記事タイトル:毎日新聞より BSE 全頭検査は意味なし 


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お名前: 中川美穂子   
 すこし古いのですが
毎日新聞 2005.4.11
闘論 BSEと輸入再開圧力 より転載します
(記事には、アメリカでは食肉処理を確実にできるか疑問という意見が
 並列に掲載されていました) 
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 米国産牛肉の早期輸入再開を迫る米政府や米議会の圧力が日増しに強まっている。
米通商代表部は「あらゆるレベルで圧力をかけ続ける」と明言する。日本側は、BSE
(牛海綿状脳症)全党検査の見直し方針を決め、輸入再開に向けて徐々に動き出して
いるが、これで本当に食の安全を守れるのか。輸入再開の是非を聞いた。

東京大名誉教授 唐木英明氏

「全頭検査は意味なし」 係官派遣し安全確認を

 たとえBSEの牛であっても、病原体の異常プリオンが蓄積する脳や脊髄などの危険
部位さえ取り除けば、牛肉は安全であるというのが世界の常識だ。日本はBSE検査を
輸入再開の条件にしているが、これは科学的な妥当性からも、国際的なルールから
見てもおかしい。
 日本人の多くは、検査すればBSEにかかった牛は必ず見つけられる、だから全頭
検査によって牛肉の安全が守られると思っているが、大きな誤解だ。検査によって
肉の安全を保証することはできないし、他のどこの国もやっていない。
 検査には検出限界というものがあって、脳の異常プリオンがある程度以上たまら
ないと引っかからない。検査で見つけられるのは平均4.5歳と言われるが、日本の
肉牛はほとんど4歳までに食べられてしまうから、BSEにかかっていたとしても大
部分は見逃すことになる。
 しかし、それでも牛肉が安全なのは、危険部位を除去しているからだ。日本で
初めてBSEが発生した01年の時点では、国民のパニックを抑えるという面で全頭検
査にも意味があったかもしれないが、現在も続ける意味はない。
 だから、米国に求めるべきは 牛の検査ではなく、危険部位を除去しているか
、異常プリオンによる肉の汚染はないかを確認することだ。米国は日本向けに輸
出する牛については、すべて危険部位を除去すると言っている。米国の食肉処理
場に日本の係官を派遣し、きちんと確認すればよい。
 そもそも米国の食肉処理場では、O157対策のために解体した後の肉を高圧洗浄
しており、大腸菌の一つも肉につかないようなクリーンな処理をしている。危険
部位の破片が肉に付着したまま出荷される可能性はまずない。
 危険部位以外にも異常プリオンがあるという指摘がある。しかし、その量は極
めて少なく、健康被害を起こすほどではない。牛肉のリスクはゼロではないが、
全頭検査でそのリスクをゼロにすることはできない。
 問題は行政としてどこまで対策を取るかだ。健康被害が出ないところまでは
行政の役割だが、その先にわずかに残るリスクは消費者の選択に任せるべきだ。
 BSEの場合、何の対策も取らない場合、日本で今後変異型ヤコブ病になるのは、
全人口とうち0.1~0.9人と予測されるが、危険部位の除去により、この数字は
100分の1以下に減り、国産牛を食べて感染するおそれはなくなった。行政の対
策としてはこれで十分だ。国はこうしたリスク管理の考え方をもっと国民に説
明すべきだ。  【構成・西川拓】

からき・ひであき 東京大農学部卒。同大教授、食品安全委員会専門調査会座
長代理などを歴任。63歳。薬理学・毒性学。
[2005/06/04 09:59:13]

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