四国新聞 2005/4/2付より
週刊ワンアナザー 動物と人とのよりよい関係
動物介在教育サポート 獣医師と学校の連携を
生命尊重の情操教育に役立てようと、多くの小学校などでウサギ、チャボが飼育され
ているが、実情は理念から程遠く、劣悪な飼育環境に放置されている例が少なくない。
この状況を改善しようという動きが地域の獣医師や保護者の間で始まっている。
その主唱者である東京都西東京市の獣医師・中川美穂子さん(全国学校飼育動物獣医
師連絡協議会主宰)がこのほどNPO法人動物愛護かがわの招きで来高、高松市番町のアイ
パルで講演した。会場には同法人の会員だけでなく、小学校・幼稚園教員、県獣医師会
の湊恵会長らも出席、学校飼育動物の理想的な在り方について認識を新たにした。
学校での動物介在教育を地域の獣医師がサポートしてゆく活動を長年リードしてきた
中川さんが、この運動に取り組むに至ったきっかけは、過密で不衛生な飼育環境のため
弱ってしまった学校の動物を小学生自身が診てもらいにくるケースが相次ぎ、しかもそ
の状況を学校側が全く知らないという実情を知ったことという。
「今では全国で百以上の自治体が、学校と地元獣医師会の連携事業に取り組むように
なった。香川と宮崎の二県だけ立ち上がりが遅れていたが、これで香川でも種まきはで
きたと思う」と中川さん。さらに「獣医師が衛生面の助言をするだけでも状況は改善す
ることがある。橋渡しの役目を積極的に進めたい」という。
この日披露された例では土日や長期休暇中の動物の飼育実態が注目された。中川さん
はそれを「金曜日のウサギ」と命名していた。金曜の放課後、ウサギやチャボの小屋に
どっさりと餌を置き週明けまで放っておく。ウサギは不安がりいらだって所かまわず汚
物を散らし餌まで食べられなくしてしまうーというのだ。
先進的な小学校では保護者からボランティアを募って飼育応援団を組織、休日に親子
で飼育小屋の清掃や餌やりに取り組んでいるとか。この活動によって親と子の対話が濃
密になったとの実例も報告された。
校内飼育動物に愛情をもって接することによる情操教育上の効果は大きく、学級運営
もスムーズになったという現場の声も多い。
ゆとり教育の見直しから生活科に逆風が予想される昨今、学校飼育動物の環境改善を
目指す教育現場と地域獣医師の連携は教育面の新しい地平を開くものと期待されていい。
【メモ】学校飼育動物の管理に関しての問い合わせは獣医師の香川洋二さんへ。電話
087(868)0672(FAX共通)
[2005/06/23 09:02:55]