ハリウッド版Jホラー


日本のホラーといえば『四谷怪談』に代表される怪談映画ですが、ハリウッドの“悪魔悪霊”と異なり、誰彼かまわず祟るわけではありません。深い情念の世界があって、怖さよりもドラマとしての面白味があるわけです。だけど、最近は日本のホラーも変わってきて、ショック度優先が目立つようになってきましたね。手法が同じなので、題材に窮したハリウッドが目をつけたのも、むべなるかなです。

 

『ザ・リング』(2002年/監督:ゴア・ヴァービンスキー)

若者が変死をとげる事件が相次ぎ、新聞記者のレイチェル(ナオミ・ワッツ)が調査する。事件の原因が呪いのビデオテープにあることがわかるが、彼女の息子がそのテープを観てしまい……

ヒットした邦画のハリウッド・リメイク版。内容は邦画と殆ど変わりません。違うとすれば、貞子がサマラに変り、超能力者でなく悪魔の子?になっていることですかね。

ホラーとしてのショック度は邦画の方がありました。だけど、この作品もそれなりに見せてくれて悪い出来ではありませんよ。ナオミ・ワッツも良かったしね。

 

『ザ・リング2』(2005年/監督:中田秀夫)

呪われたビデオの出来事を忘れるために静かな田舎町に息子のエイダン(デヴィッド・ドーフマン)と引っ越してきたレイチェル(ナオミ・ワッツ)は、マックス(サイモン・ベーカー)の新聞社で働きはじめる。しかし、ビデオの呪いの事件が発生し、サマラがエイダンに取憑こうとする……

原作とは関係ないアーレン・クルーガーのオリジナル脚本です。中田監督がハリウッドに招かれて撮ったというけど、所詮、低予算のB級ホラーですね。そのつもりで観ると、結構楽しめましたよ。

結局、サマラって死霊だったの?

 

 

『THE JUON/呪怨』(2004年/監督:清水嵩)

東京の大学に留学しているカレン(サラ・ミシェル・ケラー)は、介護のボランティアをしていた。痴呆の母親がいるアメリカ人一家を担当しているヨーコの連絡がとれず、カレンはヨーコの代わりにその家を訪問すると……

サム・ライミがリメイク権を買ったというので、『リング』のようにアメリカ社会に翻案しているのか思ったのですが、日本版『呪怨』そのまんまですね。

ロジャー・コーマンだったら、一から撮りなおすようなことをせず、『怪獣王ゴジラ』のように外人俳優だけのシーンを別撮りして、フィルム編集だけで安く仕上げたんじゃないですかね。

アメリカで大ヒットしたらしいのですが、物珍しさが受けたような気します。清水嵩が監督しているので、鳥居とか芸者といった変な日本が出てこなかっただけ、是としましょう。

 

 

『呪怨パンデミック』(2006年/監督:清水崇)

入院しているカレン(サラ・ミシェル・ゲラー)をアメリカへ連れて帰るために妹のオーブリー(アンバー・タンブリン)が東京にやってくるんですな。しかし、カレンは謎の自殺を遂げ、原因を調べるために怨念が宿っている家へ。

それから2年後、インターナショナルスクールの女子高生がイタズラ半分に怨念が宿っている家へ。アメリカでは妻が夫を殺すという事件が発生。それらが並行して描かれていきます。

ラストで一連の出来事が帰結するというシナリオ構成は悪くないのですが、恐怖演出がワンパターンで、はっきり言って怖くないです。鳥居のある風景や悪霊を持ち出したのは、アメリカ人向けのためですかね。田舎の婆さんが英語がペラペラというのだけは止めて欲しかったなァ。前作と比べて、格段に出来が悪いで〜す。

 

『ダーク・ウォーター』(2004年/監督:ウォルター・サレス)

離婚調停中のダリア(ジェニファー・コネリー)は、娘のセシリアとルーズベルト島の安アパートに引越してくる。階上からの物音や、天井からの漏水といった事件が起こり、セシリアは誰かと喋りはじめる。それは、セシリアが空想した女の子と思われたが……

原作は鈴木光司の『仄暗い水の底から』で、同題名にて黒木瞳主演で映画化されています。私はどちらも未見なので、比較できませんが意外と楽しめましたよ。

ハリウッド・ホラーに出てくる霊は“悪魔悪霊”なのですが、この作品に出てくる霊は日本の怪談にある“悲霊”(『耳無し芳一』の平家の亡霊や、『牡丹燈篭』のお露のように自分を慰めてくれる者に取り憑く)でして、誰彼かまわず殺すわけではないのでショック回数は少ないです。

『ラビリンス/魔王の迷宮』では16歳の戦う美少女だったジェニファー・コネリーが34歳になり、子どもを守る母親役を好演していま〜す。

 

 

『THE JOYUREI』(2009年/監督:フルーツ・チャン)

『女優霊』をアメリカでリメイクした作品です。知らない役者ばかりを使った低予算映画で、ホラー演出も血みどろスプラッターと、そんじょそこらにあるアメリカ産ホラーと変わりばえしない出来でしたね。

幻影に悩まされている監督が未完となっている80年前のホラー映画を撮ることになります。撮影現場は未完作品と同じトランシルバニアの古いスタジオね。撮影現場では奇妙な出来事が相次ぎ、スタッフの謎の死が続きます。調べると、80年前も同じようなことが起こり、製作が中止になったんですな。

タネを明かせば悪霊の仕業なんですが、この悪霊というのが悪魔の子どもということで村人に殺された娘なんです。娘の母は女優として成功するために悪魔と契約し、見返りとして悪魔に子どもを渡すはずだったのですが、殺されたために悪魔が悪霊にしたんです。アメリカ映画らしく、なんでも悪魔と結びつけないと納まらないようですねェ。

 

 

 

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