ハードボイルドだぞ


“志津野一平”シリーズ

『俺の拳銃は素早い』(1954年・日活/監督:野口博志)

香港便の乗客から高級ライターを贈られたスチュアーデスの植田幾子は、友人の萩尾みどりとクラブにいるところを暴漢に絡まれるが、探偵・志津野一平(河津清三郎)に救われる。翌朝の新聞で幾子の墜死事故記事を見た志津野は、それに疑いを持ち捜査を開始する。みどりも行方不明になっており、手がかりを求めて昨日のクラブへ行った志津野は、そこで京子(日高澄子)という女と知り合う。クラブを出た志津野は暴漢に襲われ……

志津野一平シリーズの第1作目で、野口博志の第1回監督作品。物語の発端や、スタジオ内にセットされた銀座の街角は、後年の“銀座旋風児”の雰囲気はあるのですが、清水将夫、石黒達也、植村謙二郎、田島義文、伊豆肇、名和宏という出演者を見ていると日活の雰囲気がしません。それに、主演の河津清三郎は太めの体躯に顔が大きい戦前の時代劇スターの特徴そのまんまで、アキラや裕次郎のような日活特有の現代アクションのスマートさに欠けます。ラストの銃撃戦は当時としては迫力のあるもの(殺し屋の田島義文の最期なんて一見の価値あり)で、それがシリーズ化に繋がったような気がします。

 

『地獄の接吻』(1955年・日活/監督:野口博志)

探偵・志津野一平(河津清三郎)は、ケガをした男・唐沢(菅井一郎)を助けて事務所に連れてくるが、事務所に訪れた二人組の男と志津野が格闘している隙に唐沢は行方をくらます。唐沢は、造幣局から1千万円の紙幣を盗み出した容疑者で、三田村(水島道太郎)をボスとするギャング団に追われていたのだ。唐沢の娘・ゆかり(島秋子)は三田村の情婦・由美(利根はる恵)のクラブで働いており、志津野の戦友・楠見(安井昌二)の恋人だった。新聞記者の楠見も事件を追っており、楠見の頼みで志津野も捜査に乗り出すが……

シリーズ2作目。志津野の助手役で秀子(高友子)が、この作品から登場します。事件に巻き込まれ、男装して助手となるのは、“銀座旋風児”の先駆けといえますね。戦争で姉と離れ離れになった秀子がスリで生活していたなんて、時代を感じさせます。水島道太郎の紳士的な悪党ぶりはグッド。

 

『愛欲と銃弾』(1955年・日活/監督:野口博志)

 

 

探偵・志津野一平(河津清三郎)は、資産家の和田重三(石黒達也)から妻・歌子(宮城千賀子)の素行調査を依頼される。歌子を尾行していた助手の秀子(高友子)は、歌子の愛人が海で殺されるのを目撃し、犯人(大坂志郎)を追うが逆に捕まってしまう。一方、志津野は和田邸を訪れるが、電話で呼び出された一瞬の間に重三は何者かに殺される。犯人一味の中にいた昔のスリ仲間(佐野浅夫)を利用して脱出した秀子は、犯人一味が自動車修理工場を利用して武器密売していることを志津野に告げる。志津野は歌子が経営している自動車修理工場に疑いを持つが……

前半は快調に物語展開していくのですが、黒幕が判ってからモタモタします。如何でもいいようなメロドラマを見せられても、誰もよろこびませんよ。情実シーンでドラマに厚みを持たせたつもりでしょうが、ダレるだけ。ハードボイルドがフニャフニャになりました。

 

『謎の金塊』(1956年・日活/監督:野口博志)

探偵・志津野一平(河津清三郎)は、大賀真紀子から父親捜索の依頼を受ける。真紀子の父・慎吾(天草四郎)は、戦時中関東軍参謀で関東軍出身者が殺される連続殺人が発生していた。志津野は秀子(高友子)に、関東軍時代に慎吾の部下だった戸田を尾行させるが、戸田は顔面に火傷疵のある男に殺され、現場には七宝のイヤリングが落ちていた。心惹かれている歯科医の樋貝葉子(日高澄子)が同じデザインのブローチを持っていたことに気づいた志津野は葉子をデイトに誘うが、その間に真紀子が拉致されてしまう。志津野も命を狙われ……

亡命軍人が隠したと云われる帝政ロシアの再起資金をめぐるギャング団との対決。愛した女性が殺し屋というのは、現在では使い古されていますが、当時としては珍しい設定でしょうね。水島道太郎が警視庁の警部役で出演していますが、如何でもいいような役で、もったいないなァ。

 

 

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