「月の音色」

キンモクセイが降って
雨が来て
夜が咲く            月の音色 響く

キンモクセイが来て
夜が降って
雨が咲く            月の音色 響く





「時の流れ」

朝の空気と鳥の声は似合いすぎる
それと同じくらい 私と何かを

愛しさは空気
空気は水
水は音
音は遙かな遠い過去

いくつもの文字が この中で踊ってるんだろう

光が流れ 今が流れ 愛が流れ




「旅立つ」

バスにゆられて どこかの駅にたどり着きたいと思わない?
列車にゆられて どこかの町にたどり着きたいと思わない?
何の変哲もない 
ただそこにあるだけの場所を
くぐり抜けて
ただそこにあるだけの人に会いたい。

「桜の窓辺で」

わたしの部屋の窓は さくら花の横に開く
さくらの鮮やかを知るために この窓はあるのだ
そう思っていたのに
さくらのきらめきを数えるために この窓はあるのだ
そう思っていたのに

いつしか 色あせるかけらを見つめ
いつしか まばゆい葉をたたえ
いつしか さえずる枝を眺めた

首をかしげ白雪を背負う枝よ
鮮やかを隠した美しい冷たさを
今はただじっと見ている



「自分の彩り」

青いかばんは欲しくなかった
でも 男の子ぶるにはいちばんの方法
黒い傘は欲しくなかった
でも 男まさりを気取るにはいちばんの方法
いろんな色に いろいろ理由をつけて
自分を彩ってみたって 自分はじぶん



「指先」

ここにもう一つの月
    私の喉と頭とあなたの視線の間に
つぶやく言葉は星のまたたきと比べものにならないくらい
ささやかで かすかで ちっぽけで 冷たくて しずかな

ここにはもうひとつの月
手が届く もうひとつの月