黒人西部劇


『マクマスターズ』(1969年/監督:アルフ・チェーリン)

かつて奴隷だった黒人青年のベンジ(ブロック・ピーターズ)が、南北戦争に北軍の兵士として従軍した後、戦争が終り故郷の町に戻ってくる。しかし、その町は南軍を支持しており、町の有力者であるコルビー(ジャック・パランス)が部下を使ってベンジに嫌がらせをする。ベンジは姓をもらった友人のマクマスターズ(パール・アイブス)と共同で牧場を営むが、インディアンの兄妹(デビッド・キャラダイン、ナンシー・クワン)をコルビーの部下から救ったことから……

人種差別と人間の尊厳をテーマにした重た〜い西部劇。デビッド・キャラダインが良い味を出しており、儲け役。南軍の制服を着たジャック・パランスは、お馴染みのキャラクターでどうってことなし。ハマリ役なんだけど、いつも同じパターンでは凄みが薄れますね。

1970年前後の頃って、問題提起型西部劇がやたら増えて、西部劇本来の面白さが失われてきた時期なので〜す。

 

『デスペラード・イン・ウエスト』(2005年/監督:ジャン・クロード・ラ・マール)

リンク(ガブリエル・カソーズ)とゼイン(アントウォン・タナー)のマローン兄弟は、カンサス(クルプト)、牧師(レイモンド・クルツ)、マーラ(ケニア・ムーア)といった仲間を集め、ドリスコル(デビッド・キャラダイン)の銀行襲撃を計画する。ドリスコルは、かつて兄弟の農場を襲撃し、一家を殺害された恨みがあったのだ。銀行に鉄道の資金が入金される日を探りに町に行くが、酒場でドリスコルの息子に出会い、その横暴さに腹を立てたゼインが衝動的に彼を殺してしまう。ドリスコルに雇われた賞金稼ぎに、マローン兄弟たちは追われることになり……

監督と主なキャストが黒人というブラックスプロイテーション西部劇。困ったことに西部劇らしい雰囲気が全然ありません。ギャング映画のノリですね。女性シェリフが出てきたりして、もうムチャクチャ。時代劇で女性同心が出てくるようなものですよ。マカロニの方が、もっと西部劇らしく作っていま〜す。

それにしてもガブリエル・カソーズって、愛敬のある顔をしていて、精悍さとは程遠く、ミスキャストじゃないかなァ。

ケニア・ムーアは名前のごとくアフリカの野獣性を持っていて良し。

右から2番目がガブリエル・カソーズ

右がケニア・ムーア

 

『バッドアウトロー』(1996年/監督:パリス・バークレイ)

ブルーミントン(ジェームズ・コバーン)に母親を殺され、土地を奪われたアイザイア(シンバッド)は兄と離ればなれになり、牧師夫婦に育てられる。そして18年後、大人になったアイザイアは、今では市長になっているブルーミントンに復讐を決意し、命を狙うが失敗して山男のボブ(バート・レイノルズ)に助けられる。ボブにサバイバルの方法を習うが、ボブはアイザイアを追ってきたブルーミントンの手下に殺され、アイザイアは留置所へ。そこには無法者のナト(アーニー・ハドソン)がいて、彼と脱獄して彼のアジトで暮らすことになる。ナトに銃の使い方と乗馬を教わったアイザイアはチェロキー・キッドと名を変え、ブルーミントンの銀行を次々に襲撃する。ブルーミントンに雇われた葬儀屋と呼ばれる殺し屋(グレゴリー・ハインズ)がキッドに決闘を挑み……

主演がシンバッドで、グレゴリー・ハインズが格好いいところを見せる黒人西部劇ね。ドジな大男が、りっぱな?ガンマンとなって復讐を果たすまでがコメディタッチで展開していきます。晩年のジェームズ・コバーンは悪役が多いのですが、今イチ憎々しさが足りません。バート・レイノルズも付録的存在ね。各シークェンスに深みがないので、全体的に薄っぺらなものになっています。シンバッドとグレゴリー・ハインズの拳銃ごっこで〜す。

 

『ブラック・ライダー』(1972年/監督:シドニー・ポワチエ)

南北戦争が終り、自由となった黒人は新天地を求めて西部を目指したが、南部に連れ帰って小作人として黒人たちをこき使おうとする無法者が黒人移住者を襲撃していた。黒人移住者のために幌馬車ガイドをしているパック(シドニー・ポワチエ)は、無法者のデイシェイ(キャメロン・ミッチェル)に追われ、巡回牧師ルサフォード(ハリー・ベラフォンテ)の馬と無理やり交換して逃げのびる。

ルサフォードはパックを追って幌馬車隊に加わる。パックがインディアンと彼らの土地を通る交渉をしていた時、幌馬車隊はデイシェイ一味に襲われ、幌馬車隊の資金を奪われてしまう。パックとルサフォードは町の酒場でデイシェイを倒し、盗まれた金を銀行襲撃して取り返すが、保安官とデイシェイ一味の残党に追われる。岩場での銃撃戦で弾丸を使い果たした時、インディアンが救援に駆けつけ……

白人にとって優等生的黒人俳優だったシドニー・ポワチエが監督主演した西部劇です。スパイク・リーのような強烈な黒人視点に立った作品ではないですが、安手の低俗なブッラックスプロイテーション映画と異なり、良質な黒人娯楽映画に仕上がっています。

口琴を中心とした音楽や、二連式(横型でなく縦型)の散弾拳銃(横型はマッド・マックスやケオマで使われましたな)などの小道具にも工夫があって楽しめます。ただ、演出面では切れ味が今イチで、まどろっこしいところもあるんですけどね。

ポワチエは相変わらずの優等生ヒーローで面白みはありませんが、ハリー・ベラフォンテはこすからいが義侠心のある巡回牧師をユーモアたっぷりに演じて良い味を出していました。

 

『黒豹のバラード』(1993年/監督:マリオ・ヴァン・ピープルズ)

マリオ・ヴァン・ピープルズが監督・主演した黒人西部劇です。

物語は米西戦争のキューバ戦線から始まります。語り始めるのは、数々の西部劇で黒人俳優として貢献してきたウッディ・ストロードね。悪党の上官グラハム大佐(ビリー・ゼイン)の命令で、リトルJ(スティーブン・ボールドウィン)たちとスペインの補給部隊を襲撃したジェシー・リー(マリオ・ヴァン・ピープルズ)は、箱いっぱいの金貨を見つけます。グラハムの目的も金貨で、横取りするために、ジェシーたちは脱走兵として殺されそうになりますが、金貨を奪い、死体運搬船でキューバ脱出成功。グラハムの執拗な追跡をかわして、父の復讐のために故郷の町に戻ってきます。牧師だったジェシーの父は、黒人の町建設をしていましたが、横暴な白人保安官ベイツ(リチャード・ジョーダン)に殺されたのです。町は黒人たちの手によって完成していましたが、鉄道が通ることを知ったベイツは町を自分のものにしようと狙っており、それにグラハムも加わってラストは大銃撃戦となります。

ピープルズの演出は粗っぽく、格好付けも目立ちますが、スピーディーな展開で飽きさせません。ウッディ・ストロードだけでなく、ブラックスプロイテーション映画のスターだったパム・グリアや、黒人娯楽映画の走りとなった『黒いジャガー』の音楽を担当したアイザック・ヘイズも出演しており、嬉しくなりますよ。メッセージ色を前面に出さず、娯楽映画に徹していることも好感もてま〜す。

 

 

 

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