記事タイトル:日本学術会議の学校の動物飼育に関する提言 と文部科学省訪問 


書き込み欄へ  ヘルプ
お名前: 中川美穂子   
日本学術会議が 以下のごとく6月24日に提言をしました。

また、近く、それぞれの部会の委員長である学術会員のお二人が、文科省を訪問し
 生命尊重における学校での動物飼育の重要性と、教員研修などの必要性
など、提言の内容を説明してお伝えするそうです。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
日本学術会議
科学教育研究連絡委員会・獣医学研究連絡委員会 報告

学校における動物飼育に関する提言
平成15年 6 月 24 日   日本学術会議
ーーーーーーーーーーーーーーー

科学教育研究連絡委員会・獣医学研究連絡委員会
 
委員名簿

日本学術会議科学教育研究連絡委員会
委員長 坂元 昂(第4部会員、文部科学省メディア教育開発センター所長)
幹 事 木村 捨雄(名城大学教授教授)
幹 事 細矢 治夫(お茶の水女子大学名誉教授)
伊藤  説朗(東京学芸大学教授)
大井  みさほ(東京学芸大学名誉教授)
岡崎 惠視(東京学芸大学教授)
岡本 敏雄(電気通信大学教授)
小林  範夫(横浜国立大学教授)
下野  洋(国立教育政策研究所次長)
田中 喜美(東京学芸大学教授)
戸北 凱惟(上越教育大学教授)
山田 卓三(名古屋芸術大学教授)

日本学術会議獣医学研究連絡委員会
委員長 唐木 英明(第6部会員、東京大学名誉教授)
幹 事 佐々木 伸雄(東京大学教授)
幹 事 西原 真杉(東京大学教授)
小沼 操(北海道大学教授)
小野 憲一郎(東京大学教授)
酒井 健夫(日本大学教授)
品川 邦汎(岩手大学教授)
徳力 幹彦(日本大学教授)
藤永 徹(北海道大学教授)
松山 茂(日本獣医師会前専務理事)

「学校飼育動物に関する勉強会」
岩室 祥一(東邦大学助教授)
大森 伸男(日本獣医師会専務理事)
桑島 功 (千葉県獣医師会会長)
桑原 保光(群馬県獣医師会学校動物愛護指導委員会委員長) 
鈴木 哲也(埼玉純真女子短期大学非常勤講師)
須田 沖夫(東京都獣医師会監事)
竹内 一男(玉川大学教授)
谷口 文章(甲南大学教授)
中川美穂子(日本小動物獣医師会学校飼育動物対策委員会副委員長)
鳩貝 太郎(国立教育政策研究所教育課程研究センター総括研究官)
古川 敏紀(広島大学助教授)
宮川 保 (新潟県獣医師会理事)
森田 和良(筑波大学付属小学校教諭)
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
 
学校における動物飼育に関する提言

幼稚園および小学校教育では、生物教育や道徳教育などを目的として、生活科、理科、
道徳、特別活動、総合的な学習の時間等において動物飼育を奨励している(参考資料
1、2)。動物飼育は子ども達に生物を愛護し生命を尊重する態度を育てるとともに、
生命を理解させ、他人への愛情や共感を養うなどの効果を期待されている。また、学
校における動物飼育体験や動物とのふれあいを通じて、いわゆる食農教育や食育教育の試
みも行われている。
 しかし、現在、小学校教員養成課程には動物飼育や動物と人の関係を学ぶ授業がない
ため、ほとんどの教師は動物飼育の子どもへの影響や意義、またその効果を得るための
適切な飼育法などについての知識を持っていない。そのため、動物の生理、習性を考慮
しない飼育が行われるなど、動物愛護の精神になじまない状況が見られ、その結果、子
どもたちは動物の死に鈍感になったり、動物の惨状に心を痛める我が子を見た保護者が
獣医師に助けを求めるなどの例が報告されている。

 このような状況を改善すべく、昭和50年代から各地で獣医師が学校での動物飼育に関
わり、平成元年以降、教育委員会が獣医師会と連携して飼育支援事業を行なう例が増加
した。また社団法人日本獣医師会は、平成10年に文部省に対して初等教育における動物
を活用した情操教育の必要性を提言し、学校で飼育する動物の衛生管理、保健衛生指導
等についての協力を申し出ている(参考資料3)。

