1913年〜14年に製作されたサイレントの“ファントマ”シリーズを観ました。マルセル・アランとピエール・スーベストロの原作による連続活劇で、監督はルイ・フイヤード。ファントマ=ルネ・ナバール、ジューブ警部=エドモン・ブレオン、ファンドール=ジョルジュ・メルシオールという配役で、弁士は、もちろん澤登翠さんで〜す。 『ファントマ』(1913年) パリの高級ホテルで盗難事件が発生し、現場に“ファントマ”の名刺が残されていた。ベルタム公爵殺人事件を捜査中のジューブ警部と新聞記者のファンドールは犯人が公 |
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爵夫人の愛人であることをつきとめる。そして、その愛人こそがファントマであり、ジューブ警部は公爵邸に現れたファントマを逮捕する。 『ファントマ対ジューブ警部』(1913年) パリでは“ファントマ”の芝居が人気を博していた。ベルタム公爵夫人はファントマ役者を誘拐し、ファントマはその役者を身代わりにして脱獄に成功する。ジューブ警部は公爵夫人を追うが、夫人の死体がシャラック医師の家で発見される。しかし、それはシャラックに化けたファントマによる偽装工作だった。ジューブ警部はファントマの隠れ家を発見するが、爆発が起こり…… 『ファントマの逆襲』(1913年) 次々に盗難事件が発生し、指紋が現場に残されていたが、それは何者かに殺された男のものだった。ファンドールは殺された男の妹を取材しているうちに、真犯人がファントマであることをつきとめる。そして、ファントマ一味にファンドールが襲われた時、行方不明になっていたジューブ警部に救われる。ジューブ警部は変装してファントマ一味に潜入していたのだ。ジューブ警部とファンドールはファントマを追い詰めるが…… 『ファントマ対ファントマ』(1914年) 何度もファントマを取り逃がしたジューブ警部は、ファントマの嫌疑を受けて留置される。ファントマはジューブ警部をファントマにすべく、大公夫人が主催する仮面舞踏会を利用して警察に罠をかけるが…… 『ファントマの偽判事』(1914年) 判事に化けて逃亡したファントマは、部下がメイドとして住み込んでいる古い館の主人を殺して財産を奪おうとするが… 古い作品なので、現代の冒険活劇の感覚からするとウ〜ンなのですが、当時としてはスリル満点だったでしょうね。演出の稚拙さはあっても、物語そのものは結構面白いですから。 第一次世界大戦により、シリーズは未完のまま終了します。原作は読んでいませんが、江戸川乱歩はかなり影響を受けていますね。他人の指紋をコピーして犯罪に利用する『悪魔の紋章』は、完全にファントマからのアイデア頂きですよ。変装の名人で、没個性的で、犯罪の手口そのものに関心を寄せるファントマは、怪人二十面相そのものです。 ファントマがルパンほど有名にならなかったのは、殺人も平気で行う犯罪者で、大衆のヒーローになりえなかったからでしょうね。 1960年代に、『ファントマ危機脱出』(64)、『ファントマ電光石火』(65)、『ファントマ・ミサイル作戦』(67)とリメイクされシリーズ化されましたが、ジューブ警部にルイ・ド・フュネスを配し、コメディー仕立てとなっていました。 |