この作品はフィクションです。某青猫ロボット漫画と似ているようですが全く何ら関係ありません。また、配役の関係上オウガの設定とは多少異なる場合がありますがその辺はご容赦ください。
この話の主人公(?)であるデニ太はうかれていた。彼が手にしているのは暗黒系の召喚魔法「ダークロア」。そう、彼は四度目に潜った死者Qでようやくこの魔法を手に入れて家に帰る途中だったのだ。これを手に入れるために何度女性顔キャラがエンジェルナイトになって涙のリセットを繰り返したことか・・・ようやく百回まで行ってゴーストの現れなかったときの絶望感・・・思い出すだけで涙の出る苦節の日々、。しかしそんな日々とも今日でおさらば。誰に装備させようか、それとも先にオリかちゃんの所に自慢しに行こうか、それを考えるだけで胸が膨らむ。彼は近道をしようと空き地の前の道を通ることにした。
「いよう、デニ太じゃねーか」
しかしそんな有頂天な彼の気持ちをカオスゲートのどん底にまで叩き落すような声が呼び止めた。
「バ、バルアン・・・」
デニ太の振り返った先にいたのは残虐非道傍若無人暴力万歳音楽センスゼロの殺人スピーカー、バルアンと、彼といつも行動を共にしている羊の皮を被った狐、マル夫の二人であった。
「お、見てよバルアン。デニ太のやつダークロアなんか持ってるよ」
バルアンの腰巾着、マル夫が目ざとく見つけ報告する。
「デニ太、いーもん持ってんじゃねえか」
城壁から飛び降りるかのように颯爽と空き地の土管から飛び降りるとバルアンはデニ太に詰め寄る。
「ちょっと俺に貸せよ」
「だ、だめだよバルアン。これはようやく手に入れたものなんだから・・・」
びびりながらもささやかな抵抗を見せるデニ太。だが「お前のものは俺のもの、俺のものも俺のもの」を信条とするこの男にそんな言葉が通用するはずがない。それ以上にそうしてもらわないと話が進まないのだ。彼らには悪いが原作どおり悪役に徹してもらいましょう。
「なんだと、俺には貸せないっつーのかよ!」
「そうだそうだ、デニ太のくせに生意気だぞ!」
その答えにと凄みを利かせるバルアン、小悪党ぶりを如何なく発揮するマル夫。いやはやこの二人、原作と近いノリで書けるので非常に便利です。
「やめてよバルアン」
「うるせえなデニ太」
バッシィィィーン!
自前の野球チーム「ローディスバルアンズ」で猛威を振るっている愛バット(?)サンシオンでぶん殴る。武器を使うとはさすがはバルバス・・・じゃなかったバルアン。元ネタキャラでもここまでエグいことはしないぞ!
こんなもん喰らったら肉弾系の職業でも辛いというのに元ネタキャラの特技上、職業がガンナーに設定されているデニ太が喰らったのだ。きつすぎる一発だ。予想通り一発でKOされてしまった。
「黙って渡しとけば痛い目見ずにすんだのによぉ」
そう言うと残忍な笑みを浮かべる。うわ、元ネタのキャラは映画だとめっちゃ良い奴になってるけどこいつぁ映画に出たとしてもいい奴にはならんな、絶対。いや、映画化なんてしませんけどね。
「よ〜し、行こうぜマル夫」
「ねえねえバルアン、これをみんなに自慢しに行こうよ」
ダークロアの魔道書を片手にバルアンが意気揚々と去っていくのにマル夫が続く。
その後姿がたっぷりと見えなくなった頃、ポリバケツに頭から突っ込んでいたデニ太はようやく起き上がった。脳天がぐちゃぐちゃの麻婆豆腐のようになっていてもおかしくはない攻撃だがそこはよいこの漫画のパロディー、たんこぶと頭の上を回る星マークだけで済んでいる。
「ウォレえも〜〜〜〜〜〜〜ん!」
どこにそんな体力があったのか、大声でそう叫びながら全速力で家に帰ったデニ太は勢いよく自分の部屋のふすまを開けた。
「おや、デニ太くん。どうかしましたか?」
大好物のドラ焼きをお茶うけに緑茶をずずっとすすりながらウォレえもんが答える。シ、シブイ・・・元ネタと同じ登場の仕方のはずなのにどうしてこんなにシブイんだ?
