俺の故郷は大西部(ウエスタン)

(1960年・日活)


(スタッフ)

監 督:西河克巳

企 画:児井英生

原 作:野村耕三

脚 本:山崎巌、西河克巳

撮 影:伊佐山三郎

音 楽:池田正義

 

(キャスト)
ジョージ …… 和田浩治
マリ   …… 清水まゆみ
クライトン…… EH・エリック
OK商会ボス… 殿山泰司
 〃 幹部 … 近藤宏
大川   …… 東野英治郎

 

 

(ストーリー)

 金に困っている恩人のために、父親に代って10万ドルの小切手を持って日本にやってきたジョージは、空港でマリという少女にトランクを奪われる。

 ジョージのトランクを盗んだマリは、金を奪うために空港で待伏せしていたOK商会のギャングたちにジョージと間違われ、事務所へ連れ込まれるが、マリを追いかけてきたジョージに救出される。

 二人は意気投合し、恩人を探すが、恩人はOK商会の殺し屋クライトンにすでに殺されていた。ジョージは、恩人が孤児の養護施設・大川牧場のために金を必要としていたことを知り、恩人に代って大川牧場に10万ドルを寄付することに決める。しかし、OK商会の魔の手は、マリを誘拐し、大川牧場を占拠する。ジョージは宿敵クライトンと決着をつけるため、OK商会が待ち受ける大川牧場へ単身乗込むのだった。

 

(感 想)

 最初この作品を観た時、和製西部劇として紹介すべきか迷いました。というのは、物語の構造が西部劇と違うんですよ。上記の荒筋を読んでもらえばわかる通り、よくあるアクション映画のパターンなんです。

 すでにアップしている『日本女侠伝 真赤な度胸花』や『大草原の渡り鳥』は西部劇を日本の風土あわせるよう意図して製作されていますが、この作品は西部劇ブームに湧いていた1960年当時の社会現象に便乗して製作されただけのような気がしますね。

「主人公をワイアット・アープの孫にしたら面白いんじゃないか」

「ヒーローがアープの孫なら、敵役はOK牧場でやられた奴の孫にするか」

「そいつ、何ていったけ」

「クラントンだか、クライトンだかいったよな」

「似たような名前ならいいや。クライトンにしよう」

「最初は、やっぱりアメリカの西部からはじめなきゃ、まずいよな」

「アープが酒場でクライトンをやっつけるシーンが最初だな」

「OK牧場じゃないのかい」

「西部劇に出てくるような牧場は、日本にはないだろう。酒場ならセットでごまかせるけど」

「だけど、日本人俳優じゃ感じがでないよなあ」

「なあに、日本にいる安い外人タレントを使えばいいさ」

「クライトンは、誰にする?」

「プロレスのユセフ・トルコって悪役にむいているだろう。孫の方は、演技ができないとまずいから、E・H・エリックでいこう」

「OK牧場じゃないけど、日本の悪の組織はOK商会にするか」

「それでもって、ラストの決闘は大川牧場」

「ウエスタン・カーニバルに出演する歌手に歌わせて盛り上げないか」

「平尾昌晃の歌をバックに、大川牧場に乗り込む」

「主人公に味方するのは、結核病みのナイフ投げが得意な殺し屋」

「敵が3人なら3発で十分といった『駅馬車』のラストはカッコよかったよな」

「それならこっちは、先祖伝来の拳銃に弾丸を一発だけいれることにしよう」

「これで、西部劇ファンも、そうでないファンも喜ぶ日活アクションの出来あがり」

てな、調子で製作されたんじゃないですかね。(かってな想像)

 

和田浩治と清水まゆみ

 こんな西部劇パロディともつかぬ西部劇ゴッコの主人公には和田浩治がピッタリはまっていましたね。

 石原裕次郎、小林旭、赤木圭一郎、和田浩治の4人を日活ダイヤモンドラインと称していましたが、和田浩治だけが影が薄いんですよ。主演期間2年にして第一線から消えていったスター。裕次郎のソックリさんとして15歳でデビューして、アクション・コメディ路線の開拓を担いましたが、10代だった彼には荷が少し重すぎたようです。

 和田浩治とコンビを組んでいた相手役の清水まゆみも、和田浩治の主演消滅とともに銀幕から消えてしまいました。赤木圭一郎とのコンビだった笹森礼子が、赤木の死後も、宍戸錠や二谷英明の相手役としてヒロインで居続けたのと対照的です。映画界は比較的スターの寿命が長いのですが、このコンビの短命ぶりは不思議でしかたありません。

 話しを『俺の故郷は大西部』に戻しますが、OK商会のボスになった殿山泰司のヒヒ親爺ぶり、子分の近藤宏のズッコケぶりがいいですね。それに比べて、E・H・エリックがよろしくない。持ち味の可笑しさがでていないんですよ。凄みがあって、可笑しい宍戸錠のような感じだったら点数はもっと上がったんですが……

 フランキー・レーンばりに、平尾昌晃が英語で歌う「大川牧場の決闘」(発音が悪いので、何て言ってるかわからないし、字幕がでるけど歌詞の内容とは違うようだ)は、トンデモ怪ソングでした。平尾昌晃以外にも、当時ウエスタン歌手として、三人ヒロシと云われた井上ひろし、守屋浩、かまやつひろしの歌を聴けたのは、うれしかったですよ。

 私たちの年代であれば、ノスタルジックな気分で楽しめる映画ですが、今の若い人たちにとっては、トホホ映画でしょうね。

 

 

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