『ヴァージニアン』(1929年/監督:ビクター・フレミング)
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『ヴァージニアン』は、ゲーリー・クーパーの最初のオール・トーキー作品で、ヴァージニア訛りでセリフを言うクーパーを“ヴァージニアンそのものだ”と、当時のロンドン・タイムズが絶賛しました。クーパーにヴァージニア訛りを指導したのが、売出し前のランドルフ・スコットだったとのことです。 ストーリーは、メディシン・ボウに近いボックスH牧場の牧童頭ヴァージニアン(ゲーリー・クーパー)が、旧友のスティーブ(リチャード・アーレン)に再会し、牧童として雇います。東部からやってきた新任の美人教師モリー(メアリー・ブライアン)を巡って恋の駆け引きを繰り広げたりして、楽しい生活をしているのですが、スティーブが無法者のトランパス(ウォルター・ヒューストン)一味に加わって牛泥棒をしたことから、スティーブを捕えて吊し首にしなければならなくなります。 怒りにかられたヴァージニアンは単身トランパスを追いますが、逆に待伏せされて重傷を負います。モリーはスティーブがヴァージニアンに吊し首にされたことに驚愕します。東部出身のモリーには西部の掟が理解できなかったんですね。しかし、ヴァージニアンを看病しているうちに不快事を忘れていきます。傷も癒え、愛情を復活させたモリーとヴァージニアンは結婚式をあげるために町にやってきます。そこにトランパスが現れ、ヴァージニアンに決闘を挑み…… |
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トーキーといっても、まだ映画音楽は使われていません。音楽による盛り上りはありませんが、クーパーが鼻歌を歌いながら、牛の群れを連れてメディシン・ボウやってくる冒頭シーンの空間的な広がりを見ただけで西部劇ファンとしては嬉しくなりますよ。 クーパーが颯爽としていて実にカッコ良いんです。持ち味の、はにかんだような表情に表れる朴訥さに、クーパーらしさが出ています。ただ、カウボーイたちに絶対的な信頼を得ている牧童頭にしては少し若過ぎるかな。 クーパーもさることながら、「お前と俺が居るには、この町は狭すぎる。陽が落ちる前に出て行け!」と、クーパーに凄むウオルター・ヒューストンの悪役ぶりが抜群ですね。わざと臭い芝居をしているんですが、西部劇にマッチしているんですよ。 悪役時代(『リバティ・バランスを射った男』等)のリー・マービンは、ヒューストンのトランパスの演技に影響を受けているじゃないかなァ。ヒューストンを見ていて、マービンの臭い演技が重なってくるくらい似ていました。 |