「バルアンにせっかくとったダークロアを取られちゃったんだよ〜」
「ほう、それは災難でしたねぇ・・・」
自慢のひげをしごきながらウォレえもんは相槌をうつ。
「だからバルアンから取り返せるような道具出してよ」
「しかしですねデニ太くん。バルアンから取り返すのは至難の技ですよ」
ウォレえもんの言うことも無理はない。何しろ残虐非道傍若無人(以下略)のバルアンである。教師を殴り殺したとか武勇伝には事欠かない彼から取り返すのは確かに至難の技だろう。
「それによく考えてください。彼がダークロア持ってたって何の役にも立ちはしないでしょうに」
うっ、そういやそうだ。あんな頭悪そうなのが使ったところで何の脅威にもならない。それどころか自分の持ち味を消してしまうだろう。それi以前にそもそもバルバスって魔法使えんの?
「バ、バルアンがどうとかじゃなくてアイテムコンプリート目指してるんだよ〜」
「もう一回行ったらどうです。どうせまだ取ってないアイテムもあるのでしょう?コンプ目指すならちょうどいいじゃないですか」
どう見ても見た目青いじいさんでしかないが頑なに「未来から来たネコ型ロボット」と言い張るウォレえもんが素っ気無く答える。
ううっ、またしても痛い所を!ああそうさ!確かに攻略本でしか見たことのないアイテムもあるさ(涙)しかしそれよりもこのままだとデニ太が死者Q行って話が終わってしまう!
「いいじゃない、おじいちゃん、デニ太クンが困ってるじゃないの。その他の人も(はあと)」
おお、救いの女神・・・ならぬ救いの魔女が!作者大ぴんちの状況に登場したのはウォレえもんの妹、デネミだった。
「デネミか。ここでは『おじいちゃん』ではなく『お兄ちゃん』でしょう。オウガ主体ではないんですから」
「ああ。ごめんなさいねお兄ちゃん(はあと)それよりデニ太クン、私が手を貸してあげましょうか?」
なんだか唐突な登場で不自然だが話が進むならこの際関係ない(デニ太の意見も含)、お願いします。
「え、ほんと?」
「ええほんとよ。じゃ、ちょっと目をつぶってて頂戴♪」
喜び勇んで目を閉じるデニ太、もちろん周りが暗闇に閉ざされる。しかしその瞬間、「ごち〜ん☆」という音と衝撃と共に暗闇の中に火花が走った。
「いててて・・・何するんですかデネミさん、目から火花が出ましたよ!」
「あら、ガンナーのくせに意外にタフねぇ。じゃあもう一度」
デニ太の意外なタフさに驚きつつデネミは凶器であると推測されるファイアワンドを構えなおした。
「だから何でそうなるんですか!」
「あら、バルアンに勝つための秘策よ。デニ太クンに死んでもらってネクロとリンカでドーピングするの♪これでバルアンだろうが何だろうが敵なしよん(はあと)」
「・・・・やっぱ遠慮しておきます」
笑顔で怖いこと言うデネミに対してデニ太は引きつった笑いで断った。しかしどことなく心がちくりとするのはなぜだろう?
