「学校の敷地内禁煙を推進して学んだこと」

和歌山県教育研修センター紀南教育研修所 所長 北山敏和 
  


 敷地内禁煙になるとほんとに空気がきれいになったことが実感できて、毎日がとても気持ちいいですよ。「ああ、これが普通なんだ、本来の姿なんだ」と改めて思います。

 和歌山では敷地内禁煙を破っても罰則はありませんから、残念ながら隠れ喫煙室を作り校長が率先して吸っている学校や、こっそりと教官室で吸っている学校も実はまだあるのです。しかし、他府県でも敷地内禁煙の学校が増えてくると、とてもいいプレッシャーになって、こういう状態も解消されると思います。いずれにしろ、これまでのように生徒の前でも妊娠中の女性のそばでも平気で吸うという状況はもはや昔話となりました。

 敷地内禁煙に関して私が一番学んだことは、これは喫煙者にとって一番のメリットだと言うことです。実施されるまで、「非喫煙者にはメリットだけど、喫煙者には少々我慢してもらわなければいけない。」と考えていました。しかし、実施してみると、これをきっかけに多くの人が喫煙をやめ、本人、家族とも大喜びです。

 たばこは1本吸うごとに健康のリスクが高くなるのですから、たばこの吸えない環境が増えることは喫煙者にとってとてもメリットだったのですね。隠れ喫煙室を作り喫煙者に“配慮している”学校では、結局ずるずると喫煙を続ける結果になります。これは「分煙」でも同じです。分煙では喫煙量は多少減ることはありますが、思い切ってたばこをやめるという人はほとんどいません。分煙は非喫煙者を守ることにつながりますが喫煙者を薬物依存から救うことは出来ないのです。

 ところで和歌山が「分煙」にとどまることなく「敷地内禁煙」まで進んだのには次のような例があったからです。

・職員室を禁煙にしたために事務室が喫煙場所になり、そこで
 働く非喫煙者がこれまで以上につらい思いをすることになった。
 (弱い立場の人が被害を受ける)
 
・全職員が休むことが出来た休憩室が喫煙室になり、非喫煙者や
 妊娠している先生が休んだり、お茶を飲んだりするところが
 なくなった。(喫煙者の都合が優先される)
 
・時間禁煙にすると、禁煙時間の前と禁煙時間のあとが煙もうもうの
 ひどい状態になった。(禁煙時間以外は堂々と吸う)
 
・分煙のために喫煙室を作っても、ドアを開けるたびに煙と臭いが
 流れ出し、たばこを吸っていることが生徒にもよく分かる。先生に
 用のある生徒が喫煙室まで先生をさがしにいくこともある。
 (学校には生徒に見えないところ、生徒は立ち入らないところがない。)
 
・分煙では禁煙する人がほとんなく、結局いろんな場面で吸ってしまう。
 
・運動会や授業参観日に保護者の喫煙が絶えない。また外来者も学校内で
 喫煙をする。
 
1日も早く全国の学校がさわやかできれいな空気で満ちることを祈っています。