記事タイトル:西日本新聞:命の尊厳を学ぶ「動物飼育 獣医師と学校連携」 


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お名前: 中川美穂子   
西日本新聞 2004.10.17
8月25日に福岡市で教育委員会と県獣医師会が行った
 教員向け「学校飼育動物研修会」で講演しましたが、その後
 新聞を送っていただきましたので、記事をおしらせします

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西日本新聞 10月17日

 **命の尊厳を学ぶ**

動物飼育 獣医師と学校連携

「月に2,3度訪問、相談相手に 
    模索続く現場、普及に課題も」

 学校の動物飼育を充実させようと、獣医師と学校の連携の輪が少しずつ広がっ
ている。小動物を育てることで「命の尊厳」を子どもたちに実感させるため、全
国の九割の小学校が飼育舎を設置している。しかし、飼育の知識が乏しいことか
ら、「臭い、汚い、怖い飼育舎」は少なくなく、児童が寄りつかない現状もあ
る。獣医師が学校に出入りし、気軽に悩みを相談できる関係づくりを目指し現場
では模索が続いている。

◆心臓の音同じ
福岡県浮羽町の大石小四年、小川徹君(九つ)の腕の中でウサギがもぞもぞ動く。
町内の獣医師、處愛美さん(四八)が「心臓の音を聞いてごらん」と聴診器を手
渡した。ウサギの胸に徹君が聴診器を当てる。「トクトクトクっていいよる。」
處さんは、聴診器を徹君の胸に当てる。にっと歯を見せた徹くんは「僕の音も同
じやん」。
大石小では、責任感を持ち始める四年生が四,五人の班を組み、日替わりでウサ
ギやチャボを飼育する。處さんが月に二,三度学校を訪れ、抱き方や掃除の仕方
など児童の相談相手になっている。動物飼育の先生だ。放課後、處さんの病院を
訪ねる児童もいる。「ねえ先生、このウサギ、おしりの毛が抜けよるっちゃん」
と児童がウサギの背中をなでながら尋ねると、「オスは縄張り争いをするけん
ね。つつかれたかな。そろそろ別々の小屋に分けないかんね」と處さんは答えた。
ウサギが餌を食べ終わると、児童がほうきとちりとりで食べ残しや糞の掃除を始
めた。小屋はほとんどにおわない。「部屋が臭くて汚かったらウサギたちがかわ
いそうと、いつのまにか言われなくても掃除するようになりました」と處さんは
話す。
          
◆命を助けたい
  廣木勝子校長は「處さんのおかげで、衛生面が改善した上、繁殖もコント
ロールでき、病気になる動物やけがをする動物が減った」と話す。
   以前は病気になってもどうすることもできず、そのまま死ぬこともあっ
た。いまでは早い段階で教師や児童が處さんに相談するためおおむね回復すると
いう。
   それでも病気やけがで死ぬことはある。死は避けられない。「愛情を持っ
て育てた者が寿命や病気やけがで死ぬ。助けたくてもどうしようもない死に直面
して、命の尊厳を私たちは学ぶ」と處さんは話す。
   福岡県獣医師会によると、ウサギを抱いた児童が「電池はどこから入れる
の」聞くなど、命に対して子供が鈍感になることに漠然とした不安を感じている
という。
   子どもだけではない。ある獣医師は、大量に生まれたウサギが親に踏まれ
て圧死したり、食べられたりしていた学校飼育舎で、教師が「自然淘汰です」と
話したことにあぜんとした。「飼育舎は、人工的な空間。誤った飼い方による死
は、児童に生きることの無力感を与えるだけだ」と指摘する。
 
◆手ごたえ有り
   ただ獣医師と学校の先生が、職員室や校長室で茶飲み話をするほど親密に
連携している学校は少ない。学校も必要性を感じてはいても、診療費の予算を持
たないため、費用は獣医師の善意によることが多く、「頻繁に相談するのは心苦
しい」と遠慮する学校もある。
   一方で、獣医師にも気にはなっても相談がないと学校に自分から入るのを
ためらう獣医師もいる。お互いが足踏みしているのが現状だ。

 予算に関しては県教委は「学校として各市町村教委に要請するなどしてほ
しい」としている。ただ、ある小学校教諭は「校長が『獣医師は要らない』とい
う意見であれば一教師にはどうしようもない。県教委の側からも指導してほしい
という思いもある」と話した。

 県教委義務教育課の川島耕司指導主事(四五)は「連携には手ごたえを感
じており普及させたいと思っている。教職員研修の講師に獣医師を招くなどし
て、理解を広げていきたい」と話している。
(社会部・田篭良太)

県教委と獣医師会との連携 福岡が98年から

 獣医師でつくる全国学校飼育動物連絡協議会(中川美穂子主宰)によると、全
国の教育委員会の二割が往診費を予算化するなど、何らかの形で獣医師会と連携している。
 「協力関係が全くなかった十五年前と比べると大きな前進」と獣医師の中川さんは話
す。それ以前は動物が病気になったときなどにだけ、学校が獣医師に連絡をとる「個別
方式」だったため、手遅れになることも多く、中川さんらの呼びかけで協議会ができた。

 九州、山口、沖縄で、県教委が県獣医師会と連携しているのは福岡だけ。福岡県教委は
一九九八年から連携を始め、毎年十二校をモデル校に指定。一学期に一度は獣医師が学校
を訪問してきた。しかし、それでは不十分として、教職員研修を充実させるなど改善策を
探っている。
 他県でも「心を育てる手法として検討してみたい」(長崎県教委)など前向きな姿勢が
目立ち始めた。取り組みは第一歩を踏み出したばかりだ。
[2004/10/21 12:43:00]

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