「ということは私の出番ですかねぇ・・・クックック・・・」
どこからともなく不気味な声がする。気がつくとデニ太の肩に手のひらサイズほどのマッドな顔立ちの老人が乗っている。某攻略本風に言えば日活映画ギャンブラー系か。とにかくこのサイズでこの顔は不気味だ。これが絵のない小説であることが心底良かったと思える。
「どっから現れたんだよ・・・っつーかそれ以前にあんた誰?」
「何を言っているンですデニ太クン。ミニウォレに決まってるじゃあないですか・・・」
「いや、どう見てもあんたニバスだろ?」
「若いうちからそんな細かいことを気にしちゃいけませンよ。ハゲますよ、誰かさんの親友みたいに・・・・。おっとそれよりデニ太クン、バルアンに勝ちたいならこれをどうぞ・・・・」
そう言って自称ミニウォレは指輪をひとつ差し出す。
「これは?」
「この指輪をつけていればたとえ死んでも不死生物として甦るンですよ。つまりこれを装備していればある意味永遠の命が得られるンですね。クックックック・・・・・」
「・・・・・やっぱあんたニバスだろ?」
「おやおや、お気に召しませんでしたか?仕方ない、今回はこれで退散しましょう・・・」
ぼふっ、と煙を出しながらカラスへと変身するとミニウォレ(自称)は押入れの中へと消えていった。
「やっぱり頼れるのはウォレえもんしかいないよ〜」
「仕方ないですね、デネミなどに下手な手出しをさせるよりはまだましですから・・・」
ため息混じりにそういうとウォレえもんは四次元アイテムボックスを取り出した。この四次元アイテムボックス、最近のゲームによく使われる代物でどう見てもかさの違うアイテムでも何故か同じ99個まで持てるという不思議なものだ。昔は同じやくそうを二個持ってもアイテム欄を二個消費したのにねぇ・・・。
「オウガシリーズぅ!」
例のあの効果音とともにウォレえもんが四次元アイテムボックスから取り出す。
「これは装備すると無条件に攻撃力が上がるという代物です。これぐらい強くなればいくらデニ太くんでも何とかなるでしょう」
「ありがとうウォレえもん!よ〜し、これでバルアンたちをやっつけてやるぞ!ウォレえもん、『どこでもテレポート』出してよ」
どこまでも他力本願なやっちゃなぁ・・・・。
「まあついでです。風雲の力を得、汝を高く舞い上げ運び去らん・・・テレポート!」
ひゅん、一瞬のうちにデニ太の体が彼の部屋から消える。
「何だ?やけに蒸し暑いぞ?それにここはどこか屋内のようだけど・・・・」
「キャァァァァァー!デニ太さんのエッチ!」
ばしゃぁ、突然熱湯が浴びせられる。オウガ装備の上から喰らったのだからたまったものではない。鎧とかすぐに脱げないものが多いからだ。
「熱っ!オ、オリかちゃん?ということは・・・・」
そう、お約束のようにどこでもテレポートの失敗でオリかちゃんの風呂場へと出てしまったのだ。出現場所が風呂場に設定されるどこでもテレポートもどこでもテレポートだがそれ以上にこんな昼間っからシャワーを浴びている小学生というのもどうかと思うのは僕だけだろうか?
「ご、ごめんオリかちゃん」
熱いのとパニクっているのであわあわしながら彼は風呂場を飛び出した。
「ここでお約束ネタが来るとは。くっそー!」
外に飛び出したデニ太は絶叫した。果たしてその叫びが間違えて飛ばしたウォレえもんに対するものか、この原因を生み出したバルアンに対するものなのか、それとも被っていたせいで視界が悪くなっていたオウガヘルムに対してなのか・・・それだけはデニ太にしかわからなかった。
「なんだよデニ太、まだ用があんのかよ」
「うるさいバルアン!勝負だ」
湯気を上げながら近づいてくるずぶ濡れの鎧に戸惑いつつもバルアンはそれに応じた。
「えらく重装備じゃねえか。だがそんな鎧で俺様がびびるとでも思ったのか?」
余裕綽々のバルアン、どうしてすぐにウォレえもんの出した特別なものだと気づかないのかねぇ・・・。
「瞬殺!」
先手必勝とばかりにバルアンが近づいてくる。デニ太は動かずに足元の石をひとつ拾った。
「馬鹿め、そんなもんがこの俺に・・・」
効くのである。言葉を途中で止められたバルアンはそのことを身をもって体験した。
「うぬぬぬ・・・デニ太めぇ、さてはウォレえもんの道具だな」
投石の嵐の中、それでも前進してデニ太の目の前にまでたどり着く。おお、ど根性だ。頭に血が上って無謀になってるだけだとか言うのは彼の名誉のために黙っておこう。
「うははは、近づいたぞデニ太、近距離戦なら・・・・」