 平成14年9月現在、23都道府県内の約250市区町村において行政が獣医師会と連携して
子ども達への動物教育の支援と教員への研修を行い、成果をあげている。平成13年の調
査では、教育委員会と獣医師との連携事業を行っている首都圏の小学校の83%が獣医師
の支援を歓迎している。また、文部科学省は委嘱研究により作成した冊子「学校におけ
る望ましい動物飼育のあり方」を小学校に配布しているが(参考資料4)、これにも獣
医師が協力している。

 しかし、全体として見れば教育委員会と獣医師会との連携はまだ少なく、個人的に支
援を行っている獣医師も多数いるが、獣医師個人のボランティア活動には限界がある。
今後、動物の飼育と利用の問題を獣医師と連携して解決しない限り、子どもの教育に動
物を十分に役立てることは難しい。このような状況に鑑みて、日本学術会議科学教育研
究連絡委員会および獣医学研究連絡委員会はこの問題に関する勉強会やシンポジウムを
共催(参考資料5)するなど検討を重ねた結果、以下の3点の対策を推進することを提
言する。

1)教育に動物を効果的に利用する方法および、関係法令に従って動物を適切に飼育す
る方法についての基礎的教育を、教員養成課程に取り入れる。
2)動物の飼育指導、疾病予防と治療、保健衛生指導、動物愛護教育指導等の推進のた
めに、各地の教育委員会と獣医師会の協力関係を推進する。
3)動物飼育の教育上の効果に関する研究を活性化し、その成果を教育現場に取り入
れ、生命尊重、生命科学等の教育の充実を図る。
 
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
小学校学習指導要領における動物関係の記述抜粋

小学校学習指導要領(平成10年12月)
生 活
第2 各学年の目標及び内容
〔第1学年及び第2学年〕
1 目標
(2)自分と身近な動物や植物などの自然とのかかわりに関心をもち、自然を大切にし
たり、自分たちの遊びや生活を工夫したりすることができるようにする。

2 内容
(7)動物を飼ったり植物を育てたりして、それらの育つ場所、変化や成長の様子に関
心をもち、また、それらは生命をもっていることや成長していることに気付き、生き物
への親しみをもち、大切にすることができるようにする。


道 徳

第2 内容
〔第1学年及び第2学年〕
3 主として自然や崇高なものとのかかわりに関すること。
(1)身近な自然に親しみ、動植物に優しい心で接する。
(2)生きることを喜び、生命を大切にする心をもつ。

〔第3学年及び第4学年〕
3 主として自然や崇高なものとのかかわりに関すること。
(1)自然のすばらしさや不思議さに感動し、自然や動植物を大切にする。
(2)生命の尊さを感じ取り、生命あるものを大切にする。

〔第5学年及び第6学年〕
3 主として自然や崇高なものとのかかわりに関すること。
(2〕生命がかけがえのないものであることを知り、自他の生命を尊重する。



理 科

第2 各学年の目標及び内容

第3学年
1 目標
(1)	身近に見られる動物や植物を比較しながら調べ,見いだした問題を興味・関心
をもって追究する活動を通して,生物を愛護する態度を育てるとともに,生物の成長の
決まりや体のつくり,生物同士のかかわりについての見方や考え方を養う。

第4学年
1 目標
(1)	身近に見られる動物の活動や植物の成長を季節と関連づけながら調べ,見いだ
した問題を興味・関心をもって追究する活動を通して,生物を愛護する態度を育てると
ともに,動物の活動や植物の生長と環境とのかかわりについての見方や考え方を養う。

第5学年
1 目標
(1)	植物の発芽から結実まで過程,動物の発生や成長などをそれらにかかわる条件
に目を向けながら調べ,見いだした問題を計画的に追究する活動を通して,生命を尊重
する態度を育てるとともに,生命の連続性についての見方や考え方を養う。

第6学年
1 目標
(1)	生物の体のつくりと働き及び生物と環境とを関連づけながら調べ,見いだした
問題を多面的に追究する活動を通して,生命を尊重する態度を育てるとともに,生物の
体の働き及び生物と環境とのかかわりについての見方や考え方を養う。


 
家庭動物等の飼養及び保管に関する基準(抄)
 
