和製サスペンス


13号待避線より その護送車を狙え』(1960年・日活/監督:鈴木清順)

囚人護送車が襲われ、乗っていた二人の囚人が殺される。その責任から6ヶ月の停職となった看守長の多門(水島道太郎)は、犯人追求に乗り出す。同じ護送車に乗っていた五郎(小沢昭一)を追って熱海に行くが、ストリッパーが殺され……

島田一男の『暗黒街の対決』が原作。裕次郎が大エースで、アキラがやっとエースに昇格した頃(ダイヤモンドラインが結成される以前)の作品で、ローテーションの谷間を水島道太郎が埋めていたんですね。裕次郎やアキラのようなアクションのカッコよさはありませんが、渋さのある水島道太郎もいいもんですよ。洋画でいえばロバート・ライアンみたいな存在ですね。

 

『暗黒の旅券』(1959年・日活/監督:鈴木清順)

トロンボーン奏者の伊吹(葉山良二)は歌手の弘美(沢たまき)と結婚するが、弘美は新婚旅行の直前に東京駅から姿を消し、新居で殺害されていた。伊吹は、弘美が顔見知りの人物に殺されたものと推理し、独自に犯人捜査を開始する……

背景に麻薬問題を扱い、ホモセクシャルも出てくる社会派サスペンスです。原作は鷲尾三郎。

清順監督の演出テクニックに、これといって見るべきものはなく、無難にまとめたプログラム・ピクチャーといえるでしょう。それにしても、沢たまきは若い頃から官能的だなァ。

※画像は、沢たまき

 

『影なき声』(1958年・日活/監督:鈴木清順)

毎朝新聞の電話交換手だった朝子(南田洋子)は、3年前に間違えて電話したことから質屋殺しの犯人の声を聞いていた。今は結婚して主婦となっていたが、夫・茂雄(高原駿雄)が勤める会社の社長・浜崎(宍戸錠)の声を聞いて慄然とする。犯人の声と酷似していたからだ。浜崎が経営する広告会社はインチキ会社で、脅迫で収入を得ていた。ある日、茂雄が血まみれになって帰宅する。会社を辞めるために浜崎と喧嘩したというのだが、浜崎は小平で絞殺死体となって見つかる。茂雄が容疑者として逮捕され、朝子は毎朝新聞の石川(二谷英明)に相談する。石川は浜崎に脅迫されていた薬局店の川井(金子信雄)とビリヤード屋の村岡(芦田伸介)を調べるが、二人にはアリバイがあった……

松本清張の原作『声』を基にしたアリバイ崩しミステリー。トリックそのものは、たいしたことありませんが、テンポよく展開していくので退屈はしません。

昭和30年代初めの東京の風景がノスタルジックな気分にさせて、テレビの2時間サスペンスより楽しめましたね。

 

『8時間の恐怖』(1957年・日活/監督:鈴木清順)

水害で列車が山間の田舎駅でストップする。東京へ急ぐ客が、臨時バスで麓の駅まで行くことになるが、2千万円の金を奪った銀行強盗の二人組が途中で乗り込み……

清順が、まだ清太郎だった時代の監督作品。

“グランド・ホテル”型式のサスペンス映画。ユーモアと皮肉を折り込んだところは清順監督らしさがありますが、映像表現においても、演出テクニックにおいても、サスペンス映画に必要な張詰めたような緊迫感がなく、作品としては平凡な出来ですね。

 

 

肉体女優殺し・五人の犯罪者』(1957年・新東宝/監督:石井輝男)

浅草ロック座で人気ダンサーの浜野千鳥がベティ桃園(三原葉子)に拳銃で射たれて殺される。小道具の拳銃が本物にすりかえられていたのだ。ドラマーの千鳥の夫・徳島が犯人として逮捕されるが、徳島の妹・かほる(三ツ矢歌子)と新聞記者の西村(宇津井健)は、犯人は別にいると考えて事件を追うが……

石井監督の初期の作品はロケを多用しているので、昭和32年当時の風景にノスタルジーを感じます。舞台となった浅草ロック座はフランス座ですね。出演しているダンサーたちは、フランス座の踊り子さんのようです。

三原葉子が高く吊り上げられたガラスケースの中で空中ストリップをするのですが、大学時代に東寺劇場で観た空中レスビアン・ショーを思い出しましたよ。

劇場のダンスシーンを適度に折り込んでテンポよく物語が展開していくので退屈はしませんが、内容的にはかなりツッコミを入れたくなるような作品で〜す。

 

 

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