ノートルダムのせむし男


小学生の頃、学校の図書室で美女を抱えてノートルダム寺院の壁を上る醜いせむし男・カシモドの姿を挿絵で見た時から、“ノートルダムのせむし男”は私の頭にインプットされました。

学生時代、国際プロレスにカシモドなるレスラーがやってきた時は、「わーい、ノートルダムのせむし男だあ」と嬉しくなって、テレビのプロレス中継を観たものですよ。

ところが、お話の方は本も読んでいなければ(絵だけで満足してしまった)、映画も観たことがなかったので、『オペラ座の怪人』のようなホラーと思っていました。今回、初めて観たのですが……

 

ノートルダムのせむし男(1923年/監督:ウォーレス・ウォーズリー)

ノートルダム寺院の鐘楼守カシモド(ロン・チャニー)は、その怪異な容貌から町の人々の嘲笑の的になっていた。そんな彼にジプシーの踊り子エスメラルダ(パッシィ・ルース・ミラー)だけが優しくしてくれる。そのエスメラルダは近衛隊長のフィリップ(ノーマン・ケリー)と恋に落ちるが、彼女に横恋慕していたノートルダム寺院大司教の弟がフィリップを刺し、彼女に無実の罪をきせて役人に逮捕させる。囚われたエスメラルダをカシモドが救い出すが、彼女の父でパリ暗黒街の親分・クロパンがエスメラルダ奪還のために暴動を起こし、ノートルダム寺院へ部下を引き連れて押し寄せる。カシモドはエスメラルダを守るために群集に立ち向かうが……

サイレント映画にはトーキーにない映像表現力があり、ロン・チャニーの怪奇メーキャップも違和感なく感情移入できます。ノートルダム寺院の壮麗なセットと、エキストラ大量導入の暴動シーンを見ると、映画は映像だとつくづく感じますね。

富裕層と貧困層との社会的対立を背景として描き、単なる見世物映画に終わらず、骨太な作品となっています。映画史を飾るサイレントの傑作の一つといって過言ではありませ〜ん。

 

ノートルダム・イン・パリ(1956年/監督:ジャン・ドラノワ)

公開時の題名は『ノートルダムのせむし男』でしたが、“せむし”の表現が差別用語にあたるので題名変更されたようです。『せむしの子馬』という童話があったけど、これも今では刊行できないんですよね。某BBSに“せむし男”とカキコしたら“猫背男”と変換されました。私としては表現規制のゆきすぎだと思いますよ。

ヴィクトル・ユーゴー原作の世界的に有名な古典で、これまで何度か映画化されていますが、不気味なせむし男があってこその映画です。アンソニー・クインのカシモドにはあまりグロテスクさを感じませんでしたね。一番ブキミだったのは、ロン・チャニーの伝記映画『千の顔を持つ男』で、劇中映画撮影でこの役を演じたジェームズ・キャグニーだったとか。

ジーナ・ロロブリジータはボリュームがあって、1950年代後半を代表する美女の一人ですね。カシモドが命をかけて恋するのがわかります。

それにしてもこの映画、豪華なセットに大群衆シーンと、お金をかけていますね。CGでは味わうことのできない素晴らしさでした。

 

ノートルダムの鐘(1996年/監督:ゲイリー・トルースデール、カーク・ワイズ)

ディズニーの長編ミュージカル・アニメ。ファミリー向けのせいか、カシモドが全然ブキミじゃないんですよ。むしろ可愛いくらい。ラストがハッピー・エンドになっているのも、私は気に入りません。「人は外見で判断せず、内面を見なければいけない」というテーマは、悲劇によって強調されます。

それと、アニメの美女に性的魅力を感じないのが致命的。私がディズニー・アニメで性的魅力を感じたのは、デイジー・ダック(ドナルド・ダックのガールフレンド)のお尻だけ。このことをカミさんに言ったら変態扱いされちゃった。

アカデミー賞で音楽賞を受賞したそうですが、昔のディズニー・アニメの「星に願いを」とか「ビ・ビ・ディ・バビデ・ブー」のような印象に残るような曲はありませんでしたねェ。

閉店セールでバカ安値だったのでゲットしたけど、ディズニーの長編アニメは、私にゃノーサンキューです。

PS:私が観たのは日本語吹替え版でしたが、原版ではエスメラルダの声をデミ・ムーアが吹替えていたんですね。

 

 

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