ネイティブ西部劇


『大襲撃』(1957年/監督:カート・ニューマン)

インディアンに理解をしめしている西部劇ですが、あくまでも白人の視点から描いた西部劇です。インディアンを演じているのは、もちろん白人俳優ね。

画家のスコット・ブラディが砦に忍び込んできたインディアン娘(リタ・ガム)に一目惚れし、彼女を救ってインディアン部落まで送っていきます。彼女は酋長の娘で、ブラディは酋長に気に入られ、そのまま部落に残って絵を描きはじめるんですな。当然、二人は愛しあうようになります。リタ・ガムはスタイル抜群でインディアンの格好はしているものの、どこから見てもインディアンには見えません。白人が理想とする典型的なエキゾチックなインディアン娘ですね。

インディアンと白人を戦わそうとする悪い奴が、白人にもインディアンにもいるんですな。ブラディは平和の使者として、彼女の弟と砦に戻るのですが、悪い白人に彼は射ち殺されます。「白人は信用ならない、皆殺しだ!」と酋長や一族を煽る悪いインディアンがネヴィル・ブランドね。自分が惚れていたリタ・ガムがブラディと愛しあっているのを逆恨みしているんです。邪魔なブラディを闇討ちしようとして逆にやられるのは西部劇の定例パターン。酋長に率いられたインデイアンの大群が砦に攻め込み、開拓民を皆殺しにしようとした時、ブラディが犯人を暴いて誤解がとけるのも、これまた西部劇の定例パターン。ブラディとリタ・ガムは結婚してメデタシ、メデタシとなります。白人男を愛したインデイアン娘は死ぬという方式が破られていたのは嬉しかったですね。

『モホークの太鼓』の使いまわしで、インデイアンの大群が砦を襲うシーンの迫力を出すという低予算のB級西部劇ですが、爽快感の残る良品で〜す。

 

『最後のインディアン』(1970年/監督:キャロル・リード)

居留地で差別的生活をしているインディアンが、過去に結ばれた協定をたてに不屈の闘志で生活権を取り返そうとする行動をユーモアたっぷりに描いた現代西部劇です。

主人公のフラッピング・イーグル(アンソニー・クイン)は飲んべえの暴れん坊ですが、バイタリティーあふれる誇り高きインディアンです。クインといえば、若い頃は悪いインディアン役が多かったですが、『革命児サパタ』と『道』でキャラを確立し、この作品でもクインの個性にピッタリの役どころとなっています。

居留地近くで行なわれている高速道路の工事の騒音で病人が出て、イーグルは仲間のイレブン(トニー・ビル)、ロボ(クロード・エイキンズ)、スミス(ヴィクター・ジョリー)と工事現場に抗議しますが、聞いてもらえず大乱闘。道路工事の監督官と殴り合いを通して友情が芽生えたり、娼婦のシェリー・ウインタースと痴話喧嘩したり、酒好きの暴れ馬との交流や、古典トリックを使った貨物列車の分捕りなどがユーモラスに展開していきます。だけど、喜劇味を出すために全体的にユルイものになっており、主題のインディアンの復権がボケたものになっていますね。

インディアン嫌いの警官が老インディアンの愛犬を射ち殺し、ショックで老インディアンが死んでからシリアスなムードになるのですが、緊迫感がみなぎってきません。ラストでイーグルが倒れ、イレブンが群衆にむかって決意演説しても表面的にすぎず、感動がありません。キャロル・リードの演出には残念ながら冴えたところがありませんでしたねェ。

 

 

 

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