開拓西部劇


『大陸の快男児』(1936年/監督:デイビッド・ハワード)

豊かな土地を見つけたダニエル・ブーン(ジョージ・オブライエン)は、開拓団を率いてその土地を目指す。開拓者を快く思わないガーディ(ジョン・キャラダイン)は、インディアンと結託して彼らを襲撃するが……

西部開拓史における実在の英雄ダニエル・ブーンを描いた西部劇です。主人公がインディアンに捕まって火あぶりになりそうになったり、幌馬車隊による移住シーンなどに戦前の西部劇の特徴が多々見られて楽しいですね。

少年の無駄死にや、土地の権利を奪ったずる賢い悪党がそのままで、爽快感に欠けるのが残念です。主演のジョージ・オブライエンは中年太りで魅力なく、ヒロインのヘザー・エンジェルも存在感な〜し。

 

 

『キット・カースン』(1940年/監督:ジョージ・B・サイツ)

ロッキーやシェラネバダの地理に詳しいキット・カースン(ジョン・ホール)は、フレモント大尉(ダナ・アンドリュース)に頼まれて、騎兵隊と幌馬車隊をカリフォルニアまで案内する。幌馬車の一行にドロレス(リン・バリ)という魅力的な女性がいたからだ。メキシコ軍と結託したショショーニ族の襲撃を撃退し、カリフォルニアに到着するが、アメリカ人を追放してカリフォルニアの支配を謀るカストロ将軍のメキシコ軍が攻撃してくる。アメリカ人たちはカリフォルニアの独立を宣言してメキシコ軍と戦うことに……

史実通りの展開ですが、インディアン襲撃シーンやメキシコ軍との戦闘シーンは、従来の西部劇と同様の型とおりの演出です。味方を救うために爆薬に火をつけて死ぬカースンの相棒ワード・ボンドが設け役ですね。テレビ西部劇『ローン・レンジャー』のクレイトン・ムーアが素顔で出演しているのも嬉しかったですよ。

キット・カースンは、フレモント夫人が新聞で彼の活躍を発表したことで全国的に有名になったのですが、この作品では自分が身をひいて、フレモント大尉とドロレスを結びつけています。流れ者に女はいらない……

 

『ラスト・オブ・モヒカン』(1992年/監督:マイケル・マン)

ホーク・アイ(ダニエル・デイ・ルイス)は、育ての親であるモヒカン族の酋長チンガチュック(ラッセル・ミーンズ)と酋長の息子ウンカスの三人で、ヒューロン族のマグワ(ウェス・スチュデイ)に襲撃されているイギリス軍大佐の娘コーラ(マデリーン・ストーン)と妹のアリスを救う。彼女たちを父マンロー大佐のいるヘンリー砦におくるが、砦はフランス軍とヒューロン族に攻撃されていた。降服して砦を出たマンロー大佐一行は、マンロー大佐に怨みを抱くマグワに襲撃され……

原作はジェームズ・フェニモア・クーパーの『モヒカン族の最後』で、これまでにも何度か映画化されています。この作品では主人公のホーク・アイはモヒカン族に育てられたことになっていますね。

敵役のマグワも極悪非道のインディアンでなく、妻子を英国軍に殺された復讐者の位置づけです。ホーク・アイとコーラの恋物語というのも新しい解釈で、物語のメインになっています。

インディアン襲撃などの戦闘シーンはそれなりに迫力はありますが、全体としての出来は今イチです。最後のモヒカン族の悲哀が伝ってきません。1920年のサイレント作品『モヒカン族の最後』の方が、映画的面白さにおいても、詩情においても格段に優れていま〜す。

 

『パトリオット』(2000年/監督:ローランド・エメリッヒ)

独立戦争を背景に、平和主義者の主人公が悪い英国人に次男を殺され、長男の命だけは守ろうと戦いの場に臨む。しかし、長男も死んで故郷へ帰ろうとするが、長男が修復していた国旗を見つけ、アメリカ独立のために再び戦う決意をする……

いかにもアメリカ映画といった作品です。見ていてシラけるくらい愛国心を謳いあげる演出は、さすがエメリッヒ監督。

独立と国旗に対する思い入れは、白系アメリカ人にとっては絶対ですからね。この手の歴史物は嫌いじゃないですが、これだけ押しつけがましいと辟易します。

 

『モホークの太鼓』(1939年/監督:ジョン・フォード)

ギル(ヘンリー・フォンダ)とラナ(クローデット・コルベール)は結婚式をあげ、ギルの家があるフロンティアで新婚生活を始める。都会との生活ギャップに衝撃を受けたラナだったが、皆が協力しあう開拓生活に慣れた頃、インディアンが襲撃してきて家が焼かれてしまう。二人はマクレナー未亡人(エドナ・メイオリバー)の農場で働くことになったのも束の間、独立戦争が始まり、開拓村を守るためにギルは出兵する。ラナは懐妊し息子が生まれ、帰還したギルとの平和な生活が続くと思われたが……

平和とインディアンの襲撃が繰り返される物語展開で、平凡な監督が演出したら観るに耐えないものとなったでしょうが、さすがJ・フォードで、人情の機微がユーモアを交えて描かれており、退屈しない作品にできあがっています。

カラー作品ですが、日本ではモノクロで公開されており、本来の映像美が反映されず、公開当時の評価はJ・フォードにしては低いものになっていますね。援軍を求めてフォンダが走る夜明けのシーンは、モノクロだとコントラストがつかず時間の経過がよくわからなかったんじゃないかな。

平凡な作品ですが、J・フォードだと安心して観ていられま〜す。

 

 

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