やっぱり負けるのである。デニ太の振りかざしたオウガブレードの前に一発で打ちのめされるバルアン、う〜むやはりゲームと同じで能力に差がありすぎると非常に呆気ない。
「や、やるなボウズ・・・だがそのウォレえもんの道具のおかげだということを忘れるな・・・・・」
「作品が違―――――う!」
すっかーん、とオウガブレードでどつかれるバルアン、剣で殴っているというのに腕や頭が飛ぶどころか血の一滴も出ない。さすがはよいこの健全な漫画!残酷シーンはありません。
「わー、バルア〜ン」
ホームラン性の当たりで放物線を描きながら飛ぶバルアンを追いながらマル夫が逃げ出す。
「わっはっは、どんなもんだい!」
自分の力でもないくせに妙に誇らしげにそれを見送るデニ太。それでいいのか?という問題はともかくとしてとにかくデニ太はダークロアの魔道書を取り返したのだった。
その帰り道にデニ太は偶然野良ドラゴンに絡まれているオリかちゃんと出会う。いつもなら助けようかどうか迷うところだが今日のデニ太にはオウガシリーズがついている。迷うことなく近づいていくと一刀のもとに野良ドラゴンを追い払ってしまった。
「ありがとうデニ太さん」
メロメロモードでデニ太にお礼を言うオリかちゃん。あんたさっき風呂覗かれて怒ってたんちゃう?という不都合な疑問はこの際気づかないふりだ。
「いいんだよオリかちゃん。それより見てよこれ」
「まあ、ダークロア。もう手に入らないと思ってたのに・・・すごいわデニ太さん」
「いやぁ、大したことないよ」
そういう割りにこれでもかといわんばかりに胸を張っている。
「地下百階までなんて大変だったでしょう?」
「いやぜんぜん。ちっとも」
あははと笑いながら軽く答える。そりゃそうだ。死者Qじゃ、リーダーは死なないよう後方から弓で援護するか逃げ回るだけの楽な役回りである。
と、まあこの後はデニ太とオリかちゃんのうふふであははな会話がしばらく続くので省略させていただきます。
「ちょっと待ってよ。ようやく報われるシーンに入ったっていうのにどうしてカットしちゃうのさ」
うるさいな、あんまそういうシーンは書くのが得意じゃないんだよ。「そういえばうちでケーキ焼いたの?味見しに来てくれる?」「うん行く行くぅ〜」とか書いてるとなんかこっちがこっぱずかしくなってくるのさ。
「苦手なことから逃げてるだけじゃないか。そんなんじゃあプロのもの書きにはなれないぞ」
う、うるさい!んなことは言われんでもわかっとるわい!とにかく今回はなしなの。この後デニ太はオリかちゃんの家へ遊びに行ってお手製のケーキを食べたりお話したりして楽しい時間をすごしましたとさ。はい終わり!
「強引だなぁ」
うるさい、とっとと戻らんかい。
「あらもうこんな時間。デニ太さん、これから私、教会で弾くオルガンのレッスンがあるの」
「そうなんだ。じゃ僕は帰るよ」
デニ太は立ちあがると今日二度目となるオリかちゃんの家を後にした。
「あ〜楽しかった。楽しいと時間が過ぎるのがほんと早いなぁ」
・・・・・・まだ引っ張るか。
「それにしてもすごい装備だな。これさえあれば恐いもの無しって感じだ」
そう言ってデニ太はオウガブレードを夕日にかざした。
しかし、しかしだ。本家本元と同じく奢っていると最後にオチが待っているというのは「ぼくウォレえもん」でも変わらない。つまりこの直後、オウガシリーズですら敵わない相手がデニ太を襲うのである。
「デニ太〜」
肥沃だったと言われるブリガンテス地方が氷に閉ざされるように一瞬にしてデニ太の背筋が凍りつく。
「ま、まさか・・・・」
ぎこちなく声のしたほうを振りかえる。その間にも心の中では「あの人」でないことを心の底からフィラーハに祈る。しかしそもそもこんなプレッシャーを与えられる人物は一人しかいない。残念ながら彼の願いは叶わなかった。
「姉さ・・・じゃなかった。カチュ子ちゃん・・・」
あまりの恐怖に語尾が震える。そう、目の前にいたのは予想通りバルアンの妹にしてウォレえもんの来なかった未来においてデニ太と結婚していたと言われるカチュ子であった。
「見つけたわよデニ太」
獲物を目の前にした蛇のようにするするとデニ太に忍び寄る。
一方のデニ太はというとなすすべも無く立ち尽くしたままだ。いくら攻撃力が高くとも彼女をオウガブレードでどつくわけにもいかない。さすがにそれは色々と問題があるのだ。もし万が一にそれが出来たとしよう、それでも彼には彼女に勝つ自信が無かった。すでに気迫からして別次元の実力なのだ。さすがはTO最恐のキャラ。
「その前にあんた、そこのあんたよ」
え、もしかして僕ですか?
