警察映画


『にっぽんGメン』(1948年・東横/監督:松田定次)

軍隊組織の強盗団が犯行を重ね、警視庁は全力をあげて捜査していたが、有力な手がかりを掴んだ刑事が強盗団の一味に殺され……

主演は片岡千恵蔵だが、スーパーヒーロー的な活躍はなく、後年の“警視庁物語”(プログラム・ピクチャーの傑作シリーズと私は思っている)のような集団ドラマに近い内容となっています。

それと警視庁が全面的に協力しているのが凄いです。強盗団の射った銃弾が、壁やドラム缶にメリ込むシーンは、明らかに実銃を使用していますね。ラストの強盗団逮捕に向かう警察隊もエキストラでなく、本物のような気がします。

本物の迫力は認めますが、この映画に登場する片岡千恵蔵を初めとする警察官は皆リッパで、殺された刑事の母親のセリフや、補導された少年のセリフは、警察のPR臭くてシラけてしまいます。

とにかく、時代を感じさせる映画でしたね。

 

にっぽんGメン・難船崎の血闘』(1950年・東横/松田定次)

怪電波をキャッチした海上保安庁は、大掛かりな密輸取引があることを察知して出動する。しかし、海上に漂っている女を発見し、救出している隙に、密輸団は海上から姿を消した。救出された女は、人身売買組織の船から逃げるために海に飛び込んだと言うが……

“にっぽんGメン”シリーズ第2弾。前作と異なり、アクション満載。

市川右太衛門と片岡千恵蔵の二大巨頭が熱演しているのだが、もろ時代劇です。

この二人以上に臭い演技をしていたのが月形龍之介。思わず「役者やのォ」と、観ていて合いの手を入れたくなりましたよ。

密輸団のアジトであるキャバレーに通ってくる金持ちのキザな紳士が大友柳太朗。ネタバレしますが、実は密輸団の黒幕。この頃の大友はんは、悪役が多いんですよ。演技的に表現力が乏しかったので、逆にニヒルな感じを与え、冷酷な悪役がピッタリ決まっていましたね。

 

七人の刑事・終着駅の女』(?年・日活/監督:若杉光夫)

上野駅で女が刺殺される。警視庁・赤木班の七人の刑事と所轄の刑事による捜査が開始され、事件の背後に暴力団関係の売春組織が浮かび上がってくる……

テレビの人気ドラマの映画化ですが、これが中々の優れもの。

上野駅を中心にオール・ロケで描いたドキュメンタリー・タッチの作品となっています。粗い映像(16ミリで撮影しているのではなかろうか)が臨場感を高めていますね。東北の出稼ぎ問題という当時の社会性を浮彫りにし、ハードな内容になっています。

笹森礼子の汚れ役は珍しいけど、脇を固めている小劇団の俳優たちが巧いんだなァ。これは隠れた傑作ですよ。

テレビでお馴染みのハミングが流れなかったのが唯一残念。

 

警視庁物語・顔のない女』(1959年・東映/監督:村山新治)

荒川の河川敷にバラバラ死体が流れ着く。被害者の身元確認と、橋の上から死体を落として立ち去った車の捜査が行なわれ……

警視庁物語は、1956年の『終電車の死美人』を第1作として、1964年の『行方不明』まで24本作られています。ただ、『終電車の死美人』を第1作とするかには異論があって、『逃亡5分前』が実質第1作という説もあります。というのは、『終電車の死美人』だけが白石五郎と森田新の脚本で、上映時間が92分なのに対し、残りの作品が全て長谷川公之の脚本で55分〜75分というSP作品(二本立ての添え物扱い)となっているからなんです。

このシリーズの特徴は、死体が発見され、刑事たちが聞き込みや張り込み、参考人への取り調べといった地味な活動を通して犯人に迫っていくドキュメンタリー・タッチにありました。

『顔のない女』も、その特質が充分出ており、事件発生から解決までが変化にとんだ映像で、歯切れのよい展開で飽きさせません。一度観たら、病みつきになりそうな魅力を持っていますね。

ところで、この作品にはデビュー間もない頃の佐久間良子が出演していま〜す。

 

『東海道非常警戒』(1960年・新東宝/監督:山田達雄)

私用で神戸からの帰京中の山内刑事(宇津井健)は、週刊誌の記者・川島京子(小畑絹子)と話している時、東山産業の社長令嬢(中西杏子)が兎唇の男(御木本伸介)と横浜駅で途中下車するのを目撃する。東京駅には東山家の女中が迎えにきており、鉄道公安室に届けが出ていた。しかし、東山産業の秘書課長・高木(高宮)から令嬢が無事戻ってきた旨の連絡が入る。事件の臭いを感じた山内が調べると、令嬢は誘拐されており、その事を知らせようとした女中は轢逃げにより殺される。内部に共犯がいると考えた京子は、幼友達の高木に近づくが……

犯人の行動がマヌケすぎて、バカバカしくなります。顔はさらけ出しているし、殺すのかと思ったら人質にとって逃走。ジャマなだけだろう。

ラストの逃走劇もダラダラしているだけ。スリルもサスペンスもない犯罪映画でした。

 

 

『鉄路の弾痕』(1950年・大映/監督:安田公義)

貨物列車から積荷が大量に盗まれる事件が頻発し、パトロール中の鉄道公安官が射殺される。鉄道公安室の矢部室長(岡譲二)は貨物駅のパトロールを強化するが、室長の弟で鉄道公安官に任官したばかりの信二(堀雄二)が単独行動をしたために取り逃がしてしまう。しかし、信二が強盗団と格闘した時に手に入れたハンカチから……

鉄道公安官の活躍を描いた作品なので、国鉄が全面的に協力しています。“特急つばめ”の映像が出てくるのですが、当時は蒸気機関車だったんですね。

内容的にはどうってことのない作品で、犯人一味の小林桂樹の演技が光るくらいかな。大映における俳優ランクが落ちてきた小林桂樹が東宝に移るきっかけとなった作品でもありま〜す。

画像は、堀雄二

 

『殺人容疑者』(1952年・新東宝/監督:鈴木英夫)

深夜の新宿で吉川という男が殺され、事件の重要な証人である飲み屋の女将も殺される。二人と関係のあった山田という男を調べると、山田は木村(丹波哲郎)というヤクザに脅されていた。女将の指輪を質入した兼田という男を逮捕すると、兼田は木村の手下だった。木村から保釈金が支払われ、兼田は保釈されるが木村の手下に殺され……

警視庁が全面協力したドキュメンタリー・タッチの作品です。指紋や血液型の検出といった科学捜査?を解説してくれますよ。出演者も当時は無名の役者ばかりで、今でこそ、犯人役の丹波哲郎も、刑事役の土屋嘉男や小林昭二も有名になりましたけどね。

出演者の中では、丹波哲郎が圧倒的な存在感を持っています。警官隊に追われて下水道を逃げ回るところなんか、フランスのフィルムノワールの雰囲気を漂わせていましたよ。

丹波哲郎は前年に新東宝に入社していましたが、態度がデカイということで1年以上も役がつかず、この作品がデビュー作で〜す。

 

 

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