平成14年5月28日
環境省告示第37号

第1 一般原則

1. 家庭動物等の所有者又は占有者(以下「所有者等」という。)は、命あるものであ
る家庭動物等の適正な飼養及び保管に責任を負う者として、動物の生態、習性及び生理
を理解し、愛情をもって家庭動物等を取り扱うとともに、その所有者は、家庭動物等を
終生飼養するように努めること。
2. 所有者等は、人と動物との共生に配慮しつつ、人の生命、身体又は財産を侵害し、
及び生活環境を害することがないよう責任をもって飼養及び保管に努めること。 

第2 定義

  この基準において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによ
る。 
(1)動物
       哺乳類、鳥類及び爬虫類に属する動物をいう。
(2)家庭動物等
       愛がん動物又は伴侶動物(コンパニオンアニマル)として家庭等で飼養及び保管
されている動物並びに情操のかん涵養及び生態観察のため飼養及び保管されている動物
をいう。
(3)管理者
       情操のかん涵養及び生態観察のため飼養及び保管されている動物並びにその飼養
及び保管のための施設を管理する者をいう。


第7 学校、福祉施設等における飼養及び保管

1.管理者は、動物の飼養及び保管が、獣医師等十分な知識と飼養経験を有する者の指
導の下に行われるよう努め、本基準の各項に基づく適切な動物の飼養及び保管並びに動
物による事故の防止に努めること。
2.管理者は、飼養及び保管する動物に対して飼養に当たる者以外の者からみだりに食
物等を与えられ、又は動物が傷つけられ、若しくは苦しめられることがないよう、その
予防のための措置を講じるよう努めること。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 
資料 初等教育における動物を活用した情操教育について(提言)

平成10年4月
㈳日本獣医師会
 略
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

文部科学省委嘱研究

学校における望ましい動物飼育のあり方

目次
まえがき
第1章 子どもの成長・発達と動物飼育
第1節 幼児と動物飼育
第2節 児童と動物飼育・

第2章 学校における望ましい動物飼育
第1節 飼育動物にあたって
第2節 心をはぐくむ飼育活動
第3節 飼育動物の例(ウサギ、モルモット、ハムスター、ニワトリ・チャボ)

第3章 動物飼育の課題と対策
第1節 飼育動物の疾病と対策
第2節 学校における動物飼育の工夫
第3節 動物飼育のためのネットワークづくり
第4節 動物飼育と関係法令

第4章 動物飼育の活動例
第1節 幼児における動物飼育の活動例
第2節 小学校低学年における動物飼育の活動例
第3節 小学校中・高学年における動物飼育の活動例
第4節 子どもの生活と動物飼育の例

作成委員

参考資料 小学校学習指導要領における動物関係の記述抜粋

発行 日本初等理科教育研究会 


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
日本学術会議
科学教育研究連絡委員会・獣医学研究連絡委員会共催シンポジウム

学校教育における飼育動物

日 時:平成14年10月29日(火)13:15〜17:00
会 場:日本学術会議大会議室
(〒106-8555 東京都港区六本木7-22-34 TEL03-3403-6291(代表))
交通:地下鉄千代田線「乃木坂」駅下車,青山霊園方面出口徒歩約1分

主 催:日本学術会議科学教育研究連絡委員会,獣医学研究連絡委員会
後 援:日本獣医師会,日本獣医学会,全国大学獣医学関係代表者協議会,
日本小動物獣医師会,全国連合小学校長会,日本生活科・総合的学習教育学会


プログラム

開会行事(13:15〜13:30)

   シンポジウム(13:30〜17:00)
   コーディネーター:鳩貝太郎(国立教育政策研究所)

      シンポジスト 
山田卓三(名古屋芸術大学)
       「学校における飼育動物の意義と問題点」

        中川美穂子(中川動物病院)
       「学校飼育動物と獣医師の学校支援」

        中村克樹(京都大学霊長類研究所)
        「相手の情動を読みとる脳の働き」

        岡田美智男
((株)国際電気通信基礎研究所(ATR)知能ロボティクス研究所)
        「発達の関係論的な視点からみたロボットと子供たちとの関わり」

    総合討論
[2003/07/23 17:29:03]

このテーマについての発言をどうぞ。
氏名
E-mail URL



記事一覧に戻る