「動物を飼うこと」については 教育者の方々から反応をいただきありがとうございま
した。続きをお届けします。
@「動物を飼う」ということ」を踏まえて、
動物愛護教育に関して 当方から獣医師への発信 中川美穂子
今年初めだったか、関西の行政のかたが 学校で動物介在教育を年間5時間したら、
それまで盛んに犬を欲しがっていた子(6年生?)が
「自分で世話できるようになるまで動物を欲しがらない」と親にいったそうです。
行政のかたはそれを「授業の大きな成果だった」と発表なさっておられました。
しかし、見方を変えれば、「子供達を 動物を飼わないように誘導し」し「親に
飼ってやらないのは正当なことだと思わせた」ことになってしまった と言えます。
私は、発表なさった方達に、それは逆ではないか、
行政としては、親御さんに対して「子どもの成長には動物は大事だから、その成長環
境に動物を置いて、親が飼ってあげてくれ」と発信して欲しいとお願いしました。
脳科学者や心理学者によれば 思いやりは8才までにほぼ培われ、動物との関わりが
大きな影響を及ぼすそうです が 子どもが責任を持って動物を世話ができるように
なるためには、16才にもなってしまい、(受験が終わって親が子どもにご褒美に動
物を与える、あるいは親の制止を振り切って子どもが自分の考えで動物を飼い始める
るのが16才頃です)
肝心な幼児期から小学校中学年までに飼うことができません。
それではあまりにも子供達の損失、つまり将来の日本の損失が大きいでしょう
生き物の実感がもてないということ等に関して。
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下の文は8月29日の学校飼育動物研究会:シンポジウムで「教室内飼育の成果と
課題」を発表なさる筑波大学附属の森田和良教諭の抄録からの文章です。このお考えを
広め、その実践をサポートする体制をつくるための研究会だと思います。
研究会の案内は下のサイトをご覧下さい
http://www.vets.ne.jp/~school/pets/siikukenkyukai.html
(6年間に3クラスの担任になり、その都度モルモットを育てる実践をしている森田先
生の抄録から抜粋。この他 学期末の指導なども書いてあります)
2 生き物を学習で扱う意義
生き物を学習で扱う利点は、次の点が考えられる。まず、子どもは生き物に対し
て関心をもちやすいこと。次に、反応が多様で予想外のことがおきやすいこと。
さらに、生き物に触れることで命を感じ、生きる営みにかかわることで感動を味
わえること。また、言葉が通じないので、相手の表情や仕草から相手の心を読み
取らざるを得ない状況に置かれ、自分の対応を振り返らざるを得ないこと。
さらに、生き物を自分の手で育てることによって、生き物に対する愛情、やさ
しい心遣い、安定した気持ちなどが芽生えてくる。言葉は通じなくても心が通じ
るという実感、生きているうれしさの実感など、生き物を育てることによってお
のずと生まれ育っていく「心の働き」は、人間としてとても大切な資質であろう。
最後に、生き物を育てることはたいへんな責任を負うということを自覚できる
ことである。狭い場所に閉じ込められた生き物にとって、自分の環境は与えられ
たものであって、自分の意志ではどうすることもできない。決められた場所で食
事をし、そして排泄もする。さらにそこで寝起きをして、場合によっては子ども
もそこで産み育てる。生きていく上でのすべての営みを、狭い飼育小屋や飼育
ゲージの中で行わなければない。したがって、その生き物を飼っている人間の世
話の仕方に、すべての環境が左右されてしまうのである。
このことの意味を、飼っている人間は自覚する必要がある。つまり、狭い飼育
小屋に動物を入れた瞬間から、その動物の住んでいた自然が動物たちに与えて来
た様々な恵みを、飼い主が自然になりかわってその動物に与えることが義務とし
て発生するのである。
生き物を育てる営みは、このような様々な人間として重要な資質や能力を育て
るのに有効に働くのである
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(中川)
親に「子どものために動物を飼ってあげなさい」と だれも命令できません。
「学校での飼育は重要だ」「獣医師の学校への関わりは必要だ」「そのための法整備の
努力したい」と、文部科学大臣も国会で答弁なさっておられますから、獣医師も
教育者が期待する支援システムの準備をするときでしょう。
なお、研究会には 教育関係者や獣医師の他に
発達心理学、青少年問題、精神科、感染症の研究に携わる方々など
200人を超える方が会員になられています。
またシンポジウムには、230人くらいこられるようです
「社会の大命題は、健全な次世代を育てること」と考える方々が集まって
よいネットワークができるように願っています
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お茶の水女子大学 子ども発達教育研究センター 客員研究員
日本小動物獣医師会 学校飼育動物対策委員会 (動物介在教育支援)副委員長
社)日本獣医師会 学校飼育動物対策委員会 副委員長
CAS主宰 中 川 美 穂 子
電話 0422−53−7099 m-nakagawa@vet.ne.jp
「学校飼育動物を考えるページ」
http://www.vets.ne.jp/~school/pets/
全国学校飼育動物獣医師連絡協議会(CAS)
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[2004/08/19 03:06:37]