「そうよ。どうして王家の血を引くれっきとしたお嬢様の私があんな頭悪そうな体力バカの妹で、生臭坊主の田舎娘がヒロインのポジションにおさまってるのよ。普通逆じゃない逆?」
え、いやそれはですね・・・普通一般に見た場合そっちのほうがお似合いだという意見が多いのではと・・・。
「誰がそう言ったのよ。何時何分何秒?地球が何週回ったとき?私にそんな大口叩くくらいなんだから少なくとも『どっちにしまショー』とかで裏付けくらい取ってるんでしょうね?」
いや、そこまでは・・・・。
「ふん、やっぱりね。勘違いしているようだけどTOの真のヒロインは私よ、私。考えてもみなさい、弟とともに勝ち目の無い戦に身を投じる美少女。しかし辛くも戦いは二人の心を引き裂いてゆく。そこで知らされる衝撃の事実。さらに離れる二人の距離!しかし互いに惹き合うものは決して離れない。失って初めて姉の存在に気づいた弟は姉をさがして島中を駆け回るの!そしてついに姉を探し出した弟は姉に向かって甘い声でこうささやくのよ。『僕は姉さんを愛してる』と。こんな波乱万丈な話があの小娘にある?松葉先生の漫画を見習いなさい松葉先生の漫画を!」
いや、愛してるって言わない場合だってあるし松葉先生の漫画はあんたの本性が表れる直前で終わってたじゃん。それに甘い声でささやくって思いっきり叫んでたような・・・
「・・・・・口は災いの元っていう諺、知ってる?」
何でもありません、サー。
「よろしい。全く、そういうとこに気づかないからいつまでたっても自称小説家なのよ」
うう、耳が痛い・・・。とにかく何とかして矛先を変えねばこちらの身が持たないどころかこれが「ぼくウォレえもん」だということを読者が忘れてしまう!
「だいたいねえ・・・」
あの、お言葉の途中で大変失礼かと存じますが今の隙にデニ太が逃げ出しましたよ。
「何!?」
くるりと振り向いたカチュ子の遥か後方にデニ太の背中が見えた。
「私と鬼ごっこがしたいなんて・・・うふっ、デニ太もまだまだ子供ね」
・・・・・・全く同感であります、サー。
「逃がさないわよ〜♪」
猛然と駆け出すカチュ子。もう彼女を止められる人間は誰もいない。
「つ〜かま〜えたっと♪」
「うぎゅ!」
アメフト選手の突進ですら止められそうなタックルでがっちりとデニ太を捕らえる。
「もう、デニ太ったら。いきなり鬼ごっこはじめるなんてずるいわよ♪」
松葉先生ばりの無邪気なかわいい笑顔を見せる。だがこの笑顔がある意味一番恐ろしい。
「あ、あはは、ごめんね。カチュ子ちゃん」
決して笑っていない笑い声でデニ太が答える。逃げ切れる自信があったのだろう、声の後半が驚きと恐怖のあまりに棒読みになっている。
「でもオウガブレード42、オウガシールド40、オウガアーマー30、オウガヘルム20の重量を身につけて逃げるのは無理だったみたいね」
その通り、これが最強と思われているオウガシリーズの最大の弱点なのだ。最大の強みである攻撃が封じられ、ただの錘と化したオウガシリーズを身につけるデニ太は今や蜘蛛の巣にかかった虫同然だ。奢れる者も久しからず、いくら強くとも完全なものはないといういい見本になったんじゃないかな?デニ太という尊い犠牲のおかげだ!ありがとうデニ太!!
「そういえば私ね、新しい漫画描いたの。デニ太くん見てくれる?」
「漫画って言っても全部デニム×カチュアネタの同人じゃないか・・・」
「さあ、今年はコミケでこれを売りまくってTOの正統なヒロインはカチュア様だということを下々に知らしめるのよ〜!」
キャラの特性を生かしてプロパガンダ作戦で攻めるとは・・・転んでもただでは起きませんなぁ、この人。
「そ・の・た・め・に・も・デニ太にはネタ作りと原稿の手伝いのために今日から泊り込んでもらうわ」
「げ・・・」
カチュ子の目が妖しく光ったのを見てデニ太が思わず身を引いた。
「助けてぇ〜ウォレえも〜ん!」
おわり