイズが世に知らされるようになった頃の前後において、気になる発言を行なっている。
1969年6月9日、国防総省のハイレベル生物学研究に従事しているドナルド・マッカーサー博士は、予算の割り当てをめぐる下院小委員会の席上、
資金要求の名目で、次のような発言をした。
「今後5年から10年の間に、おそらく、これまで知られている病原菌とはある重要な面で異なった感染性微生物を新たに生み出すことが可能になるだろう。
この病原菌の最も重要な点は伝染病の被害を防ぐために現在われわれが頼っている免疫学的および治療学的処置が、この病原菌には通用しないかもしれないということだ」
マッカーサー博士は、彼の言う『免疫システムを破壊してしまう新たな病原菌』を作りたいという言い訳に、冷戦を持ち出した。
「万一、敵がそれを開発したときに、我が国にはそれにふさわしい研究開発がないなどということになったら、
我が国の軍は技術的に劣っていると言っているようなもの。
これは由々しき問題ではないか」
結局、マッカーサー博士は研究のための公的資金を手に入れた。
それから、10年後、彼の予言のとおり、『免疫システムを破壊してしまう新たな病原菌』である『エイズウイルス』が現れたのである。
エイズが世界に蔓延してしばらく経った1987年2月、
陸軍大佐デイヴィッド・ハクソルは、エイズの『生物兵器説』を論じている際、
笑いながら、聞き捨てられない情報を漏らした。
「陸軍研究所の研究によると、エイズウイルスは生物兵器用病原菌としては極めて貧弱との結果が出ている」
その後、彼はこの問題発言をしたことを否定している。
それにしても、アメリカの国家権力がこのような国民を犠牲にした忌まわしい恐怖の実験を行なうものなのだろうか?
実は、この疑問は即答で応じられる。彼らは平気で無知な国民を実験体にできるのだ。
アメリカのスパイ機関であるCIAの、幻覚剤『LSD』を使った人格改造実験『MK―ULTRA』は陰謀論の中ではかなり有名。
1950〜60年代に起こったアメリカ軍による『サンフランシスコ上空からの病原菌散布』では、
12人が肺炎にかかり、1人が死亡している。
アメリカ公衆衛生総局が黒人男性400人に行なった『タスキーギの梅毒研究』は、その非道極まりない研究が40年も続けられたという。
黒人スラムが麻薬で汚染されたのは、政府が黒人達を『フヌケ』にしておくために、故意にそれをばらまいたからだという陰謀論もある。
例を挙げればきりがないのだ。国には、無償で民衆を守ってくれるような『正義』は存在しない。
しかし、アラン氏たちが述べる陰謀説についても、権力者が仕組んだという直接的な証拠はないのが現実だ。
それに、エイズのような対処の方法がない病原菌をばらまいたりしたら、
権力者たち自身の身にも危険が及ぶであろうことを、
それを予測できないはずがないのではなかろうか?
結局、ギャロ博士の『ミドリザル説』、一部の人々が唱える『生物兵器説』のどちらについても、
エイズ疫学的に納得のできる説明がない。
そんな得体の知れない病原菌に、我々は日々脅かされているわけだ。
これでは、エイズ撲滅が遠い夢物語であるのも無理もないことではないだろうか?
参考文献:
「超陰謀」60の真実 ジョナサン・バンキン&ジョン・ウェイン 徳間書店
エイズの陰謀 アラン・キャントウェル・Jr 砦出版