(1961年・日活)
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(スタッフ) 監 督……野村孝 脚 本……山崎巌 撮 影……山崎善弘 音 楽……大森盛太郎 (キャスト) エースのジョー ……宍戸錠 令子(女教師) ……笹森礼子 三郎(令子の弟)……江木俊夫 小田(新米警官)……杉山俊夫 踊り子ジェーン ……南田洋子 真山医師 ……下条正巳 美佐(真山の娘)……吉永小百合 品川(町長) ……浜村純 三島(町のボス)……金子信雄 |
0.65秒、抜く手もみせぬ ガンさばき! 颯爽、荒野を行く エースのジョー! |
(解 説) 赤い夕陽のタイトルバックに、宍戸錠が歌うウエスタン調の主題歌が流れる。日活の主役は、必ず歌うんですね。ニ谷英明も歌ったし、高橋英樹も歌った。ものになったのは、裕次郎に旭、それと渡哲也ぐらいかな。吉永小百合も歌ったけど…… エースのジョーが馬で乗りつけたのは、ダム工事の景気で賑わう町。これが西部劇に出てくる町の構造とソックリ。おまけに住民の大半がテガロンハットにカウボーイブーツという姿。 ジョーは保安官事務所ならぬ駐在所を住民に尋ねる。給料強盗を捕まえたので、賞金をもらうためだ。内ポケットから賞金ポスターを取り出して見せるが、何故か横文字。 駐在の若い警官は、給料強盗を証明することができないので、目撃者が到着するまで賞金は渡せないという。ジョーは、仕方ないので酒場へ。 酒場の前では、客の取り合いから二人の酒場女がレスリング。本場西部劇『砂塵』では、マルレーネ・ディートリッヒが女同士の格闘を見せてくれたよなァ。ディートリッヒがここでは南田洋子。酒場の主人は紳士面をしているが、腹に一物ありそうな金子信雄。ジョン・ウェインの戦後のB級西部劇(『拳銃の町』『ダコタ高原』など)では、ワード・ボンドが演じた役どころ。 |
翌日、ジョーは川で魚捕りをしていて、カウボーイの格好をした坊やと仲良くなる。坊やの姉さんは小学校の教師で、泊まる所のないジョーは彼女の家に下宿する。 その頃、診療所でケガの治療をしていた給料強盗が殺される。彼の口から犯行がバレることを恐れた仲間の仕業だった。背後には、もちろん金子信夫がいる。ダム工事の作業員への賞与が運ばれてくることを知った金子信雄は、これを奪うことを計画する。新たな計画のために邪魔になる給料強盗に失敗した部下を罠にかけて殺すが、現場にいたジョーによって捕らえられる。ジョーの腕前に若い警官は尊敬の念を持ち、ジョーもこの新米警官に好感を持つ。そして、一人前にするため、拳銃の指導をする。駐在事務所で、ジョーと警官がギターを弾きながら歌うシーンは、『リオブラボー』を感じさせます。 賞与が強盗に奪われ、自警団が結成される。西部劇では見慣れたシーンですね。自警団に金子信夫も加わるが、途中で行方をくらます。強盗団のひとりがケガをしており、診療所の医者が強盗団に連れ去られ、死体となって発見される。ジョーは強盗団を発見し、子分は捕まえるが金子信夫には逃げられてしまう。強盗団の子分を町に連れ帰ったら、町の住人たちが彼らをリンチにかけようと集まってくる。これまた、西部劇では見なれた光景。 警官隊に追い詰められた金子信雄が町に逃げ込んだという情報がはいり、新米警官は町の住民に協力を要請するが、誰も助手になってくれず、一人で逮捕に向かう。『真昼の決闘』ですね。 ジョーは陰ながら応援するため、新米警官の後ろにコッソリついていき…… |
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宍戸錠と笹森礼子 |
作品としての出来はともかくとして、これだけ西部劇ぶりを徹底してくれたら嬉しくなります。エースのジョーの格好は、宍戸錠が言うには『ヴェラクルス』のバート・ランカスターを参考にしたとのこと。なるほど、なるほど。 主人公が犯人を馬の背に乗せてきて新米保安官に賞金を要求するところから始まって、新米保安官を鍛えて一人前にする西部劇にアンソニー・マン監督の『胸に輝く星』(ヘンリー・フォンダがアンソニー・パーキンスを鍛える)がありますが、『早射ち野郎』は『胸に輝く星』の主要な人物、状況設定をすっかり頂いちゃってるんですね。 主人公が子どもと仲良くなり、女教師の家に下宿することも、負傷した犯人を治療に行った医師が殺されることも、『胸に輝く星』と共通しています。 恥も外聞もなく、ハリウッド西部劇をコピーしていますが、逆に面白い映画を作ろうとする当時の日本映画界のエネルギーを感じ、私は爽快感をおぼえます。 |
無国籍アクションの象徴である“渡り鳥シリーズ”で、小林旭のライバル役として宍戸錠は人気が出てきたのですが、“エースのジョー”を、その時彼が演じた殺し屋の名前として解説された文章を何度か見かけたことがあります。“渡り鳥シリーズ”では、殺し屋ジョージであり、ハジキの政であり、“エースのジョー”は『早射ち野郎』で初めて使われたんですよ。 『早射ち野郎』はヒットし、ジョー西部劇は、『赤い荒野』(1961年/野口博志)、『紅の銃帯(ガンベルト)』(1961年/小杉勇)、『早射ち無頼・大平原の男』(1961年/野口博志)と続きますが、『メキシコ無宿』(1962年/蔵原惟繕)が大コケして終了します。 1960年〜61年は、日本中が西部劇ブームで、小林旭や宍戸錠のシリーズだけでなく、日活では赤木圭一郎の『幌馬車は行く』(1960年/野口博志)や、ニ谷英明の『散弾銃(ショットガン)の男』(1961年/鈴木清純)といった和製西部劇が製作されています。 今から考えると、西部劇ブームに便乗しただけなのかもしれませんが、荒唐無稽さを承知で見ても楽しめる内容になっていると私は思います。 |