日本を舞台にした洋画


日本を舞台にした洋画には変な日本がたくさん出てきますが、外国人が思っている日本のイメージだと私は思っています。映画製作者は現状と違うことはわかっていても、観客が抱いているイメージにあわせて映画作りをしているんですね。富士山・芸者・ハラキリが出てこないと、日本じゃないんですよ。

そんな映画を観て国辱だと騒ぎ立てる政治家がいますが、海外に対して正しい日本を紹介していない証拠だと思って、政治家として恥ずかしいと思って欲しいです。私は変な日本が出てくるたびにゲラゲラ笑って喜んでいます。しょせん外国人の考えている日本ですからねェ。

 

『東京ジョー』(1949年/監督:スチュアート・ヘイスラー)

第二次大戦中、空軍パイロットとして活躍したジョー・バーノン(ハンフリー・ボガート)が8年ぶりに日本にやって来る。ジョーは戦前の東京で“東京ジョー”というナイトクラブを経営していたのだ。現在は旧友の伊藤(テル島田)が経営を引き継いでおり、かつての妻トリーナ(フローレンス・マリー)がGHQの将校(アレキサンダー・ノックス)と結婚し、ひとり娘のアーニャ(ローラ・リー・ミッチェル)と東京に住んでいると知らされる。トリーナは幸せな生活をしていたが、伊藤から紹介された木村男爵(早川雪州)から、戦時中トリーナが反米放送していたことを種にジョーは強請られる。トリーナを戦争犯罪人にしたくないジョーは木村男爵の条件をのんで、韓国から海外逃亡していた戦争犯罪人を密入国させるが……

日本を舞台にしていますが、大部分はハリウッドのスタジオ撮影です。主人公が冒頭で東京の街を行くシーンはスクリーン・プロセスとスタンド・イン(顔が映らない)による東京ロケですね。

責任とってのハラキリや、GHQの日本人情報部員の名前がカマクラゴンゴロウカゲマサ(鎌倉権五郎景政)という笑えるところはありますが、全体としてはおかしな内容じゃなかったです。

トリーナが反米プロパガンダ放送に従事させられたという設定は“東京ローズ”事件を想起させるし、木村男爵が右翼の大物でクーデターを計画していたというのもリアルな感じがしました。

ヘイスラーの演出としては、深傷を負ったジョーがトリーナを見つめ、トリーナの姿がフェイド・アウトしていくエンドはジョーの死を感じさせて印象に残るものとなっています。

 

『二十四時間の情事』(1959年/監督:アラン・レネ)

広島にロケにやってきたフランス女優(エマニュエル・リヴァ)と、日本人技師(岡田英二)との1日の恋物語。といっても、男と女の出会いは一切語られず、その時その時の女の心情が映像となって表現されます。

戦時中、女はドイツ兵を恋人にしており、戦争が終わると恋人は殺され、彼女は非国民として丸坊主にされ、気が狂った過去を持っています。男との情事の中に、恋人だったドイツ人を重ね合わせているんですね。男と話しているうちに、いろいろな想念がわいてきて、過去が形作られていきます。心情と想念が交錯しながら映像展開するとい う、はっきり言って難解な映画です。

こんな映画は好きじゃないのですが、何故観たかというと、1959年の広島の風景を懐かしみたかったからで〜す。

 

『X博士の復讐』(1970年/監督:ケネス・G・クレイン)

脚本がエド・ウッドで、監督がケネス・G・クレインとくれば、内容は予想通りでした。

NASAで働きすぎてストレスの溜まったブレーガン博士(ジェームズ・クレイグ)が、助手のポール中村(ジェームズ八木)の勧めにより日本で休養することになるんですな。ブレーガン博士は植物が専門(何故、NASAでロケットの研究をしていたのだろう?)で、ガソリンスタンドで見つけた食虫植物を持って、温室のある浅間山近くのホテルに滞在します。人間は植物から進化したというのが博士の持論で、日本の海底から採取した食虫植物を交配させて新種の植物を作ろうとします。実験は成功し、その植物はみるみる成長し、人間の血を与えると心臓ができて歩きはじめるんですよ。

でもって、村人を襲いはじめるわけです。突拍子もない物語展開は、やっぱりエド・ウッドだァ。

ケネス・G・クレインは日本を舞台にした最低ホラー『双頭の殺人鬼』(1959年)の監督で、日本を気に入っていたんでしょうねェ。海女や村人は本物で、日本ロケしていることは確かで〜す。

 

『ザ・ヤクザ』(1974年/監督:シドニー・ポラック)

ジョージ・タナー(ブライアン・キース)の娘が日本のヤクザ・東野組に誘拐され、ハリー・キルマー(ロバート・ミッチャム)はタナーに頼まれて日本にやって来る。ハリーとタナーは日本進駐軍時代の旧友で、ハリーはタナーに借りがあったからだ。ハリーは昔の恋人・田中英子(岸恵子)に逢い、英子の兄・健(高倉健)の居所をきく。健は元ヤクザの幹部で、東野(岡田英二)に顔がきくと考えたからだ。健には終戦直後の混乱時に英子と娘をハリーに助けてもらった恩があった。ハリーから事情を聞いた以上、義理を返すために依頼を受ける。ハリーと健はタナーの娘を救出するが、健は東野組から命を狙われることになり……

クレジットに俊藤浩滋の名があるように東映が全面的に協力しており、ハリウッド映画であっても殆ど違和感なく義理人情の世界を描いていました。脚本家のポール・シュレッダーも京都大学の講師だった5年間にヤクザ映画の熱狂的なファンになり映画館に通いつめたとのこと。健さんとミッチャムが殴りこみに行くクライマックスなんざ、ヤクザ映画の定番ですからね。バックに健さんの歌が流れりゃ最高だったけど、残念ながらポラック監督は真面目に演出していました。

真面目といえば、アクションシーンが実に見応えがありましたね。最近のCGを使った派手だけど軽いアクションと比べて、痛みが伝わってくるリアルで迫力あるアクションでしたよ。CGに頼らないアクションを見直すべきですね

 

 

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